あわや期待外れ助っ人の危機からベイスターズ日本一の立役者へ ジャクソンを覚醒させた二軍降格とバウアーの助言

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2025年05月06日 07:20  webスポルティーバ

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 2025年のシーズンに向けて、横浜DeNAベイスターズのアンドレ・ジャクソンは、オフの間、自身が「ベストゲーム」と位置づけた登板の映像を何度も見返していた。

 アリゾナ州スコッツデールの自宅で見ていたのは、昨年秋に行なわれた福岡ソフトバンクホークスとの日本シリーズ第5戦の映像だった。

【ジャクソンが振り返るベストゲーム】

 本拠地・横浜スタジアムで2連敗を喫したベイスターズだったが、敵地で立ち直り、2勝2敗のタイで迎えた第5戦を7対0で勝利。ジャクソンはこの試合について、次のように振り返った。

「第1戦の登板はよくなかったのですが、第5戦は間違いなく自分のなかでのベストゲームでした。メンタル、ピッチング、結果......すべてが最高でした。最初から最後まで、試合を支配したという感覚がありました。だからこそ、今シーズンはあの感覚を思い出したいですね。そうすれば、いい結果につながるはずです」

 3連勝で26年ぶりの日本一に王手をかけたベイスターズは、再び横浜スタジアムに戻ってくると、第6戦は11対2と圧勝。4連勝で日本一を決めた。前身の大洋、横浜時代を含め、3度目の日本一達成だった。

 ジャクソンは、日本シリーズの流れがベイスターズへと傾いたのは、第4戦の勝利が大きかったと語る。

「7試合制のシリーズでは、第3戦が最も重要だと言われていますが、今回は第4戦が転換点でした。もちろん第3戦も大事でしたが、第4戦で2勝2敗のタイに持ち込めたことで、まるで陸上競技の平坦なコースに入り、そこからは短距離走のようになりました。勢いのあるチームが勝つ展開になり、私たちはその流れに乗ったのです」

 ただ、第4戦の勝利の瞬間、ジャクソンはベンチにいなかった。これは日米の習慣の違いによるものだ。メジャーリーグの先発投手は登板日以外でもベンチに入るが、日本では登板予定のない先発投手はベンチ入りメンバーから外れる。そのため、試合中は宿舎で観戦することが多い。

 そのためジャクソンも、日本シリーズ第4戦は遠征先である福岡の宿舎でテレビ観戦していた。

「10月になる頃には慣れましたが、最初は違和感がありました。試合に出られなくてもベンチでチームを励まし、一緒に戦いたかった。ひとりでテレビ観戦するのは寂しかったですが、その一方で体への負担は軽くなるので、次第にありがたく思うようになりました」

 また、ジャクソンは日本野球の独特の文化にも触れた。特に印象的だったのが、"胴上げ"だ。

「あれはすばらしいですね。日本の文化を味わうために太平洋を渡ってきたのだから、輪の外側から見るのではなく、三浦(大輔)監督の真下に行き、思いきり胴上げしました。本当に気持ちよかった」

 そしてもうひとつ、印象的だったのが表彰だ。

「日本シリーズで優秀選手賞を受賞しました。桑原(将志)選手が最高殊勲選手賞を受賞し、筒香(嘉智)選手、(アンソニー・)ケイ選手、そして僕が優秀選手として表彰されました。メジャーにもMVPはありますが、選ばれるのはひとりだけです。優勝には多くの選手の活躍が必要なので、複数の選手を表彰するのはすばらしいことだと思いました。優秀選手賞に選んでもらって、とても光栄です」

 しかし、予期せぬ受賞だったため、ジャクソンはトロフィーを母国へ持ち帰ることができなかった。

「せっかく受賞したのに、帰国する際に荷物に入れ忘れてしまい、そのまま横浜スタジアムのロッカーに置いてあります。キャンプが終わればまた見られますが、本当はアメリカの自宅に飾りたい。今年はしっかり持ち帰ります」

【バウアーからのアドバイス】

 昨シーズンの開幕当初、ジャクソンは優秀選手どころか、期待外れの助っ人として見られる危機に直面していた。2017年にドジャースからドラフト指名を受け、2021年からドジャースとパイレーツで3年間プレーしたあと、2024年にDeNAと契約。しかし、開幕から6試合の先発登板で防御率6.11と低迷し、制球が安定せず1勝3敗と結果を残せなかった。そして、5月7日に二軍降格となる。

「正直、フラストレーションは溜まっていました。もっと早く日本の野球に適応できると思っていたのに、なかなかうまくいきませんでした。ただ、コーチの方がストライクゾーンから外れていた投球を指摘してくれたことで、明確な課題を持って二軍に行けたことは大きかったです。どんな調整が必要なのがわかったので、頑張れば大丈夫だと確信していました」

 具体的な課題としては、日米のストライクゾーンの違いと、打者のアプローチの違いがあった。

「メジャーでは低めの球が狙われるので、高めのストレートで攻めるのが有効です。しかし、日本の打者は高めの球を打つのが得意です。彼らのスイングは比較的フラットなので、高めばかり攻めると四球が増えてしまいます。ゾーンの高さもメジャーとは異なるので、アジャストしなければいけませんでした」

 この課題を克服するため、ジャクソンは日本の野球に詳しい元同僚にアドバイスを求めた。それが、2023年にDeNAで10勝4敗の成績を残したトレバー・バウアーだった。

「彼も最初は、ストライクゾーンや打者のアプローチの仕方に戸惑っていました。しかし、そこから適応して結果を出したので、どのように修正したのかを話してくれました。彼は人を助けるのが好きで、非常に賢い投手なので、的確なアドバイスをもらえました」

 その後のジャクソンの活躍は、ベイスターズファンの知るとおりだ。昇格後、シーズン最終戦までの4連勝を含め、7勝4敗、防御率2.90と大きく成績を改善。さらに、阪神とのクライマックスシリーズ第2戦、ソフトバンクとの日本シリーズ第5戦で勝利投手となり、"優秀選手"にふさわしい活躍を見せたのだった。

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