
2024年のゴールデンウィーク。高知県内のとある公共施設は、連休中の大混雑が予想されていました。その連休が始まる前日、施設の前に不審な段ボールが置かれていました。
中を開けて見て見ると、生まれたばかりの小さな子猫の姿が…。
段ボールを置いた人間は何を考えてこの時期、この施設にしたのでしょうか。「大勢の人が来るんだから、そのうちの誰かが子猫の面倒を見てくれるだろう」とでも思ったのでしょうか。
いずれにしても身勝手極まりない行動で、これはれっきとした犯罪行為。現に動物の遺棄で逮捕起訴される例も珍しくなく、今後はどうかこういった悲しい事件が減っていってほしいと願うばかりです。
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「たかしくん」と名付けたものの後にメスだと判明
この段ボールの中に入っていた子猫は、生まれたばかりで状況をわかっていない様子。子猫を救おうと尽力した人たちの前で「ミャーミャー」と甘える素振りを見せました。
この子猫を保護・お世話をし、後に幸せへと繋いであげようと立ち上がったのが高知県内の愛護団体・アニマルサポート高知家。保護後、すぐに団体提携の預かりボランティアさんのところへ預けました。生き抜いてくれた尊い命です。たくましく成長するようにと「たかしくん」という名前をつけてあげ、献身的なお世話をすることにしました。
そのおかげもあり、子猫は健康に異常はなくスクスク成長していったのですが、後の1カ月検診で意外なことが判明しました。なんと「たかしくん」と名付けた子猫は、メスだったのです。れっきとしたレディーに失礼……と、後にたかしくんは「タカちゃん」と改名されることになりました。
成長につれて明るくおてんばな性格が見えてきた
タカちゃんは成長するにつれて、持ち前の明るくおてんばな性格を見せるようになりました。そして何よりも預かりボランティアさんのことが大好き。その背中や肩に飛び乗ったり、かと思えば体に顎を乗せて甘えてきては、そのままスヤスヤと眠ってしまったり。
その度に目を細める預かりボランティアさんでしたが、保護から数カ月後、さらにうれしい連絡が入ってきました。
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里親希望者さんの家でキツネザルを演じたタカちゃん
「タカちゃんをうちの家族として迎え入れたい」、Kさんという里親希望者さんからの申し出があったのです。Kさんはお子さんのいる温かい家庭の方で、これまで代々白猫ばかりを飼ってきた経験があると言います。しかし、お子さんがきちんと猫のお世話ができるようになったころには、「今度は柄のある猫を飼いたい」と考えていたのだそうです。
そんな中、SNSでタカちゃんの存在を知り、さっそくお子さんと一緒に譲渡会へ。タカちゃんの明るくかわいい様子と、お腹周りの柄が少し変わっているところに一目惚れし、お子さんの「この子がいい!」という一声で迎え入れを申し出たとのことでした。
Kさんの家にまずはトライアルをしたタカちゃんは、長い尻尾をピンとたて、キツネザルのような様子を見せていましたが、しかし、程なくしてその尻尾を家族にすりつけて甘えるようになり、すぐに虜に。もちろん問題なく、ここで正式譲渡となりました。
「かわいいでしょ? だから許して!」
この優しい家族のもとでタカちゃんは新たに「すみれちゃん」という名前をもらいました。以降は常に家族の誰かのそばに寄り添うほどとなり、ときにイタズラが過ぎて怒られた際には、デーンと床に寝転がりお腹を見せて「かわいいでしょ? だから許して!」と甘えてくるようにもなりました。
あの日、無造作に段ボールの中に入れられていた記憶はきっともうなくて、すみれちゃんは今日も温かいおうちの中で幸せを噛み締める日々を送っていることでしょう。
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(まいどなニュース特約・松田 義人)