ミルジョージの血をもつオジュウチョウサン(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆知っておきたい!血統表でよく見る名馬
【ミルジョージ】
ノーザンテーストのリーディングサイアー記録は、中央競馬のみの集計では11年連続ですが、地方競馬を合算すると計10回となります。1989年の総合種牡馬ランキング(中央+地方)でミルジョージが首位を奪取し、ノーザンテーストが2位となったからです。
1989年の中央競馬は、ミルジョージ産駒のイナリワンが天皇賞(春)、宝塚記念、有馬記念を制覇。地方競馬でも同産駒の女傑ロジータが南関東三冠や東京大賞典を制覇したほか、ホウニンメゴヒメ、ダイタクジーニアス、シナノジョージなどが大活躍。中央ではノーザンテーストがトップとなったものの、中央と地方を合算するとミルジョージが上回りました。
1975年にアメリカで誕生し、同国で走って4戦2勝。重賞の晴れ舞台を踏む前に骨折により引退しました。1979年にわが国で種牡馬入りし、競走成績が乏しかったこともあり当初は地方競馬に入厩する仔も少なくなかったのですが、最初期の産駒であるロッキータイガー(東京大賞典-2着、帝王賞、ダイオライト記念、ジャパンC-2着)などが南関東を中心に大暴れし、中央に入厩した馬からもユキノローズ、スーパーグラサード、エビスジョウジ、モガミヤシマなど次々と重賞勝ち馬が誕生しました。
父が英愛リーディングサイアーのミルリーフで、母の父がリボー系のラグーサ。底力あふれるステイヤー血統です。気性は激しく、芝・ダートを問わない万能性がセールスポイントでした。オークス馬エイシンサニー、牝馬三冠の最終関門だった時代のエリザベス女王杯(芝2400m)を勝ったリンデンリリーも忘れがたい馬です。
後継種牡馬のミルコウジ(東京ダービー)が地方競馬のリーディングサイアーとなり、ホワイトシルバー(東京大賞典)やセントリック(東京ダービー)の父となっています。母の父としてはセイウンスカイ(皐月賞、菊花賞)やカネツフルーヴ(帝王賞、川崎記念)などを出しています。
オジュウチョウサンやニシノデイジーの母方に含まれており、障害に強い血としても注目です。
◆血統に関する疑問にズバリ回答!
「今年産駒がデビューする海外の注目種牡馬は?」
ヨーロッパで注目したいのはカルティエ賞年度代表馬に選出されたセントマークスバシリカ。仏2000ギニー、仏ダービー、エクリプスS、愛チャンピオンS、デューハーストSを制覇した名馬です。半兄に英2000ギニー馬マグナグリーシアがおり、父シユーニも評価が定まった名種牡馬。クールモアが将来のエース候補と期待しているだけに繁殖牝馬の質・量も十分すぎるほどです。
アメリカではエッセンシャルクオリティとシャーラタン。前者はアメリカで10戦8勝の成績を残し、最優秀2歳牡馬、最優秀3歳牡馬に選ばれました。父はタピットで、牝系はコントレイルと同じ。この春、乗りに乗っているゴドルフィンの所有馬で、2歳戦から突っ走りそうです。後者はアーカンソーダービーやマリブSを勝つなど5戦4勝。「スパイツタウン×クワイエットアメリカン」という魅力的な血統構成で、産駒の評価が高く、すでにデビュー戦を勝ち上がった仔も出ています。