天皇賞(春)に出走予定のサンライズアース(c)netkeiba 【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
◆2017年以降は比較的順当な決着が続いている
AIマスターM(以下、M) 先週はフローラSが行われ、単勝オッズ14.7倍(7番人気)のカムニャックが優勝を果たしました。
伊吹 完勝と言って良いでしょう。好スタートを決め、一旦は行きたがるような素振りを見せましたが、すぐに落ち着いて道中は中団を追走。先行勢を射程圏内に捉えた絶好のポジションで3コーナーから4コーナーを通過しています。ゴール前の直線に入ったところではブラックルビー(13着)やハギノピアチェーレ(10着)がカムニャックの進路を遮っていたものの、残り400m地点のあたりでこの2頭の間から抜け出し、粘り込みを図っていたロートホルン(6着)やエストゥペンダ(4着)を急追。決勝線の手前で単独先頭に立ち、最後の最後に伸びてきたタイセイプランセス(3着)やヴァルキリーバース(2着)の追撃も難なく振り切りました。人気薄の立場だったとはいえ、鞍上のA.シュタルケ騎手は「この馬の能力を引き出すことができれば勝てる」と確信していたように見えましたし、その期待に完璧な形で応えたカムニャックも立派。着差以上に高く評価して良さそうな勝利です。
M カムニャックは重賞初制覇。2走前のアルテミスSは単勝1番人気の支持を集めながらも6着、さらに前走のエルフィンSでも4着に敗れていましたから、今回は評価を下げてしまった方も多いのではないでしょうか。
伊吹 正直なところ、私もそのひとり。近年のフローラSは重賞をステップに臨んだ馬の活躍が目立っていたこともあって、残念ながら重いシルシを打つことはできませんでした。ただ、中京芝2000mのデビュー戦を快勝した実績があったわけですから、このオッズなら無理に嫌う必要はなかったかもしれません。逆に言うと、この馬の素質を信じた方にとっては妙味ある決着だったはず。引き続き今回のレース結果をしっかり検証して、カムニャックの次走以降や来年のフローラSに備えたいと思います。
M カムニャックは今回の勝利でオークスへの優先出走権を獲得。順当に本番へ駒を進めてきたら、それなりの注目を集めそうです。
伊吹 サクラバクシンオー産駒の母ダンスアミーガ、ロードカナロア産駒の半兄キープカルムは、いずれも1マイル前後のレースで優秀な成績を収めている馬。もっとも、カムニャックの父はブラックタイドですし、これまでの戦績やレースぶりからも、他のオークス出走予定馬より長距離適性が低いとは思えません。最終的なメンバー構成や想定されるオッズも踏まえたうえで、慎重に馬券上の位置付けを検討するべきでしょう。
M 今週の日曜京都メインレースは、上半期の古馬チャンピオン決定戦として長年親しまれてきた伝統のGI、天皇賞(春)。昨年は単勝オッズ2.8倍(1番人気)のテーオーロイヤルが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ8.8倍(5番人気)のブローザホーンが2着、単勝オッズ27.5倍(6番人気)のディープボンドが3着で、3連単の配当は2万3960円にとどまっています。
伊吹 歴史を遡れば大きく荒れた年もありますが、2017年以降の過去8年に限ると、3連単の配当は平均値が2万8403円、中央値が1万7805円。波乱が起きづらいレースと言って良さそうです。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、優勝馬はすべて単勝3番人気以内の支持を集めていた馬。一方、単勝7番人気以下の馬はあまり上位に食い込めていません。
伊吹 ちなみに、単勝7番人気から単勝13番人気の馬は2015年以降[0-3-2-65](3着内率7.1%)、単勝14番人気以下の馬は2015年以降[0-0-0-35](3着内率0.0%)でした。複数の伏兵が馬券に絡む可能性は低いと見て良さそう。あえて人気薄の馬を狙う場合も、上位人気馬との組み合わせを本線に勝負するべきでしょう。
M そんな天皇賞(春)でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、サンライズアースです。
伊吹 今回は人気の中心となりそうな馬を挙げてきましたね。この臨戦過程ならかなりの支持が集まるはず。
M サンライズアースは代表的な前哨戦と位置付けられている阪神大賞典の勝ち馬。昨年の日本ダービーで4着となった実績もあります。キャリア7戦の4歳馬で、まだまだ上積みがありそう。素直に中心視しようと考えている方も多いのではないでしょうか。
伊吹 前走の阪神大賞典は2着のマコトヴェリーキーに6馬身差をつける完勝。このくらいの距離が合っているようですし、戦績を見る限りだと大きな不安要素が見当たりませんね。Aiエスケープの評価も高いことを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の信頼度を測っていきたいと思います。
M 最大のポイントはどのあたりですか?
伊吹 まずは実績馬が強いレースである点を意識しておきたいところ。2019年以降の3着以内馬18頭中14頭は、“前年以降の、JRAの、GI・GIIのレース”において1着となった経験がある馬でした。
M 思いのほかはっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 なお、“前年以降の、JRAの、GI・GIIのレース”において1着となった経験がなかった馬のうち、“JRAの、GIのレース”において2着以内となった経験もない馬は2019年以降[0-0-1-53](3着内率1.9%)。過去にビッグレースで連対を果たしているくらいの馬でない限り、2024年以降のGIやGIIを勝ち切っていない馬は強調できません。
M 阪神大賞典を快勝したばかりのサンライズアースにとっては心強い傾向です。
伊吹 あとは脚質もチェックしておいた方が良さそう。同じく2019年以降の過去6年に限ると、前走のコースが国内、かつ前走の4コーナー通過順が7番手以下だった馬はすべて4着以下に敗れています。
M 先行力が低い馬は過信禁物、と。
伊吹 サウジアラビアのレッドシーターフHから直行してきた2023年3着のシルヴァーソニックも、前走は終始先団でレースを進めていました。先行有利というわけではありませんが、末脚を活かす競馬しかできないタイプは疑ってかかるべきかもしれません。
M サンライズアースは前走の4コーナー通過順が2番手。積極策をとることが多く、いかにもこのレースが合っていそうなタイプです。
伊吹 さらに、同じく2019年以降の3着以内馬18頭中11頭は、父にディープインパクト系種牡馬を持つ馬でした。
M ディープインパクト系種牡馬の産駒は3着内率も優秀な水準に達していますね。
伊吹 一方、父がディープインパクト系以外の種牡馬、かつ前走のコースが国内、かつ前走の馬体重が460kg以上だった馬は2019年以降[1-0-1-54](3着内率3.6%)。ディープインパクト系種牡馬の産駒と、比較的小柄な馬を重視するべきレースと言えるでしょう。
M サンライズアースは父がディープインパクト系に属していないレイデオロで、前走の馬体重が526kgの大型馬。残念ながらこの条件はクリアできていません。
伊吹 正直なところ、私は別の馬を連軸に据えるつもりでした。ただ、逆に言うと血統と馬格くらいしか不安要素はありませんし、他ならぬAiエスケープが有力と見ているわけですから、無理に嫌う必要はないはずです。この馬が上位に食い込んでくる可能性はそれなりに高いという前提で、過不足のない買い目を組み立てたいと思います。