●この記事のポイント
・サム・アルトマン氏らが共同設立者に名を連ね、Worldcoinなどを手掛けるWorldが、イベント「At Last」を開催中。
・そのなかで「Orb Mini」のリリース、Visaなど他社との連携強化、スーパーアプリ化などが発表された。
・新プロダクト「World Card」はWeb3とリアル経済の融合を象徴か
サム・アルトマン氏(OpenAIのCEO)とアレックス・ブラニア氏(Tools for HumanityのCEO)ら、注目のスタートアップ・Worldの共同設立者が、米国で2025年4月30日(日本時間5月1日)にイベント「At Last」に出演。Worldcoin (ワールドコイン:WLD)、World ID、World Appなどの新たな取り組みについて語り、新機能「World Chat」の導入や、新たなグローバルパートナーシップ「Razer」といった重大な発表を行った。イベントにはBBCやワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルなど世界から約25のメディアが来ているなか、在米支局を持たない日本のメディアとしては唯一、BUSINESS JOURNALが現地取材に入っている。会場には約1000人のゲストが出席して熱気に包まれた。現地からのレポートを交え、イベントの内容をお伝えする。
●目次
イベントではサム・アルトマン氏が「人間の本人確認や価値の交換について明確なニーズがあった。そしてクレイジーな方法を考えついた」と語った。
続けて、米国でWorld関連のサービスを5月1日から開始することを発表し、ついに米国でも展開することが明かされた。虹彩認証システム「Orb」については「Orb Mini」を2026年にリリースする。初のモバイルバージョンで、どこでも認証が可能になる。
|
|
他社との連携を強化していく方針も明確にした。アレックス・ブラニア氏は「World IDのゲーム、デーティング、ソーシャル利用に注力し、本人確認などに役立てたい」と述べ、マッチングアプリ・Tinderを運営するMatch Groupとの提携を発表。
World Appのサービスも拡充していく。決済大手Visaと連携しWorldカードを発行。Circleとの連携でステーブルコインの提供も拡大していく。Stripeとも提携するなど、使えるサービスが増えて決済がより便利になる。アレックス・ブラニア氏は「成功すれば個人や行政、企業など誰にとっても重大なインフラになる。だからオープンプロトコルにする必要がある」と力強く述べた。Worldは「人類のためのスーパーアプリ」になることを目指していくとも宣言した。
今回のイベントで注目すべきは、新プロダクト「World Card」の発表だ。決済大手Visaと連携しWorld Cardを発行。ポストAGI(汎用人工知能)ワールドの金融のビジョンを実現すべく、世界中の1億以上の店舗で利用を可能にする。
Worldは、Worldcoinなど一連のWorldプロジェクトを展開する。2024年10月にリブランディングを行い「リアルな人々のネットワーク」を標榜する。2019年に設立され、米サンフランシスコと独ミュンヘンに拠点を置くTools for Humanityが開発しており、創業者にはChatGPTで時代の寵児となったOpenAIのCEO、サム・アルトマン氏も名を連ねる。World Networkは「すべての人にIDを。金融インフラ、そしてコミュニティを。」というキャッチコピーのもとにサービスを展開する。AIボットなどの進歩により、今後はインターネット上でAIと人間の識別がますます難しくなってくることが見込まれる。このデジタル・アイデンティティの問題を解決し、ゆくゆくはユニバーサル・ベーシック・インカムを提供するシステムに発展させることを意図しているといわれている。
|
|
イーサリアムといった既存のブロックチェーン技術を有効活用する一方で、AIの視点が色濃く入っているのが特徴だ。「World」(世界)というブランディングからして野心的だ。世界中でテクノロジーのインフラになることを目指しており、既存の金融システムの恩恵を受けられない層が多く残る開発途上国などで積極的にプロモーションを行っている。World Appは、25万以上ダウンロードされており、ネットワークアクセスをタイ、インドネシア、フィリピンにも拡大。
テクノロジーを開発する一方で、人間中心主義を推し進めているのが興味深い点だ。AIサービスを次々とリリースしてAIを熟知しているからこそ、その先々で人々や社会が直面する問題を察知し、先回りしてソリューションを開発しているようだ。自分たちのサービスで世界を変えることで、また新たなニーズを生み出している。
これまでにリリースされた主な機能には次のようなものがあり、相互に関連しあってサービスを充実化させている。
・Worldcoin
ブロックチェーン技術を用いた分散型のデジタルトークン。
・World ID
生体認証デバイス「Orb」で虹彩をスキャンして本人確認を行い、AI時代の「本物の人間」を匿名で証明する。
|
|
・World App
World IDやウォレットへアクセスできる独自アプリ。
・World Chain
既存のブロックチェーン技術(イーサリアムなど)を活用し、高速で低コストな取引を可能にする人間のためのブロックチェーン。
(文=Takuya Nagata/作家、社会開発家、テクノロジー・エキスパート)
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 Business Journal All Rights Reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。