写真評判のカフェやレストランに必ずある「自家製×××」。え、これって作れちゃうの?そんな素朴な疑問を叶えたのが『自家製はエンタメだ。』(サンクチュアリ出版)著者はイラストレーターの浜竹睦子さんです。
◆「自家製」は作れる
生きるためのベースは、なんといっても「食」。食への探求心が尽きなくて、浜竹さんは究極の自家製を目指して旅に出ます。各ジャンルのプロに、調味料や加工品の作り方を学んだのです。
これも?こんなものも?外食か購入しか選択肢がないと思い込んでいたあれこれが、案外簡単にできてしまうって知っていましたか?
時にプロの力を借りたり、任せたり、好奇心のおもむくままたどりついたのは、我が家の「自家製」。どうせ食べるのなら自分も家族もよろこばせたい。そんな願い、浜竹さんだけではなく私達も同じですよね。
◆毎日使うからこそ、自由に作ってしまおう
しょうゆに味噌、タレにダシ。毎日使って、アレンジしやすそうな調味料って何でしょう。それはドレッシング。
種類も豊富でけっこう自由。浜竹さんにとって「ドレッシングはLIVEだ!」。
コツはまず「作りすぎないこと」。なぜなら「フレッシュなほうがおいしいから」シンプルかつ共感度マックスなこたえです。
基本メソッドは超シンプル。材料は「1. 水(米酢、ワインビネガー、レモン汁、しょうゆ、など)、2. 油(オリーブオイル、太白ごま油、サラダ油、ごま油、など)、3. 塩」これらを混ぜる順序も1、2、3です。
「塩を先に入れると水が出てしまう」のでご注意を。
味変がラクにできてしまうのもドレッシングの魅力。季節によって梅肉を混ぜたり、野菜に合わせてナッツやハーブを混ぜるのもあなた次第。
「固形物を使う時は2Stepで」と本書。「混ぜやすい!味がみやすい!」のが理由です。
実験的にいろいろ試してみるのもおもしろいですし、新しい味も発見できて、いつものサラダが瞬時に生まれ変わります。
サラダこそ、最初に叶うマイ・エンタメかもしれません。
◆一度は言ってみたい「私が作ったの」
使う頻度は多いのに、自家製は“はなから無理”と敬遠してしまう。冷蔵庫に必ずあるマヨネーズは、買って当然の存在でした。
材料もレシピもぼんやりとは理解しているけど、面倒くさい。はい、それこそが誤解です。
今日からマヨネーズが作れるあなたに昇格してください。材料は「卵黄1個分、酢 大さじ1、サラダ油1/2カップ、塩 小さじ2/3、こしょう少々」。普段使いのものでそろってしまいます。あとはひたすら混ぜて、こしょうで味をととのえれば完成。
固めマヨネーズにやわらかめマヨネーズ、好みに合わせて作れるのもワクワクしますし、何より作り立てマヨネーズを味わう贅沢は格別です。
ひと工夫で、フレンチマスタードや粒マスタードもできますし、料理のグレードもアップしますよ。
◆思い込みを捨てれば、道がひらける
タイパにエネパ。合理化や効率化を目指しすぎて、私達はつい購買に走ります。作る、という過程を短縮するのは、貴重な体験をないがしろにすることかもしれません。
調味料にとどまらず、加工食品に漬物、干物、乳製品、うどんやそばまで、本書は多岐にわたって自家製を追い求めているのです。
全部を網羅するのは無理かもしれないけど、これはらいけそう、いや、むしろ作ってみたい、と私が思ったのが、うどんやそばやパスタです。
単純に、こねたり伸ばしたり練ったり形成したり、という作業がおもしろそうだから。力仕事=筋トレ、麺を均一に切りそろえる=精神統一、という具合に、成長につながる気がするからです。
心地よい疲労感のあとに食べる自家製の食事。これほどのごちそうがあるでしょうか。自家製が増えれば経験値も増えて、人としての魅力も増します。なによりも人生が豊かになるでしょう。
とりあえず、今夜のサラダのドレッシングは自家製でいこう。そう決意した私でした。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx