写真 女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「びっくり体験」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2019年5月12日 記事は取材時の状況)
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SNSの発展で長年連絡の取れなかった旧友と再会できる機会が増えた昨今。先日、私もA子という友人と実に24年ぶりに連絡を取ることができました。
彼女は高校1年の時に学校を辞めており、その際に詳しい事情を聞くことなく疎遠になっていたのですが…、あらためて彼女が退学した理由を聞いたところ思わぬ事情がそこに隠されていたのです。
◆通学に使う路線で痴漢に苦しむ日々だった
それは高校を入学したばかりの4月のこと。A子さんは埼玉県在住でしたが都内の高校に進学したことで、毎朝のように満員電車に揺られて通学する日々を送っていました。が、とあることに悩まされていたのです。
「それは、痴漢でした。生まれて初めて痴漢に遭遇した私は声も上げられず抵抗もできず、ただ男に触られるのを我慢するしかなかったんです…」
彼女が使っていたのは「痴漢が多い」という、まったく誇れない称号を獲得してきた路線です。
今でこそ女性専用車両の設置やSOSボタン・防犯カメラの車内設置などの対策が功を奏し、その件数は激減したと言われていますが、A子さんが通学していた24年前の朝の路線は地獄絵図とも言っていいレベルでの混雑ぶりで、ピーク時にはまったく身動きが取れず、周囲と触れ合うことは避けられない状況。
そこに迷い込んできた、電車慣れしていない高校生のA子さんは痴漢の格好のターゲットになってしまったのかもしれません。
◆ほぼ被害にあう毎日で電車に乗れなくなってしまった
「そのうち、電車に乗ると必ずと言っていいほど痴漢が寄ってくるようになりました。車両を替えれば数日はいなくなるのですが、そのうち不思議と痴漢がわいてくるんです。
それが同一人物なのかはわかりません。でも、どの車両に逃げても必ず痴漢がいるということが本当に恐ろしくて、私は徐々に通学すること自体に恐怖を覚えるようになってしまい…」
実を言うと、私自身も当時は彼女と同じ路線のユーザーで、痴漢被害には何度も遭遇していたのでその恐怖は手に取るようにわかります。
A子さんは毎朝駅の前まで来てはみるものの、電車を見て足がすくんでしまいそのまま帰宅するようになってしまいました。
◆“自分に落ち度がある”といわれるのが怖くて誰にも相談できなかった
「そういう生活が続いて、いつの間にか学校に行けなくなってしまって。でも痴漢のことは親にも、先生にも、友達にも、恥ずかしくて相談できずにいました。
痴漢されることは、私に何か原因があると思われるんじゃないか、とか。いやらしい子だと思われるんじゃないか、とか。そういうことを凄く考えてしまったんですね。その結果、周りと溝が深まってしまって、気持ち的に孤立した状態になりました」
結局、A子さんはそのまま退学をしてしまいました。その後、彼女は通信制の高校に通い始め、卒業後は製菓の専門学校へと入学。今はパティシエとして働いているそうです。
これは家に引きこもっていた頃にお菓子を趣味で作るようになったことがきっかけだとか。
「目標ができたことで、ちょっとずつ周りに話をするようになって『痴漢が嫌だった。電車が怖い』とようやく打ち明けられました。
電車に乗らなくても通学できるように協力してくれた、家族からの支えは特に心強かったです。今はもう、電車にも平気で乗れていますよ」
◆「人生を狂わせた痴漢のことは絶対に許せない」
最後にA子さんは、今の自分の生活も仕事も満足しているけれど、あの時に人生を狂わせた痴漢のことは絶対に許せないと強い口調で語りました。
「痴漢は犯罪である」このことがもっと早くから世の中に強く周知されていれば、A子さんはきちんと周りに相談もでき、孤独を深めることは無かったのかもしれません。
あらためて痴漢に対し怒りが沸くとともに、A子さんが生き生きと楽しそうに働いている現在の姿を喜ばしく思った次第です。
<文/もちづき千代子 イラスト/ただりえこ>
【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama