なぜ“充電器のアンカー”が「カフェ事業」に乗り出すのか?

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2025年05月26日 18:51  ITmedia PC USER

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アンカー・ジャパンの業績は急拡大している

 アンカー・ジャパンが5月22日に開催した新製品の発表イベント「Anker Power Conference 2025 Spring」は、同社にとって大きな転換点を印象付けるイベントとなった。2024年の売り上げは前年比で約50%増の728億円を記録し、2022年の350億円から2年で倍増という急成長ぶりを見せている。


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 しかし、この好調な業績発表以上に興味深かったのは、プレゼンテーションの構成だった。「世界No.1モバイル充電ブランド」を標ぼうするAnkerが、約1時間のプレゼンテーションで充電器製品にほとんど言及しなかったことだ。


 メインステージで語られたのは、初のカフェ事業、完全ワイヤレスイヤフォン、ホームシアターシステム、ポータブル電源、防犯カメラ、UVプリンタ、ロボット掃除機など。とはいえ、同日発表された充電器/モバイルバッテリー製品は実に8製品以上に及ぶ。


●カフェ事業が示す「体験重視」への大転換


 最も象徴的だったのが、猿渡歩CEOが説明したカフェ事業参入だ。「Anker Store & Cafe 汐留」は、5月24日にオープンする記念すべき1号店となる。


 一見すると畑違いに見えるカフェ事業だが、その狙いは質疑応答で明確になった。「利益率はECがいいだろう。しかし、カフェ事業には体験とAnker認知という目的がある。カフェは誰でも来てくれて、広くタッチポイントが取れる」と猿渡CEOは語っている。


 カフェの設計も興味深い。全席にワイヤレス充電、AC電源、Lightning/USB Type-Cケーブルを完備し、静音設計のミーティングルーム4室を用意している。これらは公式アプリでの予約やモバイルオーダーにも対応している。価格設定も1000円以上の商品は一切なく、コーヒーは400円以下に抑えている。


 これは明らかにAnker製品の購入を検討している人以外へのアプローチだ。従来のAnker Storeが「買い物客」を対象としていたのに対し、カフェは「日常利用者」を取り込む戦略といえる。


●地味だが重要なPC/電源関連製品


 プレゼンでは触れられなかったが、実用性の高い製品が数多く発表されている。


 「Anker Prime ドッキングステーション」(4万9990円、税込み、以下同)は、Anker史上初のThunderbolt 5対応製品だ。14ポート搭載で最大120Gbpsのデータ転送、8K出力に対応する。半導体素材にGaN(窒化ガリウム)を採用し、小型化を実現したため外付けACアダプターが不要だ。MacBook ProやハイエンドWindowsノートPCユーザーにとって、Thunderbolt 5の120Gbps帯域は4K映像編集や大容量データ転送で威力を発揮する。


 Anker Nano Charger(35W、巻取り式)」(4990円)は、約70cmのUSB-Cケーブルが巻き取り式で一体化された充電器だ。約2万回の巻き取り耐久性をうたう。出張やリモートワークが多い利用者には、ケーブル管理の煩わしさから解放される魅力的な製品だ。


 「Anker Nano Charger(130W、6ポート)」(7990円)は、約10cm四方、厚み1.9cmのスリムボディーに6ポート(USB-C×4、USB-A×2)を搭載している。合計130W出力で、ノートPC+スマホ+タブレット+ワイヤレスイヤフォンなどの同時充電が現実的になる。


 モバイルバッテリーでは「Anker Zolo Power Bank(1万mAh、デュアルUSB-Cケーブル一体型)」(5990円)が注目だ。USB-Cケーブル2本が本体に内蔵されており、最大35W出力でノートPCとスマホの同時充電が可能。約1万回の折り曲げ耐久性をうたう。出張時にケーブルを忘れる心配がなく、デスク周りもすっきりする。


 同じく「Anker Zolo Power Bank(1万mAh、MagGo、スタンド一体型)」(7990円)は、マグネット式ワイヤレス充電とUSB-Cポート充電の両方に対応し、折りたたみ式スタンドでスマホスタンドとしても機能する。ビデオ会議中の充電に便利だ。


