家電製品が家庭に行き渡り、PC、タブレット、スマホなどの情報機器もほぼ普及した環境となって久しく、家電量販店の市場規模は伸び悩むようになりました。
業界の主要企業といえば、ヤマダHD、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、エディオン、ケーズデンキといったご存じの銘柄となりますが、売り上げトップシェアのヤマダHD(売上高1兆5920億円)が、2位のビックカメラ(同9225億円)の1.7倍、3位以下のヨドバシ、エディオンなどが7000億円台といった位置付けなので、ヤマダは圧倒的なトップシェアだと言えます。
しかし、かつてヤマダの売り上げが2兆円を超えていたこと、今では家電量販としてのデンキ事業の売り上げは1.2兆円まで下がっていることを踏まえると、そんなに余裕の状況ではなさそうです。
ヤマダのデンキ以外の売り上げは約4000億円ということですが、住宅関連事業が約3014億円、家具インテリア437億円といった構成です。住宅関連事業は、エス・バイ・エル、ヒノキヤグループなどを買収、家具インテリアは、あの親子喧嘩で話題になった大塚家具を買収して、事業の柱としています。これらのM&Aの共通軸は、家電の置き場である家回りのニーズを丸ごと取り込んでいこう、ということです。
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かつてのヤマダのビジネスモデルは、地方、郊外のロードサイドに、売場面積3000〜5000平方メートルほどの大型店を展開して、中小型店(売場面積1000〜2000平方メートル)の競合チェーンを安さと品ぞろえで圧倒し、シェアを奪ってしまう、というものでした。
この作戦は大成功し、地方で割拠していたローカルチェーンを次々と撃破したヤマダは、ロードサイドで家電の圧倒的王者になりました。しかし、今や中小型店のライバルはほぼ絶滅し、生き残った競合企業はエディオン、ケーズなど、大型店展開の大手チェーンばかりとなると、勝ったり負けたりの膠着状態となり、ヤマダの家電量販店としての成長余地は事実上消失しました。
加えて、ヤマダの展開しているロードサイドでは、急速な人口減少高齢化で、家電需要は縮小必至ですので、このままでは売り上げは減るばかりです。それがわかっていたヤマダは、かなり前から住宅や家具など隣接業界進出の布石を打っていました。しかし、家電売り上げの減りを補うまでにはいかず、売り上げは伸び悩んでいるのです。
同じ家電量販店でも、大都市駅前に大型店を展開する、いわゆるカメラ系家電量販、ビックカメラ、ヨドバシカメラは、ネット販売なども強化しながら、少しずつ売り上げを伸ばし続けて、かつてははるか先を走っていた、ヤマダの背中が見えてきました。
そんな矢先に、セブン&アイHD傘下だったそごう西武の、不動産ファンドへの株式売却という案件が発生、ファンドのパートナーとしてヨドバシが名乗りを上げることになったのです。そごう西武の池袋、渋谷、千葉の店舗不動産をヨドバシが取得するという連携ですが、ご存知の通り、池袋に関しては、町の玄関口を家電量販店にするのか! という反対もあり、大きな話題となったことは記憶に新しいでしょう。
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最終的には池袋も含めて、ヨドバシ+専門店モールの商業施設ができることになりますが、これをきっかけとして膠着していた家電量販店の勢力図が大幅に入れ替わる可能性が出てきました。ヨドバシが取得した3店舗は、ビックカメラの出店地であり、特に池袋は発祥の本拠地です。
ヨドバシは駅直結の超大型店舗+商業施設で、一気にビックカメラの本丸に勝負を掛けてきたのです。このカメラ系大決戦の結果次第では、家電量販店の覇権が動くかもしれないのです。ヤマダの大型店もある池袋の攻防戦がどうなるのか、目が離せません。
※この記事は『小売ビジネス』(中井彰人、中川朗/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
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