
春は猫の繁殖が盛んになる季節です。残念なことに、各所で行き場を失う猫のニュースが取り沙汰されるのも春先に多いわけですが、多くは避妊手術などをしなかったせいで繁殖が進み行き場を失う外猫が増えたケースです。
一方、人間が意図的に猫を遺棄する事件は、これもまた悲しいことに、各地で季節を問わず起きています。
2024年秋、高知県のとある場所でも悲しい事件がありました。同じ場所に明らかに人間が捨てたとおぼしき8匹もの行き場を失って過ごしていたのです。
人馴れしていた9匹は、初めて見る人間に必死に助けを求めた
後に同じ場所でもう1匹の背格好のよく似た猫も見つかり、合計9匹もの猫がここに捨てられたということのようでした。
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9匹の猫は人馴れしており、「人間が意図的に遺棄した」ことを示していました。9匹の猫はここに来た人間を前に、空腹と不安からか蚊の鳴くような声で「ミャーミャー」と助けを必死に求めてきます。よく見ればいずれも風邪をひいている様子。このまま放っておくわけにはいきません。
遺棄現場の地域のボランティア団体が、まずこの9匹を発見したわけですが、のちに愛護団体、アニマルサポート高知家に協力要請。すぐに現場に集合し、警察に通報するなどをした上で地域のボランティア団体が7匹を、アニマルサポート高知家が2匹を保護。子猫たちにエサを与え献身的な医療ケアをすることにしました。
そして、捨てた人の心に残る良心を信じ、またはこの9匹の猫の出自を知る人に投げかけるように、アニマルサポート高知家ではネットでこんなふうに呼びかけました。
「どんな理由があっても『遺棄』は犯罪です」
「この子たちにお心あたりのある方はいませんか?人馴れはしていてもみんな風邪ひきで健康状態が悪いようです。情報があれば連絡ください」
穏やかな呼びかけのようにも感じますが、そうではありません。同時にこうも記していました。
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「猫の遺棄は、この地域だけではなく、高知県下で多く発生しています。動物への愛護意識が高まる中、この『遺棄』の部分だけは変わらないのが現実です。改善の兆しが見えてきませんね。どんな理由があっても『遺棄』は犯罪です。命の『遺棄』です。『遺棄』を絶対に許しません」
「ともに生きる」社会作りができるかどうか私たち次第
全く持って言う通りです。「動物愛護法」にも記載されているとおり、犬や猫などの指定された動物は愛護動物に分類されており、育てていた動物を虐待・遺棄などすることは犯罪になります。「動物だから罪に問われない」「捕まらない」と、都合良く解釈する一部の人間が後を絶たないことが、犬や猫、動物たちにとって一番危険なことのようにも思います。
本当の意味で、私たちにとって最も身近な動物・猫や犬と「ともに生きる」社会作りができるかどうかは、私たち次第と言って良いでしょう。
肝心の9匹の猫たちの元には、その後も捨てた人間や、その出自を知る人からの連絡はありませんでした。
しかし、団体のケアなどを経て9匹ともスクスクと成長し、このうち7匹が「ずっとのお家」へと巣立っていきました。残る2匹にも近い将来にピッタリの里親さんが見つかることを祈るばかりです。
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今回の9匹はまだ不幸中の幸いと言って良いケース。今の日本の社会には悲しい生涯を遂げる動物がいることを忘れてはいけないなと思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)