●プレゼンで重点的に紹介された製品


 プレゼンで重点的に紹介された製品群からは、多角化するAnkerの新たな方向性が見えてくる。


 「Soundcore Liberty 5」(1万4990円)は、国内累計150万台を突破したLiberty 4の後継機だ。ウルトラノイズキャンセリング3.5では中高音域で前モデルの2倍の性能を実現し、Soundcore初のLDAC+Dolby Audio対応を果たしている。9.2mmダイナミックドライバーにはゆがみを抑えるウールペーパー振動板を採用してクリアな中高音を実現し、スピーカーでよく使われるバスレフ構造により重低音を強化している。イヤフォン単体で最大12時間、ケース込みで最大48時間の再生が可能で、IP55防水にも対応する。


 「Nebula X1」(44万9900円)は、プロジェクターとスピーカーがセットになったホームシアターシステムだ。3色レーザー光源により3500ANSIルーメンの明るさを実現し、14層全面ガラス製レンズで5000:1のネイティブコントラストを達成している。4.1.2chサラウンドシステムと合計最大200W出力のスピーカーを搭載し、電動ジンバルによりリモコンで最大25度の投影角度調整が可能だ。約2mの距離で100型の投影に対応する。


 「Eufy Robot Vacuum Omni E25」(14万9900円)は、Eufyロボット掃除機の高機能モデルとして2025年夏に発売予定だ。水拭きと同時にモップを洗浄するハイドロジェットシステムを搭載し、約1.5kgの圧力で床を押して拭く。吸引力はEufy史上最大の2万パスカルを実現し、デュアルスパイラルブラシにより髪の毛の絡みを防ぐ。全自動クリーニング機能により、ごみ捨てやモップ洗浄の手間を軽減する。


 屋外用防犯カメラでは3製品を発表した。上位モデル「eufyCam S3 Pro 2-Cam Kit」(5万9990円)は赤外線とレーダーのデュアル検知に加え、MaxColor Vision技術によりスポットライトなしでも暗所でのフルカラー撮影を実現している。エントリーモデル「Eufy SoloCam E30」(1万7990円)は360度撮影に対応し、4G LTE対応の「Eufy 4G LTE Cam S330」(3万9990円)はEufy初の4G LTE通信により設置場所を選ばない。


●あらゆる素材にテクスチャ表現できるUVプリンタ


 「EufyMake UV Printer E1」(32万9900円)は、産業用UVプリンタを約90%小型化した世界初のパーソナル向け製品だ。従来の産業用機器では数百万円していた技術を30万円台で提供する。


 紙、アクリル、ガラス、金属など300種類以上の素材に直接印刷でき、最大5mmの厚さで3Dテクスチャ表現が可能だ。スマホで撮影した写真をAIが自動で3D印刷データに変換する機能を搭載し、専門知識なしでも立体的な印刷物を作成できる。A3サイズまでの印刷に対応し、別売りアタッチメントを使えばマグカップなどの曲面への印刷も可能だ。Kickstarterでは35億円の支援を集めている。


●ポータブル電源が連動する分電盤


 「Anker Solix Power Link System」も注目製品の1つだ。同社は1月に本格的な家庭用蓄電池「Solix XJシリーズ」(100万円台後半〜)を発表して蓄電池事業に参入したが、今回はポータブル電源メーカーとして初めて切替分電盤を開発し、停電時に家庭の特定コンセントへ自動給電するシステムを実現した。


 分電盤単体は19万9900円(工事費込み)、ポータブル電源とのセットは29万8900円〜39万8900円となる。従来の家庭用蓄電池はマンションでの導入が困難だったが、このシステムは家の中にポータブル電源を置くスペースと分電盤を取り付けるスペースさえあれば設置できる。電気工事士による工事は3時間で完了し、見積もり不要で公式サイトから直接購入可能だ。


 工事時に給電対象とするコンセントや照明を事前に指定することで、停電時にはそれらの機器を途切れることなく使用できる。また、設置したポータブル電源は取り外してアウトドアやDIYなどの他の用途でも利用可能だ。


 このシステムに対応するポータブル電源の新フラグシップモデル「Anker Solix C1000 Gen 2」(9万9990円)も発表された。前モデルから7%小型化・12%軽量化を実現し、1000Wh帯で世界最小クラスをうたう。Anker独自のHyperFlash技術により約54分で満充電が可能で、AC出力は1550Wに向上している。リン酸鉄リチウムイオン電池の採用により4000回の充放電サイクルで80%以上の容量を維持し、約10年間の使用が可能だ。



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