プロジェクトの一環として開かれた講座を受ける保護司ら=20日、滋賀県草津市 大津市で昨年5月、保護司の新庄博志さん=当時(60)=が、担当する保護観察中の男に殺害された事件から、24日で1年となる。新庄さんは生前、地域と連携して観察対象者の立ち直りを支援するプロジェクトを立ち上げ、中心メンバーとして活躍してきた。保護司仲間らは遺志を受け継ぎ、プロジェクトを続けている。
プロジェクトは2023年4月に始動。滋賀県更生保護事業協会の事務局長だった新庄さんが「滋賀KANAMEプロジェクト」と命名した。観察対象者の置かれた状況や相談内容が異なり、保護司だけでは対応が難しいことから、教育や福祉など地域の関係機関・団体と連携した支援を目指す。県内9保護区に、調整役の保護司計13人を配置して活動している。
草津保護区を担当する保護司の高岡由喜晃さん(62)は、新庄さんと30年来の付き合いがあり、プロジェクト立ち上げの際にも「一緒にやろう」と声を掛けられた。新庄さんについて「周りの意見をうまく引き出し、一つにつくり上げていける存在だった」と振り返る。事件に対し「悲しみしかない。殺される理由が分からない」と声を落とす。
高岡さんは事件から半年後に、プロジェクトの一環として社会福祉協議会などと連携したフォーラムを実施。「更生保護」の言葉を広く知ってもらうのが狙いだった。今月20日には、大学教授らを講師に、コミュニケーション方法に関する講座を開催し、保護司だけでなく地域の人も参加した。今後もSNSの適切な使い方を学ぶ研修会や、少年の更生をテーマにした映画の上映会などをする考えだ。
他の保護区でも、青少年団体や商工会などに取り組みを周知したり、行政や学校の関係者らと懇談したりするなど、地域とのネットワークづくりが進められる予定。
プロジェクトの現場責任者で保護司の澤哲男さん(66)は、連携のための手法は今も模索していると話した上で、「新庄さんの遺志を今後も引き継いでいかなければいけない」と訴えた。