4月13日に「大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)」が開幕。大阪市の夢洲で、10月13日まで開催する。
【画像】くら寿司の万博応援メニュー、有名バーガーチェーンの斬新すぎる応援商品、ちょっとさびしさを感じたセブンの応援商品(全12枚)
万博の認知に貢献しているのが、飲食チェーンやコンビニなどの万博応援企画だ。例えば、くら寿司では世界約70の国と地域の料理を提供している。ハンバーガーチェーンの「ウェンディーズ・ファーストキッチン」はたこ焼きバーガー、「ロッテリア」はお好み焼きバーガーを販売するなど、大阪グルメと融合した新しいバーガーを提案。万博開催地、大阪にスポットを当てている。
「セブン-イレブン」では、「世界ごはん万博」なる、各国のグルメを商品化した企画を行っている。白鶴酒造では、万博のキャラクター「ミャクミャク」をデザインした、限定パッケージの大吟醸酒を発売した。
大阪・関西万博の前評判は芳しくなく、実際に「並ばない万博」を標ぼうしているにもかかわらず、各所で長蛇の列ができるなど、運営の不備が目立つ。アプリを使った予約も操作しにくいと評判が良くない。5月に入っても完成していないパビリオンがある。
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しかし、開幕に向けて準備を進めてきた各パビリオンの力が入った展示内容が明らかになるにつれて、さんざんけなされていた悪評が覆されてきている。
ぴあは5月1日、公式ライセンス商品のガイドブック『大阪・関西万博ぴあ』が、50万部を突破するベストセラーになっていると発表した。この勢いだと、100万部は軽く突破するのではないか。
今のところ、報道が多い地元の関西地区を中心に、関心が高まっているようだ。ゴールデンウイークに入り、入場者は明らかに増加している。関東以北では、まだ行った人が少なく関心が薄いままだが、夏休み以降には盛り上がってくる可能性が高い。
外食、コンビニなどの万博応援企画を紹介する。
●くら寿司らしい「エンタメ」を駆使した施策とは
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くら寿司は、史上最大規模となる135メートルのレーンを擁する店舗を出している。日によっては8時間待ちの大行列になっているというから、人気の高さがうかがえる。この店のために約70もの国と地域のシンボリックなメニューをピックアップしてメニューを提案。これらは、すしではなくいわゆるサイドメニューだが「国籍も人種等も関係なくみんなが同じ回転ベルトを通して同じ食を楽しむことができる仕組み」をつくるという理念に基づいて開発した。同社ではこれを「ハンズハンズPROJECT」と呼んでいる。
万博店のために開発した68種のメニューは、2月7日からくら寿司の各店で、1店につき1商品が提供されている。
その他にも、米国「ハンバーガー」、フランス「カヌレ」、トルコ「ケバブ」といったすでになじみのあるものから、アフリカのアンゴラ「チキンムアンバ」、大洋州のトンガ「ケケ」、中欧のクロアチア「タコのサラダ」のような日本では珍しい諸料理が、各店で紹介されている。
万博が始まる2カ月も前から盛り上げていたわけだ。さらに、各店舗の回転レーンでは万博店の宣伝もしている。例えば「世界最大規模のくら寿司が大阪・関西万博に登場」「回転ベルトは世界を一つに」といった文言が書いてある。「スシロー」も万博に出店しているが、他の店舗に行っても、万博店の宣伝は見受けられない。
くら寿司では万博盛り上げ企画の一環として、ポイントラリーも実施している。全国の店舗にあるQRコードを読み込めばポイントを付与し、ポイント数に応じて、好きな商品を交換できるものだ。万博関連のステッカーやキーホルダーなどが景品となっている。なお、万博グッズは一部販売もしている。
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ところが、万博と連動させたスタンプラリーを活用した販売促進なのに、店舗で店員に聞いてみると実際にはためている人はいないようだ。地域差もあるかもしれないが、ブラウザと位置情報を連動させないと登録できないなど、登録の仕方が案外と難しい。そこがネックになっている可能性もある。
万博の店舗の集客にも寄与して、二度おいしい企画のはず。今後の利用者増を期待したい。
●「粉もん」とハンバーガーを融合したメニューが登場
ハンバーガーチェーンの「ウェンディーズ・ファーストキッチン」と「ファーストキッチン」では、万博開催で盛り上がる大阪に注目。3月27日から「大阪うまいもんグルメ」として4品を、一部を除く全国店舗で販売している。
