
犬派だった旦那さんをメロメロにして、一家の女王に君臨した――。ぴーちゃん305さん(@miwako1003)と暮らす愛猫あたりちゃんは、そんなすごい力を持つ猫だ。出会いは7年前の秋。きっかけは、息子さんから1本の電話が入ったことだった。
【写真】河川敷に捨てられていた猫さん 耳や鼻が白くなっており、危険な状態でした
息子さんからの連絡がきっかけ!河川敷にいた子猫を保護
2018年9月7日、飼い主さんのもとに突然、仕事中の息子さんから連絡が。聞けば、仕事で来ていた施設近くの河川敷に捨てられた様子の子猫がいるとのこと。息子さんは上司の運転手として現地を訪れていたため保護できず、母親に助けを求めたのだ。
「私も仕事中でしたが、翌日は大雨の予報。7月には西日本豪雨もあった年だったので、大きな川の河川敷ということが気になり、悩んでいました」
飼い主さんはひとまず、同僚に事情を説明。すると、偶然、同僚にはその周辺の土地勘があったため、一緒に保護をしに行くことになった。
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電話では大まかな場所しか聞けず、現地では子猫の鳴き声も聞こえなかった。そこで、飼い主さんは子猫がいそうな場所で「ニャオ!ニャオ!」と猫の鳴きまねをしたそう。
「だいぶ恥ずかしかったですが、大きな声で鳴き返してくれ、発見することができました」
持ち前の愛くるしさで“犬派の旦那さん”を虜に!
当時、あたりちゃんは離乳前。手に乗るほどの小さな体には、ノミがたくさんいた。
「元飼い主か、見かねた誰かが置いていったのかは分かりませんでしたが、蓋を開けた猫缶と一緒に捨てられていました」
あたりちゃんは本来ならピンク色であるはずの耳や鼻が白くなっており、危険な状態。飼い主さんはすぐに連れ帰り、ミルクを飲ませて体を保温。耳や鼻は、ピンク色に戻ってくれた。
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その後は動物病院へ。血液検査や駆虫を行ってもらった。幸い健康状態に大きな問題はなく、安堵した。
あたりちゃんは大きな鳴き声を響かせつつ、持ち前の白いふわふわの被毛や青い瞳、プニプニの肉球などで家族をキュンとさせたそう。
特に心奪われたのは、飼い主さんの旦那さん。実は当時、飼い主さん宅には先住猫ぐるぐるくんがいた。
しかし、旦那さんは日頃から「男は犬だろ」と口にする犬派。猫がトイレ後にテーブルへ上がったり、ベッドに入ってきたりすることに抵抗がある様子だった。
そのため、飼い主さんはあたりちゃんの里親を探すつもりでいたそう。だが、旦那さんはあたりちゃんを見てすぐ、「うちの子にする」と断言。まさかすぎる言葉に、飼い主さんは驚いたという。
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充電コードへのイタズラや家族の大病を乗り越えた幼猫期
正式に家族の一員になったあたりちゃんのお世話は、家族みんなで行った。幼少期、あたりちゃんがハマったのは、充電コードでの遊び。家族はケーブルカバーを大量に買い込み、激しい攻防戦を繰り広げたという。
「でも、ブームみたいなものだったのかな。気づいた頃にはやらなくなり、今では全く興味を持ちません」
育猫中には、家族に思わぬ事態も起きた。あたりちゃんが生後6カ月の頃、なんと旦那さんが脳梗塞で救急搬送され、入院することになったのだ。
幸い、旦那さんは3カ月後に退院。だが、あたりちゃんは突然、旦那さんがいなくなったことがトラウマになったのか、以後、ひとりになると鳴きながら家族を探すようになった。
また、旦那さんに甘えられなかった期間を取り戻すかのように「パパっ子」に成長。旦那さんがベッドに入ると胸の上に行き、喉を大きく鳴らして甘える。時には、子猫のように旦那さんの手のひらをチュパチュパと舐めることもあるそうだ。
「私には全くしません。ミルク飲ませて育ててあげたのは私よ!って言いたい(笑)」
先代猫の死を乗り越えて「一家の女帝」に君臨するまで
先住猫のぐるぐるくんとあたりちゃんは、複雑な関係性だった。気が小さいあたりちゃんは守ってもらうかのように後ろに隠れるも、ぐるぐるくんのほうから近づくと猫パンチ。
ただ、やはり絆はあったようで、亡くなった時に不安感からか布団に引きこもり、それ以降は1日中眠って過ごすようになった。
「起きてくるのは、トイレと朝晩の食事時だけ。心配になって病院に相談したくらいでした」
そんな暮らしを変えたのは2025年2月、新たに家族の仲間入りを果たしたくるりくん。新入り猫が来た途端、あたりちゃんは女帝の風格を漂わせるようになった。
「毎日、朝から晩までくるりを追いかけ、しつけに励むようになりました。そのしつけは厳しいのですが、私たちはあたりを叱らないようにしています。そして、何をする時もあたりが最優先です」
厳しいしつけの効果か、最近くるりくんはあたりちゃんのご飯が終わるのを、じっと待つようになったそう。2匹は、猫ならではのコミュニケーション法で絆を深めている。
あたりちゃんは今、一家の女王様。「私より弱い」と見なした相手には容赦なく襲い掛かるたくましさも見せる。
「去年の夏、左手を噛まれたので『コラッ!』と強めに怒ったら、さらに強く噛まれて病院送りにされました。幸い抗生剤を飲むだけで済みましたが、患部は1週間ほど腫れ上がって痛く、夜も眠れませんでした」
その一方、あたりちゃんは家族が帰宅すると玄関で出迎えて、ゴロン。これ以上ないギャップを見せ、家族を翻弄している。
「まあ…触ると噛まれるんですが(笑)。子どもたちが独立して私たちにとって、愛猫たちは実の子どものようです」
旦那さんの前と奥さんの前で見せる顔が違う、あたりちゃん。今後もどんな「女王様エピソード」が聞けるのか楽しみだ。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)