
F1第6戦マイアミGPレビュー(前編)
わずか1秒──。
たったそれだけの差で、角田裕毅(レッドブル)はスプリント予選SQ1最後のタイムアタックに入ることができず、SQ1敗退となってしまった。
「コミュニケーションがとてもプアだったと思いますし、改善が必要だと思います。出て行く時にピットで渋滞にハマってしまって、アタックに入れるかどうかギリギリなのはわかっていたんですけど、最終コーナーで前にクルマがいて、どうすればいいのかわからない状況でした」
前にいたマックス・フェルスタッペンには、角田に譲るよう指示が出ていたものの、チームから角田に対して、先行しても構わない旨の伝達はなかった。角田としては、エースであるフェルスタッペンのアタックを邪魔することはできない意識があるから、アタック直前で抜いていく考え自体がない。
|
|
そのことをレースエンジニアが認識しておらず、指示が十分ではなかったがゆえの失敗だった。
「かなり後ろからのレースになってしまいますけど、こういうサーキットでは何が起こるかわかりませんし、前向きな気持ちでベストは尽くします」
その言葉どおり、土曜午前のスプリントレースは雨になり、最後尾スタートの角田は路面が乾いてきたところで早めのドライタイヤ交換というギャンブルを敢行。
これが見事に当たり、さらには前走車にペナルティが多く出たことで、角田は6位入賞を果たした。
「あれだけ後方からのスタートであればギャンブルはしやすいですし、すべてがうまくやれたと思います。
|
|
アウトラップで走り始めた時はけっこう厳しかったですけど、逆に言うと、あと2周くらい引っ張っていたら、ほかのクルマもピットインしてしまってアンダーカットはできなかったと思うので、あの(タイミングでピットインした)判断はよかった。その戦略を結果に結びつけられたことに満足しています」
予選・決勝に向けたデータを収集すべく、セットアップを変更してピットレーンスタートを選んだ角田だったが、雨が降ったことで十分なデータは得られず、予選にはぶっつけ本番のセットアップ変更で臨むこととなった。
フリー走行が1回しかないスプリント週末だからこその難しさでもある。また、FP1のイニシャル(初期)セットアップが外れてアンダーステアが強く、曲がらないマシン挙動にかなり苦戦を強いられたこともあって、余計に苦しい週末となってしまった。
【マシンの限界はまだまだ先にあった】
ただ、そのセットアップ変更は成功し、予選ではQ3まで進出を果たした。
「スプリント予選ではほとんどアタックらしいアタックもできなくて、マシンバランスがどうなのかハッキリ見えなかった部分もありました。スプリントがウェットコンディションになってしまい、予選に向けたセットアップ変更もほぼ想像でやるしかなかったので、Q3まで進めたということには満足しています。
|
|
もちろん、10位というのは望んでいる結果ではないです。もっと上を目指してはいたので、複雑な気分でもあります」
角田自身としては、Q3のアタックは悪くない感触だったという。だが、タイムは伸びなかった。フェルスタッペンが圧巻の走りでポールポジションを掴み獲ったのに対し、角田は0.739秒差をつけられてしまった。
「ラップ自体は悪くなかったと思います。サウジアラビアではスナップ(※)が出たり、ロックアップ(※)したり、本来あるべきレベルでアタックがまとめられなくて、なぜそうなってしまったのかは今もわからないんですけど、今回は悪くなかったと思います。それでも思ったようにマシンの改善が果たせていないのは、少し頭が混乱しますけどね」
※スナップ=コーナリングの途中で急にリアのグリップを失うこと。ロックアップ=走行中に車輪の回転運動がストップしてしまうこと。
マシンの限界を超えてタイムが出せなかった前回とは違い、今回はマシンの限界に近いギリギリのところまで攻めることができた。しかし、限界はまだまだ先にあった。
予選の課題はつまり、マシンのことをもっと深く理解する、ということにある。それができなければ、ドライバー自身が腕比べをするステージには進めないのだ。
◆つづく>>