「崎陽軒のシウマイは横浜のソウルフード、"横浜 魂の食"」崎陽軒の野並 晃社長がシュウマイ潤に語る今後の展開(後編)【みんなが知らない、シュウマイの実力】

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2025年05月31日 12:20  週プレNEWS

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崎陽軒の野並社長(右)と日本シュウマイ協会会長のシュウマイ潤(左)

連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』】第15回

これまで"シュウマイ愛"を、さまざまなテーマと切り口で伝えてきたシュウマイ研究家のシュウマイ潤だが、その一方で気になるのが他の人の「シュウマイ愛」――。

シュウマイを生業とする企業のトップや開発者は、その人なりの"シュウマイ愛"を持っているのではないか? また、各著名人のなかにも実は"シュウマイ愛"に溢れる人もいるのではないか? その愛を知ることで、シュウマイの新たな実力や可能性が見出せるのではないか?

前編記事に続き、誰しもが日本のシュウマイ(シウマイ)企業の王者と認める、崎陽軒の四代目社長・野並 晃(のなみ・あきら)氏に話を聞いた!

※崎陽軒では「シュウマイ」を「シウマイ」と表記する。

【写真】70周年を迎えた「ひょうちゃん」ほか

* * *

シュウマイ潤(以下、) 四代目の社長となって、先人からの積み重ねを受け継いだ側面もあるわけですが、経営者として意識していることはありますか?

野並社長(以下、野並) ひとつは先ほども話しましたが、お客さまの期待に応えること。特に、横浜市民の方が"違う"と思うことは、するべきではないと思います。

ある社員が「崎陽軒のシウマイは、横浜市民のものですよね」と言ったのですが、まさにその通りで、我々は横浜市民から委託を受けている意識で、日々シウマイを製造しています。

もうひとつは、"流行らせてはいけない"ということです。流行りは廃れるもの。どれだけ定着させるかが大事で、その温度感は常に意識しています。

 そこは、私が日本シュウマイ協会を作ってからも意識していることで納得です。ただ一方で、流行的に注目されるきっかけも作っていかないと、餃子やラーメンに比べてマイナーな印象が強いシュウマイは、いつまでも注目される機会がなくなってしまうため、難しいところです......。

ちなみに、他社のシュウマイで気になる商品や企業はありますか?

野並 それが......実は明確に競合と定義することが難しいんですよ。作りたてのものがあったり、当社のように駅の店舗でシュウマイを織折詰めしたりして販売する企業があるように、製造方法や販売方法も様々ですし、商圏の違いもあります。

むしろ、全く異なる業態の行列店を見かけたり、評判になっているという製品は、なぜ人気なのかが気になります(笑)。

 確かに崎陽軒のシウマイは、干した帆立の貝柱を入れたりと実は独自性が強いですが、製造販売手法も他社にはない独自のビジネスモデルなんですよね。

野並 とはいえ、2019年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大による営業自粛の影響により、弊社もシウマイを始めとするビジネスモデルを大きく変えざるを得ませんでした。

それまで弊社は、ターミナル駅および商業施設内での店舗で日販品の販売、つまり人が集まる場所での商売が前提でしたが、人が集まらなくなってしまった。

そこで力を入れたのが、冷凍の製品による通信販売事業、ロードサイド店の増加、グッズ販売です。それらは現在徐々に売り上げを伸ばし、崎陽軒という企業の売り上げに貢献し始めています。

ただ実は、これらの事業はコロナ禍前から種まきを始めていました。その種まきしていた事業を強化したという方が正確かもしれません。

 グッズに関しては、商品数が増えて、個人的にもかなり購入させていただいています。コロナ禍の事業シフトチェンジは、四代目社長として大きな課題を克服し、新たな事業の育成につなげた大きな実績だと思います。

野並 コロナ禍を乗り越えたのは先代の功績ですが、それを受け継ぎ、これからもシウマイという中核事業を大事にする気持ちは変えず、時代の変化を見据え、違う軸の事業を育てていくことも重要だと思っています。そのためには、社員が考える"崎陽軒らしさ"を融合させ、会社全体で作り上げていくことが大事だと思います。

私も先代の社長もアイデアマンタイプではありませんので、社員全体が力を合わせることが大事だと思います。社長がトップダウンで進めるのも悪くないですが、どうしてもその人の"器"にとどまってしまう。社員一丸になることで、その"器"が大きくなると思っています。ですので、社員には社長の判断がなくても、どんどん新しいことにチャレンジするように伝えています。

 広報の方が大きく頷いていますね(笑)。逆に、シウマイという主軸事業の継続や拡大にとって、課題はありますか?

