日本の製造小売業といえば何と言っても、海外でも成功して売り上げ3兆円を達成した、ファーストリテイリングということになるのですが、このファストリに次ぐ存在といえば間違いなくニトリということになるでしょう。
家具・インテリア雑貨チェーンとして、国内に822店舗、中国をはじめアジア各国にも179店舗を展開、2024年3月期売り上げは8957億円となっています(小売業10位)。株式時価総額においては、ファストリ、セブン&アイ、イオン、PPIH(既出)に次ぐ5位であり、今や業界屈指の小売業として評価されています。
ニトリといえば、家具インテリア小売業としては、国内では圧倒的な位置付けを確保していて、比較できるライバルは存在しません。家具小売業では、イケア・ジャパン売り上げ944億円、東京インテリア同594億円はありますが、規模としては10分の1以下です。
また、家具取扱いのある小売としては、無印の良品計画(家具売り上げ非公表)、大塚家具を吸収したヤマダHD(インテリア売り上げ437億円)、家具に強いホームセンターとしてナフコ(365億円)、島忠といった企業もありますが、島忠はニトリの傘下企業ですし、他も規模的にはニトリのライバルとは言い難い存在です。
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かつて北海道のローカル家具店であったニトリが、ここまで圧倒的な存在になれた理由は、彼らが自称する「製造物流IT小売業」を実現したことによるのは間違いありません。ざっくり言えば、製造物流IT小売業とは、オリジナル商品の、自社での製造、物流、販売の各工程をITでコントロールしたサプライチェーンを構築し、その効率性によって実現したコスパで圧倒的な競争力を実現した小売業、ということになります。
このあたりについては、各種のニトリ本や関連記事が多数ありますが、まずは「ニトリ IR資料室」で検索して、統合報告書をチェックしてみてください。本文では、以下2点だけ、ライバルとの違いを説明したいと思います。
ニトリは、自社企画した製品を海外生産したことでコスパの高い商品を実現したことも重要なのですが、それ以上にすごいのは、家具の「置き在庫」をなくしたことがコスパ実現につながっていることです。家具は単価も高く、売れる頻度も低く、置いておく場所もとるので、売場に並べるだけでもけっこうコストがかかります。
一般的な家具屋に置いてある在庫は、家具屋の在庫ではなく、問屋が在庫負担して売場に置いている「置き在庫」が普通でした。そして、売れた時に、問屋→家具屋→消費者という所有権移転が同時に起こった、ということにしていました。(この構造はアパレルとベースは同じです)そうしないと、いつ売れるかわからない商品を、資金力に乏しい小売店が仕入れられなかったからです。
しかし、この取引形態は、問屋に高いリスク(倒産リスク、返品リスクなど)と、在庫コスト(金利負担、物流コストなど)の負担が発生しますので、かなりのリスク料金が価格にオンされていました。それらのリスク、コストを物流効率化とITによって削減し、価格に還元したため、ニトリ商品は「お、ねだん以上」と公言できるのです。
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もうひとつ、重要なポイントは、ニトリの1階売場にあります。ニトリは1階に、インテリアだけではなく、キッチン、バス、トイレタリー、寝具関連など、家の中で使うあらゆる雑貨類を、色彩にも統一感のある自社製品でコスパ高く取り揃えました。これにより、ニトリへの女性客の来店頻度は月に数回程度となりました。
このことで、年に数回しか行く用のないライバル家具店は、家具購入の際の選択肢に入らなくなったのです。あまり知られていませんが、ニトリが圧倒的なシェアになった根源は、この来店頻度がミソだったのです。
※この記事は『小売ビジネス』(中井彰人、中川朗/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
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