「朝倉未来の復帰戦」で話題のRIZIN 榊原CEO「世界への挑戦を戦略的に進めたい」

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2025年05月03日 07:01  ITmedia ビジネスオンライン

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RIZIN榊原CEO

 5月4日、格闘技イベント「RIZIN男祭り」を東京ドームで開催するドリームファクトリーワールドワイド(東京都港区)の榊原信行CEO(榊は正確にはきへんに神)に、ITmedia ビジネスオンラインは単独インタビューを実施した。


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 前編記事【RIZIN榊原CEOに聞く 「格闘技ビジネスの発展」に必要なこと】に引き続き、後編では、日本のRIZINというコンテンツを、いかにして世界に届けていくか、その展望を聞く。


 同社は5月31日、韓国・仁川のパラダイスシティで、アゼルバイジャン大会に続く2回目の海外大会「RIZIN WORLD SERIES in KOREA」を開催する。


 もともとRIZINは2015年に「日本発で世界に通用するコンテンツ」を目指して旗揚げされた。だが、発足当初は日本の市場環境がそれまでと変化しており、海外選手を集めたソフトがなかなか受け入れられなかったという。


 RIZINはいかにして日本の市場を築いてきたのか。また日本の市場に基盤を作れた今、どのように海外展開を模索しようと考えているのか。榊原CEOに聞いた。


●「日本発で世界へ」 配信プラットフォームとスター選手づくりに課題


――RIZINは「日本発で世界に通用するコンテンツ」を目指して10年目を迎えました。5月31日には韓国でも大会を開催します。外貨を稼ぐ機会として好機かなと思いますが、いかがですか?


 最近、ホリエモンこと堀江貴文さんと対談した際にも話していたのですが、格闘技に限ったことではなく、日本発のコンテンツはアニメ、映画、J-POPを含めて全然世界に通用するレベルにあると私は考えています。ただ、(ジャンルによっては)作り手側が日本市場に向けてということを最初に考えてしまい、リミットを掛けてしまっているように思うんですね。


 日本市場向けにコンテンツを作って、日本のファンがそれを楽しんで、その分の売り上げしか最初から見込んでいない。日本と比べて、自国に大きな市場がなかった韓国のK-POPは、最初から北米でどう売るかを考えていたわけです。


 RIZINは2015年の旗揚げの際に、世界の市場を一気に取りにいこうと考え、海外選手を集めてソフトを展開しました。ところが日本のマーケットは思った以上に……というか私がPRIDEを運営していた時代に経験したほどには、海外選手を集めたコンテンツに対して食いつきが良くなかったのです。私は、日本に格闘技ビジネスの市場がなくなったわけではなくて、いわば市場が寝ているだけだと思っていましたから「これはもう1回、日本市場をホットにしなければならない」と考えました。もう一度、市場を目覚めさせるために、日本向けのコンテンツ作りに軌道修正をしたんですね。


 それで(日本人の)堀口恭司選手や那須川天心選手を起用するなどして、過去のPRIDEや旧K-1のファンに加え、それ以外の新しいユーザーも含めて日本向けにコンテンツを作り変えていきました。その後はコロナの影響もあり、さらにドメスティックなコンテンツにせざるを得ない時代もありましたが、ようやく今、アフターコロナの中で、日本市場の基盤は作り出せたと考えています。


 それを事業の基盤にしながらも、今こそメイドインジャパンのRIZINを、世界に売り出していきたいと考えています。RIZINブランドのコンテンツは(年間売上高が約2110億円の規模を誇る世界最大の格闘技団体)UFCにも負けていないと考えています。格闘技を通じて、人間ドラマをどう見せるかということに関しては、われわれの方が、感情移入できるコンテンツを作り出す能力は高いとさえ思っています。


 課題は、それぞれの国の中で、どれだけスター選手を戦略的に生み出していけるかにあります。初の海外大会を開催した2023年11月のアゼルバイジャンが成功事例です。トフィック・ムサエフ選手やヴガール・ケラモフ選手といったアゼルバイジャンの選手たちがRIZINで活躍していなければ、同国で大会を開くことはできませんでした。結果そういう経済圏も生まれなかったでしょう。


 今大会でもキルギスからラジャブアリ・シェイドゥラエフ選手が参戦します。キルギスの大使にも観戦に来ていただきます。シェイドゥラエフ選手がよりRIZINで活躍してナショナルヒーローになれば、キルギスでの大会も開けるでしょう。日本でいう野球の大谷翔平選手のようなもので、「シェイドゥラエフが自国で試合するのを見たい」というキルギスのファンが何万人も生まれるかもしれません。そういうスター選手を各地域の中で生み出していくことと合わせて、われわれが戦略を持ってRIZINを世界中に広げていけたらいいと思っています。


 ただ、どこまで行っても、やはり北米での売り上げが大きい部分もあります。どう北米にフィットさせるか。ここはしっかり準備をして、チャレンジしたいと考えています。


――RIZINというプラットフォームを、どこまで世界に展開していけるかがカギですね。


 インターネットの視聴環境が整ったことによって、特にスポーツコンテンツは、世界中にリーチできるようになったわけです。欧米で作っているコンテンツだけが秀逸なわけではありません。


 こうした時代だからこそ、作り手の志が重要になってきます。志一つで結果が変わってきてしまうからです。世界を意識してコンテンツを作れば、あとは世界の市場にどうリーチしていくかを考えればいい。そうすれば現状の売り上げ規模も拡大できます。もちろんRIZINと比べて大会数が多いので単純比較はできないものの、UFCは年間2000億円以上を売り上げています。格闘技ビジネスにはそれだけのポテンシャルがあるのです。


 ただ、UFCだけで100パーセント市場が満足するかというと、市場はそういうものではありません。「UFCはいいけれど、やっぱりRIZINも見たいよね」という消費者もいると思います。そのナンバー2のポジションが空いてくる。いろんなチャレンジができるはずです。


 いずれにしろ市場や格闘技コンテンツの流れを見定めながら、3年、そして5年という長期的なスパンの中で、海外にも配信し、結果を出してくれる野心的な配信プラットフォーム企業とどう組んでいくのか。そして各地域の中のナショナルヒーローをどう作り出していくのか。これが直近の課題です


 かつては(格闘技イベント)PRIDEの時代も、旧K1の時代も、世界中のファイターたちが、日本に来て闘いました。日本こそが世界一の市場だったわけです。ファイトマネーを稼ぐために、みんなこの国を目指したのです。


 日本は武道の国で、侍の国です。合気道、空手、柔道など、日本から生まれた武道や武術には、世界中に物凄い数の競技人口を有しています。武道発祥の国というアドバンテージは日本だけが有し、他の国にはない差別化要因です。そういうものを生かしながら、10周年を迎える2025年は、日本のファンの方々を飽きさせない努力もしながら、世界へのチャレンジを、戦略的に進めたいと考えています。


(アイティメディア今野大一)



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