巨人を戦力外となった高橋優貴が球団スタッフのオファーを断り、社会人野球でプレーすることを決めた理由

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2025年05月25日 07:30  webスポルティーバ

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高橋優貴インタビュー(後編)

前編:「高橋優貴が語るプロ時代のたった一度の悔恨」はこちら>>

 2024年に巨人から戦力外通告を受け、社会人野球のミキハウスでプレーすることを決めた高橋優貴。プロからアマチュアの世界に戻った今、どんな思いで現役を続けているのか。また、今後の目標についても語ってもらった。

【6年で巨人を戦力外通告に】

── 巨人から戦力外通告を受けた時はどんな心境でしたか? 2ケタ勝利を挙げた実績があり、しかもまだ入団してから6年しか経っていませんでした。

高橋 驚きはなかったです。まだ早いのでは......と思ってくれた人もいました。でも、毎年選手の入れ替えがあり、成績を残せなければ去っていくしかない。それがプロ野球の世界だと思います。だから、僕のなかでは戦力外を受けたことは不思議ではなかったです。

── 選択肢として、「球団スタッフとして残る」「他球団への移籍」「独立リーグ、社会人でプレー」「現役引退」などがあったと思います。

高橋 最初に野球を続けるのか否かを考えました。野球というスポーツは、やれる期間が限られています。独り身ならどんな選択をしてもいいかもしれません。でも家族がいる以上、自分本位で決めるのはよくないと思っていました。実際のところ、スタッフとして球団に残るという話もいただきました。「何が正解か......」というのはないと思いますが、「どの選択がいいのか」はすごく悩みました。

── 同じ巨人のドラフト1位投手であり、ミキハウスに移籍した桜井俊貴さんからの誘いがあったそうですね。桜井さんは巨人スカウトを経験したあと、ミキハウスに投手として復帰しました。

高橋 僕は高校から大学に進み、巨人に入団しました。キャリアのなかで、唯一、社会人野球は内側から触れた経験がありませんでした。ただ、巨人時代に社会人野球のチームとオープン戦や練習試合をして、レベルの高さは感じていました。

── ミキハウスに行くにあたって、ほかに誰かのアドバイスはあったのですか。

高橋 以前に東海大菅生の若林弘泰監督から、「都市対抗野球はすばらしいぞ」という話を聞いていました。それに昨年秋、日本選手権でミキハウスがENEOSを完封した試合を観戦しました。活気あるチームであると感じたので、僕もメンバーとして一緒にプレーし、全国大会で活躍できるようにと思って入団を決めました。

【勝利に貢献することが会社への恩返し】

── プロ野球のドラフト1位の選手が社会人野球に移籍するということで、不安はありませんでしたか。

高橋 プロ野球のドラフト1位というのは、1年に12人しか選ばれないので、それは光栄なこととして受け止め、前向きに考えていました。ただそれはプロでの話であって、今はミキハウス野球部の一員ですから、そんなことはまったく考えていません。都市対抗野球や日本選手権に出場、勝利に貢献することが、採用してくれた会社への恩返しになると思って精進したいと思っています。

── 社会人野球の近畿地区の強豪というと、NTT西日本、大阪ガス、日本生命、パナソニック、三菱重工Westなどが思い浮かびます。

高橋 ミキハウスは近畿代表として4年連続5度目の都市対抗出場を果たしています。先述したように、昨年は日本選手権にも出場しました。

── プロ野球と社会人野球の大きな違いは何でしょうか。

高橋 最大の違いは一発勝負トーナメントの緊張感ではないでしょうか。社会人野球をまだ経験していない部分が多いので詳しくは言えませんが、違った野球観が生まれて、自分にとっていいものになるのではないかと思います。

── 会社の業務的にはどんなことをされているのですか。

高橋 ミキハウススポーツスタジアムには、立派な専用グラウンドと室内練習場があります。住所的には三重県伊賀市ですが、車を5分も走らせれば奈良県になります。一緒に巨人から移籍した菊田拡和選手は、専用グラウンド横の物流センターで午前中は商品の出荷業務。桜井投手と僕は、今のところグラウンド、マウンドなどの環境整備に勤しんでいます。

【将来的には高校野球の監督をやりたい】

── そういえば、高橋投手は大学時代に教員免許を取得しているのですね。

高橋 もともと教員という職業に興味があって、教科は「情報」の教員免許を取得しました。

── プロ野球選手にならなかったら、高校野球の監督になりたいと思って教員免許を取得する選手もいるらしいですね。

高橋 もしそういう機会があれば、高校野球の監督として、力添えできればなと考えました。特に高校生は成長スピードが速く、ものすごいパワーを持っています。ただし、野球の技術だけが上がればいいというのではなく、高校野球の大事なところは「野球を通しての人間形成」だと思います。

── ドラフト1位で指名された「元プロ教員」は、東海大相模高・原俊介監督(巨人)、西城陽高・染田賢作監督(横浜)、宝塚西高・杉本友監督(オリックス)らをはじめ、過去に7人います。

高橋 僕の高校時代と比較すると、現在は元プロ教員が圧倒的に増えています。元プロの視点でのアドバイスなど、将来的にチャンスがあれば携わってみたいとも思います。

── プロ野球選手が社会人野球を経由してNPBに復帰した例は過去3人です。渡邉孝男さん(西武→社会人→日本ハム)、宇野雅美さん(巨人→社会人→ヤクルト)、杉原洋さん(ロッテ→社会人→横浜)です。

高橋 そうなんですか。でも先述したように、現在はミキハウスの野球部員として、社会人野球の全国2大大会(都市対抗、日本選手権)に出場して、勝って恩返しが目標です。頑張ります。


高橋優貴(たかはし・ゆうき)/1997年2月1日生まれ。茨城県出身。東海大菅生から八戸学院大に進学し、大学通算20勝、301奪三振を記録。2018年のドラフトで巨人から1位指名を受け入団。19年4月4日の阪神戦でプロ初登板・初先発・初勝利をマーク。21年には11勝を挙げる活躍を見せた。22年に左ヒジのクリーニング手術を受け、23年は育成選手としてスタート。同年4月に支配下登録されたが、6試合に登板に終わる。24年は一度も一軍登板がなく、オフに戦力外通告を受ける。25年から社会人野球のミキハウスでプレーしている

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