下町にも立ち始めた「タワマン」「億ション」 一体どんな層が購入しているのか

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2025年05月04日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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都内マンションの高騰を解説する(出所:ゲッティイメージズ)

 「億ション」といえば高価な富裕層向けのマンションを意味する言葉だが、都内の新築では多くが億ションという状況になりつつある。23区内における新築マンション1戸当たりの平均価格は2017年に7000万円を突破し、2023年には1億円を超えた。


【画像】キラキラと輝く豪華なタワマン


 23区内のマンション価格はなぜここまで高騰し、そして誰が買っているのか。億ションの実態に迫る。


●23区と神奈川の「価格差」は10年で3000万円も増加


 東京23区内の新築マンション価格は、この10年で倍近くまで上昇した。不動産経済研究所によると、2015年の平均価格は6732万円だったが、2017年に7000万円を超え、2023年に初の1億円超え。2024年も1億1181万円と大台をキープしている。


 首都圏では特に23区内の上昇が著しく、2024年の平均価格は神奈川で6432万円、埼玉・千葉で5000万円台半ばだ。2015年における神奈川県内の平均価格は5000万円弱だったため、東京23区と神奈川の価格差は直近10年間で約1700万円から約4700万円まで拡大したことになる。23区内では2025年1〜2月に1億円を下回りかけたものの、3月に1億4939万円と急上昇した。港区など都心部で高額物件の供給が相次いだことが背景にある。


 かつてマンション価格では「5000万円」が一つの基準だったが、今では3LDKでそれ以下の物件を探そうとすると、八王子以西や桶川以北など、都心から1時間以上のエリアまで離れる必要がある。分譲マンションは一般家庭では手を出しにくくなっており、賃貸へのシフトで家賃相場も上昇している。


●タワマンが湾岸部から下町に侵食し始めた


 都心マンションの平均価格をけん引しているのは、駅チカのタワマンだ。近年では1億円超が当たり前となり、都心では2億円台の物件も珍しくない。最上階では5億円を超える物件もある。特に千代田区・港区・中央区当たりの高額物件が平均価格を引き上げている。


 従来タワマンといえば勝どきや月島、豊洲など湾岸エリアが一般的だったが、昨今では下町でも建設が進む。例えば、埼京線・十条駅から徒歩1分の「ザ・タワー十条」。地上39階建て、総戸数578戸のまごうことなきタワマンだ。


 もともと木造の低層住宅や小規模店舗などが並ぶ区画として、近隣にあるアーケードの「十条銀座商店街」も十条の下町らしさを表していたが、2024年秋に同マンションが竣工すると雰囲気が一変した。2022年の第1期販売で平均価格は1億2000万円と、下町にしては高いという意見も聞かれた。一方、応募倍率は平均3.38倍・最高33倍と人気を博した。


 この他、京成線の立石駅周辺もレトロな飲み屋街として知られていたが、店舗の多くが既に閉店または解体となり、3棟のタワマンが建つ予定だ。竣工は2030年を予定する。


 供給面に着目すると、建材費や人件費の高騰とともに、地価も上昇している。23区内では開発の余地がなくなり、販売戸数は2015年の約1万8000戸から2024年には約8300戸となった。コスト高と供給数の減少も価格上昇の一因だろう。


 億ションでも売れるのは、需要が旺盛だということ。タワマンなら管理費だけでも、少なくとも月額3万円以上かかる。どういった人物が23区内の億ションを購入するのか。具体的なデータは公表されていないが、不動産関係者の発言をまとめると、(1)パワーカップル、(2)経営者・富裕層、(3)外国人が多いようだ。


 最も多いとされるのがパワーカップルだ。一般に共働きで年収1000万円以上の世帯を表すが、億ションを購入できるのは2000万円以上が目安。1500万円程度だとやや厳しいラインとされる。1人当たりの負担が大きいため、こうした世帯では共有名義で購入することも多い。


 資金力のある経営者・富裕層もタワマンの購入層だ。特に安定性があり余裕がある層、具体的にはクリニックの院長などが挙げられる。ただ、持ち家がある人は購入のモチベーションが低い。


 外国人に関して「中国人に買い占められる」「外国人しか買えない」という言説が聞かれる。こうした言説は必ずしも事実を反映していない。一部エリアでは確かに比率が高まるが、それでも全体の1割程度とみられる。彼らは日本での居住地や別荘地としてタワマンを選んでいる。


 上記3つ以外には転売、賃貸業目的の購入者がいるが、全体に占める割合は小さい。


●価格はもっと上がるのか、落ち着くのか


 23区内におけるマンション価格は、実需に伴ってデベロッパー側が値上げし、特に高い物件が平均価格を引き上げる構図となっている。直近でも堅調に推移しており、23区内のマンション価格が今後、下がり続けるか、再び上昇するかは正直なところ未知数だ。


 マイナス要因を挙げると、金利の上昇は住宅ローンの支払金額を上昇させる。中国経済悪化に伴う外国人需要の減少を懸念する不動産関係者もいる。供給数が増えている中古物件へのシフトも起きている。


 一方で主力のパワーカップルの数が著しく減るとは考えにくく、筆者はこのまま価格帯が堅調に推移すると考えている。1億円を下回ったとしても、8000万〜9000万円台を維持するのではないだろうか。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 



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