
超人たちが34年ぶりに東京へ!今年9月に開幕する「東京2025世界陸上」を前に、これまで歴史に名を刻んだ伝説のアスリートたちを紹介する。
【一覧】9月13日開幕『東京2025世界陸上』日程&出場選手
記憶と記録に残る男子棒高跳の選手といったらセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)だ。大会史上唯一、同一種目で6連覇を達成し世界陸上では絶対的な強さを誇ったブブカだが、オリンピックでは幾多の苦難に見舞われていた。それでも彼の功績はメダルの数だけではない。屋外17回、屋内18回も世界記録を更新し、1985年の“人類初の6m越え”は世界を驚かせた。2000年のシドニー五輪を最後に現役を引退し、IOCの理事として、そして故郷ウクライナのスポーツ発展に尽力するなどその功績は多岐に渡る。ブブカが前人未踏の6連覇を達成した1997年世界陸上アテネ大会の決勝を振り返る。
前人未踏の6連覇達成!アテネに刻まれた伝説1997年8月10日、世界陸上アテネ大会。33歳となったブブカは男子棒高跳の決勝の舞台に立っていた。この大会は前人未踏の6度目の優勝がかかる重要な一戦だった。予選を危なげなく突破したブブカは決勝でもその強さを遺憾なく発揮した。5m91をクリアし、5m96をパス、バーの高さは6m01になっていた。トラックではリレー競技が行われ、スタンドの観客がざわめく中、ブブカは静かに体を後ろに引いて助走をスタートさせた。アキレス腱を手術し、1年近く休んでいた影響か、この年の自己最高記録は5m61と全盛期からはほど遠い状態だった。しかし全盛期を彷彿とさせる跳躍で見事に6m01の跳躍を成功させた。三つ巴となった決勝戦ではディーン・スターキー(アメリカ)は5m91、マクシム・タラソフ(ロシア)は5m96、唯一6mを超えたブブカが金メダルを獲得し、6連覇達成となった。
相性の良い世界陸上、一方オリンピックでは…ブブカは世界陸上では圧倒的な強さを見せつけていた。1983年の第1回世界陸上ヘルシンキ大会で金メダルを獲得して以来、1987年ローマ大会、1991年東京大会、1993年シュツットガルト大会、1995年イエテボリ大会、そして1997年アテネ大会と6大会連続で金メダルを獲得した。
一方、オリンピックでは度重なる不運に見舞われる。1984年ロサンゼルス五輪はソ連のボイコットにより出場を逃し、1988年ソウル五輪では悲願の金メダルを獲得したものの、1992年のバルセロナ五輪ではまさかの記録なしに終わった。1996年のアトランタ五輪はケガのため出場を辞退、2000年シドニー五輪は予選敗退という結果に終わっている。
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しかしブブカの功績はタイトルの獲得数だけではない。
屋外では17回、屋内では18回も世界記録を更新し、棒高跳のレベルを飛躍的に向上させた。特に1985年に人類で初めて6mの壁を破った瞬間は世界中のスポーツファンに衝撃を与えた。その後も記録を更新し続け、屋外では6m14(1994年)、室内では6m15(1993年)という世界記録を樹立した。
そして今、世界記録を更新する可能性が高いのが男子棒高跳のアーマンド・デュプランティス(スウェーデン)だ。規格外の跳躍で世界記録を次々と塗り替え、その高さは東京・上野の「アメ横」のアーチを越えるほど。現在25歳のデュプランティスは、今年2月にフランスで行われた室内の大会で6m27をマークし、自身11回目となる世界新記録を出した。
2019年9月、ブブカはデュプランティスの印象についてインタビューに答えていた。
「デュプランティスには高いポテンシャルがある。陸上界には彼のような選手が必要なんだ」
このインタビューから1年後の2020年9月、デュプランティス(当時20)はブブカの世界記録を1cm上回る6m15を記録し、26年ぶりに屋外の世界記録を更新。かつての絶対王者ブブカは自身のSNSで「私の記録を破ったね。おめでとう」と祝福の言葉を贈ったのだった。
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東京2025世界陸上では、同種目での世界記録更新はなるか。かつての“鳥人”を越えた新世代の跳躍に世界中の視線が注がれる。
東京2025世界陸上 男子棒高跳「この選手に注目!」◆アーマンド・デュプランティス(25、スウェーデン)6m27
世界陸上 2022年オレゴン、2023年ブダペスト 金
五輪 2021年東京、2024年パリ 金
※世界記録保持者、ワイルドカード