
人気小型犬種のチワワのハルくんは、13歳という高齢にして2年間もクルマの中での過酷な生活を強いられたワンコです。
元々は飼い主がペット不可の賃貸住宅でハルくんを室内で飼っていたようです。住民から苦情が相次ぎ、クルマの中で飼うことにしたようです。
暑い日も寒い日もずっとハルくんはクルマの中でひとりぼっち。満足なお世話もされておらず、その車内は、心に大きな傷を負いストレスを抱えハルくんが荒らしたとおぼしき様子で、ゴミなどが散乱している状況でした。
クルマの中にハルくんを置いたまま急逝した飼い主
そんな中、飼い主がクルマで自損事故を起こし急逝。ハルくんはさらに行き場を失います。この間、飼い主の知り合いがハルくんのためにエサと水だけは日々届けてくれましたが、後に「お世話をし続けるのは限界だ」として、結果的に高知市の中央小動物管理センターに入ることになりました。
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ハルくんの経緯と存在を知った心ある人が、地元の愛護団体・アニマルサポート高知家に相談。団体に保護され、しばし団体と提携する預かりボランティアさんでトリマーが本業のYuさんという方の元でお世話を受けることになりました。
心に傷を負い人間に噛み付いていたハルくん
保護当初、ハルくんは「噛み犬」と言われていました。しかし、数多くのワンコと向き合ってきた預かりボランティアさんは慌てませんでした。
「大丈夫。噛む犬は理由があって噛んでいることが多く、噛むことでしか自分を表現できないこともある」として迎え入れました。
実際、保護当初は噛む素ぶりを見せていたハルくんでしたが、Yuさんからのたっぷりの愛情を受け続け、保護から2週間ほどが経過すると噛まなくなるばかりか、「もう僕をクルマに閉じ込めないでね」「ひとりぼっちにしないでね」とばかりに極度に甘えるようにもなりました。
手術を受けて健康を取り戻したハルくん
ハルくんは体もボロボロでした。ホルモン異常、脱毛、睾丸に腫瘍があり、特に腫瘍は癒着しており、亡くなった飼い主がハルくんのお世話を全くしていなかったことがわかりました。団体ではハルくんに適切な手術を実施し、腫瘍は無事全摘出。細胞腫は被膜を超えての浸潤(しんじゅん)はなく、健康体を取り戻すことに成功しました。
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この結果を受けたYuさん・団体スタッフともに大喜び。「次は『ずっとのお家』を探そうね」と、里親募集をスタートさせました。
ハルくんを「家族」として迎え入れたその人は…
それから数カ月。ついにハルくんに最も相応しい里親さんが見つかりました。その里親さんとは、保護からずっとハルくんをお世話し続けたYuさんでした。
実は、この間にも「ハルくんを迎え入れたい」という声は複数ありました。しかし、少しでも気に入らないことがあれば、また噛み付いてしまいいずれも破談。譲渡会などに参加させれば、会場で寂しそうな表情を見せていました。
つまり唯一ハルくんが心を開き、信頼を寄せているのがYuさんで、自身が「私がハルくんを看取る」と決意してくれたのです。
クルマの中で2年間過ごし、心身ともにボロボロだったハルくんの経緯も含めて考えれば、Yuさんに迎え入られることになり、本当に良かったと思いました。でも、これからのいっさいの不安がない幸せな犬生を前に、一番喜んでいるのは当のハルくん自身。いつまでも優しいYuさんのもとで元気で過ごしていてほしいと願います。
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アニマルサポート高知家
https://anisupo.jimdofree.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)