野並 昨今の食材費や物流費の高騰の影響は計り知れません。そのため、今年2月から「昔ながらのシウマイ弁当」「昔ながらのシウマイ」など、価格改定をさせていただきました。

また、シウマイ弁当の売り上げはここ数年で1日、約3万食(以前取材した2018年時は約2万5千食)まで拡大しましたが、一方でシウマイ単体の売り上げは減少傾向です。

こうした状況を踏まえ、増加する外国人観光客に対してのシウマイや弁当の販売も強化し、インバウンド需要にも対応していく必要があると考えています。

 シウマイを広げていく新事業といえば、兵庫県の「まねき食品」とコラボして関西版のシウマイや関西シウマイ弁当を作ったり、栃木県鹿沼市では「シウマイまちおこし」、福井県では新幹線開業を盛り上げるなど、シウマイをフックとした取り組みを行ったりしていますね。

野並 これらの地域活動は、あくまで応援する立場であり、崎陽軒のシウマイや商品を売るのが主目的ではありません。関西はあくまで「まねき食品」さんという地域メーカーの商品のためで、鹿沼市や福井県も地域の企業が主役で、シウマイを作る基盤づくりをお手伝いしています。

これはあまり知られていませんが、私が崎陽軒に入社する前、大阪にプチ工場を作り販売していた時期がありました。でも全然売れなかったみたいです(苦笑)。

特に地域のソウルフードは、地元の企業が一生懸命作っているからこそ愛されるのだと実感しました。シウマイという食品を通して、地域交流を重ね、そのなかで我々の地元・神奈川県横浜市でもできることを模索していきたいと思います。

 鹿沼市には私も何度か足を運びましたが、シウマイが名物になりつつあることを実感しています。シウマイという食が地域を育てる。大袈裟かもしれませんが、それを100年かけて実践してきた崎陽軒だからこそ、シウマイの価値を伝え、育てることができるのだと思います。

最後に、そんな野並社長にとって、シュウマイ(シウマイ)を一言でいうとなんでしょう?

野並 弊社のシウマイに限りますが......5文字でまとめるとすれば、"横浜 魂の食"でしょうか。再三申し上げてきましたが、崎陽軒のシウマイは我々のものではなく、横浜市民のものです。

まさに横浜のソウルフード。それを大事にすることはもちろん、全国各地のシウマイによる活性化にも力を入れていきたいと思います。そのためにも、シュウマイ潤さんの協力は不可欠ですので、引き続き、ご協力を宜しくお願い致します!

 こちらこそ宜しくお願い致します! さまざまな言葉の端端(はしばし)からは、シウマイという料理の魅力と可能性を改めて感じることが出来ました。ありがとう御座いました!

●野並 晃(のなみ・あきら) 
株式会社 崎陽軒 代表取締役社長。1981年8月30日生まれ、神奈川県横浜市出身。2004年、慶應義塾大学経済学部卒後、キリンビール株式会社に入社。3年間の勤務を経て、2007年に株式会社 崎陽軒へ入社。2011年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。2012年に同社取締役、2014年に常務取締役、2016年に専務取締役、2022年より現職へ。
公式X【@ KiyokenOfficial】 
公式YouTubeチャンネル『シウマイの崎陽軒』 
その他の詳細は、崎陽軒公式サイトにて。

取材・文/シュウマイ潤 撮影/五十嵐和博

このニュースに関するつぶやき

  • 昔はよく横浜の実家でオカンがおかずにチルドのやつ買ってきてたけど、いまや値上がりして高級品・・・
    • イイネ!1
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