朝日新聞阪神支局襲撃事件で、殺害された小尻知博記者の遺影に手を合わせる女性=3日、兵庫県西宮市 兵庫県西宮市で1987年、朝日新聞阪神支局の記者2人が散弾銃を持った男に殺傷された事件は3日、発生から38年を迎えた。同支局1階には祭壇が設けられ、訪れた市民ら約330人が殺害された小尻知博記者=当時(29)=の遺影に手を合わせ追悼した。
事件は87年5月3日夜に発生。目出し帽をかぶった男が支局に侵入し、散弾銃で2階にいた小尻記者と同僚の犬飼兵衛さん=2018年死去=の2人を銃撃。小尻記者が死亡、犬飼さんが重傷を負った。その後、「赤報隊」を名乗る犯行声明が出された。
事件の約1年前に小尻記者の取材を受けた無職吉川恵子さん(67)=大阪府茨木市=は、「仕事熱心で温かい人だった。記者としてもっと仕事がしたかったと思う」と当時を振り返った。記者志望だという近畿大2年野村歩玖さん(19)=京都府八幡市=は、支局3階の資料室を見学。「生々しい展示品を見て、暴力による言論弾圧は許されないと改めて実感した」と話した。
朝日新聞社によると3日午前、広島県呉市にある小尻記者の墓を龍沢正之大阪本社編集局長らが訪れた。事件発生時刻の午後8時15分には、龍沢編集局長ら関係者約30人が阪神支局で1分間の黙とうをささげた。
一連の朝日新聞襲撃事件(警察庁指定116号事件)は全て時効となっている。

朝日新聞阪神支局襲撃から38年を迎え、事件発生と同時刻に黙とうする朝日新聞の社員ら。中央は小尻知博記者の遺影=3日午後、兵庫県西宮市(代表撮影)