低炭素燃料eメタノールが給油された海運大手マースクのコンテナ船=13日、デンマーク南部オーベンロー 【ロンドン時事】デンマークでこのほど、低炭素燃料「eメタノール」の世界初となる量産が始まった。再生可能エネルギーへの投資を見直す企業の動きが出ているものの、化石燃料への依存度が高い海運業界などでは脱炭素化を促す規制強化の取り組みが進む。eメタノールが温室効果ガス(GHG)削減で一段と存在感を高めるには、より安価で提供できるようになるかが鍵となりそうだ。
世界では最近、エネルギー企業の再エネ事業縮小が相次いでいる。英石油大手BPは今年2月、再エネ事業への投資を大幅に削減し、石油・ガス事業を一段と重視すると発表。デンマークの電力会社オーステッドは昨年8月、市場の成長が想定より鈍いと判断し、eメタノール開発のための工場建設計画を撤回した。
一方、化石燃料からの脱却を促す圧力は強まっている。世界のGHG排出量の約2.5%を占める船舶燃料を巡り、欧州連合(EU)は今年、GHG排出量の削減を義務付ける新規制の適用を開始。2050年ごろまでにGHG排出量の実質ゼロを目指す国際海事機関(IMO)も4月、国際海運の船舶から排出する一定基準を超えたGHGに課金することを規制に盛り込んだ。
こうした中、注目されているのが再生可能エネルギーを使って作るeメタノールだ。三井物産がデンマークの再エネ企業ヨーロピアン・エナジー(EE)と共同出資したソーラーパーク・カッソ社が5月12日、量産を開始。同国の海運大手マースクや玩具大手レゴなどに供給する。
普及にネックとなるのは価格だ。カッソ社によると、生産量の少ない初期段階では化石燃料由来と比べると2〜3倍に達する。ただ、マースクは「最初のステップを踏み出し、世界に示すことが重要だ」(幹部)と歓迎。EEのアンダーセン最高経営責任者(CEO)は、IMOなどの規制が低炭素燃料の利用拡大に役立つとした上で「35年ごろには価格が化石燃料由来メタノールと同等になると考えている」と話す。