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●この記事のポイント
・米エヌビディア、世界のAI向け半導体市場で7〜8割のシェアを握るといわれる“AIの覇者”
・AI開発のテーマが「学習」から「推論」にシフトするなか、新興メーカーが相次いで台頭
・専門家「当面はエヌビディアの一強状態だが、安泰とはいえない」
世界のAI向け半導体市場で7〜8割のシェアを握るといわれる米エヌビディア。先月には現行のAI向け半導体「Blackwell(ブラックウェル)」と比較して処理性能が1.5倍の「Blackwell Ultra(ブラックウェル・ウルトラ)」を2025年後半に提供開始すると発表し、26年には次世代AI半導体「Rubin(ルービン)」、27年には「ルービンUltra」を投入する計画も明らかにし、加速度的な進化の足を止めない姿勢をみせ、“AIの覇者”としての存在感を強めている。そんな同社だが、AI開発の世界におけるテーマが「学習」から「推論」にシフトするなか、高度な技術力を持つ新興の最先端半導体メーカーが相次いで力をつけてきており、エヌビディアにとって脅威になる可能性も指摘されている。専門家は「当面はエヌビディアの一強状態だが、安泰とはいえない」と分析する。
●目次
「エヌビディアは当面は安泰でしょう。他の半導体メーカーを見てみると、インテルやAMDでさえもエヌビディアの後追いなんです。エヌビディアはもちろん半導体のハードが強いですが、それに加えてAI関連のモデルや開発ツールなどソフトウェアの優良資産も膨大に持っているんです。なので、例えばメディカル関係のAI開発をしたいという会社があったとして、エヌビディアは創薬開発用ソフトや遺伝子解析用ソフト、手術や診断用のソフトも提供することができる。メディカルという分野だけでも多岐にわたるソフトウェアを持っているというのが最大の強みです。顧客からすれば、『こういうものをAIで開発したい』と相談すれば、あらゆる技術を提示してくれて、アフターフォローもしてくれるということで安心感を持てます。GPUが強いだけではなく、AIに関して総合力で戦える力を持っており、もうちょっと他社は太刀打ちできないレベルです」
こう解説するのは、国際技術ジャーナリストで「News & Chips」編集長の津田建二氏だ。だが、エヌビディアの対抗軸も力をつけてきているという。
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「AMDやインテルも新しいGPUを開発していますし、スタートアップも出てきています。例えば日本のラピダスと提携したテンストレントやサンバノバが注目されています。サンバノバは従来のGPUの何倍もの性能があって、なおかつ消費電力がぐっと小さい半導体を開発していますが、ソフトウェアがまだ弱い。技術力は高いものの、マーケティングなどのビジネス面はこれからという状況です。
日本で注目されているスタートアップとしては、エッジコーティックスがあげられます。ソフトバンクなどからも資金を受けて、経済産業省所管の研究開発機関、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からも助成金を受けて開発を行っています。同社はエヌビディアと競合するというよりは、エッジ用のIC、AIチップの開発に力を入れています。
逆にエヌビディアと競合しそうなのがサンバノバやセレブラスです。セレブラスはTSMC(台湾積体電路製造)と組んで巨大なチップをつくっています。これらの企業に共通するのは、コンピューターまでつくっているという点です。単に半導体だけをつくるのではなく、それを組み込んだコンピューターまでつくっている。セレブラスはコンピューターを納入した実績があって、AIスーパーコンピューターとして運用されています。
ただ、こうした新興勢がエヌビディアを脅かすほどかといえば、まだまだです。サンバノバなんて技術力の高さでみれば、ずば抜けている感じがしますが、AI用ソフトはまだ揃っていません。なので、新興勢がエヌビディアの牙城を崩すとすれば5年から10年は先になるでしょう。エヌビディアには10年以上にわたり基礎的な研究も含めた蓄積があり、ハードからソフトまで含めたAIに関する巨大なプラットフォームを築いており、いくら新興勢が『ちょっと高い性能の半導体を開発しましたよ』と言っても、太刀打ちできる相手ではないのです」
(文=Business Journal編集部、協力=津田建二/国際技術ジャーナリスト)
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