とあるコンビニの入口近くにある喫煙所。そこでたばこを吸う主人公のもとに「久しぶり!」と声をかける1人の女性ーー。喫煙する2人の姿を描いた漫画『喫煙所アプリ』が2025年4月に各SNSで投稿された。
コンビニの蛍光灯の光が差す傍ら、たばこを吸いながら過ごす静かな夜。本作で描かれる繊細な世界は、穏やかで、美しい。そんななか描かれる2人の結末とはーー。
2人の関係やそれぞれの境遇など、想像の余地を多く含んだ本作。作品や制作の背景について、作者・ハルプラスさん(@hal_plus_)に話を聞いた。(あんどうまこと)
ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
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ハルプラス:元々、都市開発を追いかけるのが好きです。その中で都市の再開発は子どもやファミリー層のためという大義名分で進められることが多いです。ただ、街で生活している方はそのような子どもやファミリー層だけではなく、中にはグレーな方というのも沢山いらっしゃいます。
私はとある地方都市の、その中でも中心都市ではない街の出身ですが、そこには昔ながらの活気ある商店街がありコミュニティが形成されていました。それが今ではただのマンションです。
再開発によって居場所を追われたグレーな人たちの、もの寂しさ、生きづらさみたいなものは確かにそこにあって、私はその意志を尊重したいと思い本作を創作しました。
ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?
ハルプラス:5ページ目、雨の中で2人が笑っているシーンです。本作では後輩を主人公として描きましたが、彼女にとってこの時間が最も楽しかったんじゃないかなと考えて描きました。
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本作に登場する2人は先輩と後輩という言葉でしか語られません。ただ身なりなどは対照的になるよう意識しながら描きました。
また、このシーンは後輩にとって、とても重要なシーンではありますが、先輩にとってどこまで重要だったのかまでは、わかりません。
ーー先輩はメビウス、後輩はテリアのパープルを吸っていました。
ハルプラス:たばこは紙巻と加熱式の2種類に分かれると思うのですが、後輩は「今風の子」として描きたく、加熱式たばこを選びました。
先輩と後輩は、大人と子どものような関係性で描きたく、どこか遠い存在であるという、その象徴として紙巻たばこと加熱式たばこを選んだところもあります。
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ーー本作では2か所、冒頭と最後のページにモノクロではなくカラーで描かれた箇所がありました。
ハルプラス:最後のページのカラーのコマについて、綺麗な空気の中での生きづらさを表現しています。5ページ目のモノクロで描いた夜のコンビニのコマの楽しく騒がしいシーンと対照的になるように意識しました。
1ページ目でカラーをつかい描いたアプリのアイコンには正直、深い意味はありません。元ネタとなったアプリがあり、似たようなカラーを選びました。ただタイトルのカラーも合わせ、作品全体の暗めな色合いと対照的な、映えるものとなったのでよかったです。
ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
ハルプラス:『日常』(KADOKAWA)などを手掛けるあらゐけいいち先生の同人誌があり、4コマ漫画のほか1、2ページで完結する漫画が多く収録されています。その作品を読んだ際に大きな衝撃を受けました。短編、長編漫画ではなく、数ページの漫画を寄せ集めた1冊の作品があってもよいのだと感じたからです。
そのため現在は本作のような作品のほか、その街の土地柄や住んでいる人々の魅力を取り上げた1ページ完結のレポート漫画を投稿しています。
ーー今後の活動について教えてください。
ハルプラス:SNSでは1ページ完結の漫画や短編作品を多く投稿していますが、長編作品の制作も構想しています。今後おそらく日本では財政破綻してしまう地方自治体が増えていくのではないかと感じていて。そんななか消滅していくかもしれない地方都市の魅力を発信する作品の構想を練っています。
また漫画作品のほか、1枚のキャンバスに描いた、実物としてのイラスト作品も制作してみたいという思いもあります。
(文・取材=あんどうまこと)
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