充電中の電気自動車(EV)=2024年11月、米カリフォルニア州ロサンゼルス(EPA時事) トランプ米政権の関税措置を巡る日米交渉で議題の一つに浮上している電気自動車(EV)の充電規格は、国際的に統一されていない。米国側は、日本政府が日本発の規格である「チャデモ」の充電器整備を補助していることに対し、「非関税障壁」と批判。日本側は対話を通じて理解を得る考えだが、米の出方次第では何らかの対応を迫られる可能性もある。
チャデモは、日本の自動車メーカーや電力会社などでつくる協議会が2010年から推進している規格。24年3月末時点で国内に約4万口の充電器がある。政府は30年までに30万口に増やす目標を掲げ、充電器整備の補助金として、24年度補正予算と25年度予算で計365億円を計上した。
充電規格は世界各地域で方式が乱立。近年は米EV大手テスラの「NACS」を採用する車メーカーが増えている。
米通商代表部(USTR)が発表した25年版の外国貿易障壁報告書は、日本の充電器補助について「時代遅れの技術(への適合)を要求される」と主張。「外国の自動車メーカーや充電設備メーカーが日本で事業を展開する意欲をそいでいる」と非難している。
武藤容治経済産業相は今月22日の記者会見で、「米国の障壁になっているということであれば議題の俎上(そじょう)には載ってくる」と述べ、充電器への補助が日米交渉のテーマとなる可能性に言及。他の充電方式への補助など、制度の見直しが検討課題になるとみられる。
ただ、チャデモはEVから外部への給電が可能で、災害が多い日本では緊急電源となる利点がある。欧州や中国、韓国のメーカーが日本で販売しているEVはチャデモに対応しており、国内の自動車業界では「輸出先の規格に合わせるのは常識だ」と反発の声もくすぶる。経産省幹部は「米の問題意識を把握し、日本の考えを説明するなどよく対話していく必要がある」と説明している。