具体的には「たこ焼きバーガー」「たこ焼き味ポテト」「ミックスジュース タピオカミルク」「ミックスジュース タピオカスパークリング」の4種類だ。たこ焼きバーガーは、大粒のたこ焼きを3つ挟んだ、ユニークな商品である。100%ビーフパティも入っていて、食べ応えがある。たこ焼きに掛かったソースやマヨネーズの味つけは、想像以上に「たこ焼きそのもの」で、別添のかつお節を加えれば、さらに本物感が増す。ジャンクで不思議な新しい味だ。インバウンドの顧客にもウケが良いという。
たこ焼き味ポテトは、たこ焼きソースのフレーバーで食べるポテト。ミックスジュース2種は、ミックスジュースそのものの完成度が高い。
同チェーンでは、トリュフやローストビーフを使った2000円を超える、インバウンドを意識した高級バーガーを期間限定で提案して、ヒットを飛ばしてきた。今回は一転して、大阪らしさをいかに表現するかに注力して、オリジナリティの高い商品を開発。日本発のハンバーガーの可能性を示したといえよう。
同じく大阪名物の「粉もん」であるお好み焼きをハンバーガーにしたのがロッテリアだ。ただし、こちらは大阪府内の限定商品である。系列の「ゼッテリア」でも同様に大阪府内の店舗で提供する。
3月27日から販売しているお好み焼きバーガーは「大阪をロッテリアならではの“食”で盛り上げたい」という考えから開発したという。最大の特徴は、バンズの代わりにお好み焼きを使っていること。具材には目玉焼き、キャベツ、紅ショウガ、かつお粉、マヨネーズなどのお好み焼きに欠かせない定番食材と、ハンバーグのパティを挟んでいる。
●ちょっと寂しい「セブンの万博」
物販に目を転じると、清酒大手の白鶴酒造が4月25日から「白鶴 THE 大吟醸 CLEAR」を数量限定で販売している。見た目が缶コーヒーのようであり、手軽さと日本酒としての質の高さの両立を目指した、スリムタイプのボトル缶である。また、万博公式マスコット・ミャクミャクのデザインが特徴だ。
ミャクミャク関連グッズは多数存在しているが、大半は万博会場とその周辺で土産用に販売している(ネット通販限定の商品もある)。
全国販売するナショナルブランドとしては珍しい。後に続くメーカーがあるか、売れ行きに注目だ。
ミャクミャクは「見た目が気持ち悪い」と不評だったが、万博が始まると、その愛嬌で人気が急上昇しているという。こうしたミャクミャク人気を逃さず、白鶴酒造は販促に活用してきた。
コンビニは大手3社が万博会場内に出店しており、通常のおにぎりや弁当、サンドイッチなどを販売している。「万博会場内には法外に高い食べ物しか売っていない」という声もあるが、これは事実と異なるわけだ。
中でもセブン-イレブンは、世界ごはん万博として各国のグルメを販売している。「大阪・関西万博」にちなんだ企画を開催している。第1弾として中国・ベトナム・米国(ハワイ)のメニューを発売した。4月15日からは第2弾として同じく中国とベトナム、米国のメニューを投入。4月22日からの第3弾ではベトナムの商品を販売している。
どれもよく仕上がっており面白いが、4つの国と地域のみの商品では「万博」というにはちょっと寂しい。第4弾以降があるのか不明だが、せっかく「万博」と銘打つならば、せめて20カ国くらいの名物料理を一挙展開するくらいの冒険をしてもらいたいものだ。昨今の低迷を脱するきっかけになる可能性だってある。
この他、万博の店舗としては象印マホービンのおにぎり専門店「ONIGIRI WOW!」では、ツナマヨなど定番4種に加えて、日本の地方と世界の具材を使ったおにぎり4種ずつを1カ月ごとに更新しながら販売している。握るのは、寿司ロボットのパイオニアである鈴茂器工製の「ふんわりおむすびロボット」だ。
なお、象印マホービンでは大阪市内にある本社1階に開館する「まほうびん記念館」にて、「1970年大阪万博時代の商品たち〜変わるゆく昭和のくらし〜」という企画展を、万博開催に合わせて開催中だ。前回の日本が高度成長真っただ中だった頃の象印商品を展示して、現代の生活とのつながりを考える、貴重な機会を提供している。こういう万博応援のやり方もある。
●飲食チェーンの「世界グルメ」企画、きっかけは「あのチェーン」
ここまで触れてきた各チェーンの施策は、いわば「世界にはまだあまり知られていないが、日本人の口に合う料理」を発見して、知らせようというもの。これらは、牛丼チェーン「松屋」の企画がルーツになっているかもしれない。同チェーンが東京五輪に向けて世界各国の料理を紹介しようと、ジョージアの料理「シュクメルリ」を発売して大きくヒットしたのは記憶に新しい。
その後、松屋は、ペルー料理「ロモサルタード」、マレーシア料理「ルンダン」、ポーランド料理「ミエロニィハンバーグ」、セネガル料理「マフェ」などを投入。新作が出るたびに話題になっている。
今回の万博をきっかけに、日本の食文化が世界の食文化を取り入れて、さらに進化していくという“レガシー”を期待したい。
(長浜淳之介)
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