画像提供:マイナビニュース鉄道友の会は22日、近畿日本鉄道の8A系をローレル賞(優秀車両)に選定したと発表した。ローレル賞はブルーリボン賞・ローレル賞選考委員会が選んだ候補車両に対する会員の選考結果を参考に、審議を経て優秀と認めた車両を選定しており、今年で第65回となる。
8A系は近鉄にとって24年ぶりという新系列一般形車両。1960〜1970年代に製造され、多数が活躍している一般形車両の更新を目的としており、まず奈良線・京都線用として8A系が4両編成で登場。2024年10月から営業運転を開始した。今後、大阪線、名古屋線、南大阪線などへの展開も予定している。車両形式について、新たに5桁の付番体系を制定。最上位の桁はおもに運用線区、続く「A」は車両シリーズを表した。
車体は近鉄の一般形車両で標準となる20m級4扉。裾絞りのない車体幅2,800mmを実現したアルミ製構体とし、運用線区で限界拡幅工事を行ったという。前頭部は八角形をモチーフとした特徴的な造形で、斜めに配したLED前照灯を下部、大型の種別行先表示と標識灯を上部に備える。併結運転を前提とした貫通扉と転落防止外幌を設け、オフセット衝突に対応した構造に。赤と白のツートンカラーを継承しつつ、新たな色合いと塗り分けパターンを採用した。
客室のドア間にL/Cシートを装備。ロング・クロス各モードをドア間のブロックごとに設定できるようにしたことで、混雑状況に応じた柔軟な運用を可能とした。各車両の中央ドア脇に2カ所、縦横両方向に座れる座席を備えたスペース「やさしば」を設け、ベビーカーや大型荷物など多様なニーズに対応。国内最大級で42インチハーフの大型LCDによる車内案内表示器をドア上に設置している。客室デザインは「日常の華やかさ」をコンセプトとしており、同社車両の新たな標準として、在来車の更新工事にも水平展開できることも特徴となる。
制御装置はハイブリッドSiC素子によるインバータ制御、ブレーキ装置は抑速・回生付き電気指令式。読替装置とブレーキ管の引通しによって、さまざまな制御方式・ブレーキ方式の在来車と柔軟な併結運用を実現している。
8A系は会員による投票で支持率が高かったとのこと。近鉄の次世代を担う一般形車両として、きわめて高い運用の汎用性・柔軟性と高レベルな客室サービスを実現しつつ、新たな標準化をめざした車両として高く評価され、ローレル賞に選ばれた。
なお、近畿日本鉄道によれば、同社のローレル賞受賞は2010年の特急車両22600系「Ace」以来、15年ぶり5回目とのこと。8A系はこれまでに14編成(計56両)投入され、奈良線、京都線、橿原線、天理線で運行されている。(MN 鉄道ニュース編集部)