元海上保安庁第3管区海上保安本部長の遠山純司氏が、8日配信のAbema報道番組「Abema Prime(アベプラ)」に出演。沖縄・尖閣諸島で頻発している中国船による領海侵犯や、尖閣国有化後4度目となる領空侵犯があったことを踏まえ、自身の尖閣周辺警備の指揮の経験談を語った。
番組では、今月3日に侵入した中国船からヘリコプター1機が飛び立って日本の領空内を一時飛行したことに加え、領空侵犯時に、付近を飛行していた日本の民間航空機が、国交省の安全確保の警告に基づいて引き返したことも紹介された。
遠山氏は、尖閣周辺で日本の数十隻の巡視船が絶えず監視していることを紹介。その上で「現場の対応で一番厳しいのは、物理的に船をぶつけて領海外に出すとか、武器を使って威嚇して入ってこさせない、というやり方は非常にわかりやすい。留飲が下がる。いかにも日本の領土を守っている。ただ、その後に何を待っているか、ということをしっかり考えなくてはいけない。過去の歴史も教えてますよね。太平洋戦争の冒頭、真珠湾攻撃があった。そこで日本国民はみんな拍手喝采したわけですよ、留飲が下がった。だけどその後に待っていたものは何か、ということですね」と解説した。
EXITりんたろー。が「呼びかけ続けるしかない、ということですか」と質問すると、遠山氏は「平成28年、私が尖閣警備船隊の指揮官として、指揮を執った経験があります。その時は8月に、200隻という中国の漁船が、過去最多になるんですけど、押し寄せてきたわけですね。これは禁漁が終わって純粋に、結果としては魚を捕りにきたんですけど、それを保護するように中国海警の船が、過去最多となる、のべ28隻入ってきたわけですね。その時、私は指揮官として守ってきたんですけど、その時の私の指示は三つあって」と前置きした。
まず「ひとつは『絶対に島に上陸させない』。これは死守するぞ、と。2つめ『絶対に船をぶつけない』。トラブルを起こさない。向こうがぶつかってきても、必ず日本がぶつかってきた、って言うわけですよ。それを口実にして次の手次の手を切ってくる。だから絶対付け入るスキを与えないためにも船をぶつけない。30センチでもいいから間合いをとれ、ということ。それから3つめ、『必ず証拠のビデオ、写真、これを採取しろ』と。この原則に従って、1週間かけて、じわじわじわじわ追い出して、結果として全てクリアした」と振り返った。
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船内には、撮影技術を訓練した部署があることも紹介。一方、平石直之アナウンサーから「本当にすごいことと思う一方で、入ってくるのに対して、弱腰すぎないか、という見方もありそうですけど、もう少し毅然(きぜん)とできないか。衝突を避けたいのはよく分かるんですけど、どう考えたらいいんですか」と指摘を受けると、遠山氏は「結果として、その時に上陸させてませんし、船にダメージも与えてない、誰もケガしてない、死んでない、ということですね。私としてはそれはベストの対応を取れたと思っています」と主張した。
それでも弱腰では、との指摘が続くと、遠山氏は「そこで大事になるのが、外交であり、政治であり、国際連携だと思うんですね。現場で片を付けるというのは、必ず血が流れます。ヘタすれば、ウクライナ、ガザと同じような形になっちゃうわけです。軍が出てきてガチでやってしまって。それをやらないように、現場としてはうまく踏みとどまって、多少の押したり押されたりというのはあるかもしれませんけど、そこを維持して、政治、外交で決着をつけるのを、ある程度、時間がかかってもそれを待つという、私はそれしかないと思ってます」と語った。
平石アナからは、海上自衛隊でなく海上保安庁が対応していることで、軍とぶつからない状況でトラブルを回避している面があることも紹介され、同じく中国が進出している南シナ海では、フィリピンが同様の戦略を導入していることも説明された。
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