
血尿や頻尿といった症状だけでなく、尿路をふさいでしまい排尿が困難になることもある「尿道がん」は犬だけでなく、猫にも見られる病気だ。
【写真】飼い主さんと一緒に布団で眠る猫さん なにげない日常はすべて宝物でした
ヨビビーさん(@yobibi38723)の愛猫モコちゃんは、膀胱炎の治療を機に尿道がんであることが発覚。8カ月の闘病生活を頑張り、虹の橋へ旅立った。
里親募集サイトで出会った子猫と「ネズミ遊び」を楽しんだ日々
2014年、飼い主さんは先代猫ルルちゃんへの後悔や想いを抱きつつ、里親募集サイトを見ていた。
ルルちゃんは、仕事の休憩中に国道沿いのラーメン屋付近で車に轢かれそうだったところを保護した子。もともと疾患があったからか、懸命にお世話をしたが、保護から間もなく亡くなってしまった。
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そんな思い出を振り返りながらサイトを眺めていたところ、目に止まったのが三毛猫のモコちゃん。モコちゃんは家に迷い込んできたところを保護された、元野良猫だった。
モコちゃんが頭から離れなくなった飼い主さんは、お迎えを決意する。モコちゃんは活発で、飼い主さんとの遊びが大好きだった。
特に気に入ったのは、飼い主さんとネズミのおもちゃで遊ぶこと。
「遊ぶ時、私はチューチューとネズミの鳴き真似をしていました(笑)遠くに投げたネズミをモコが取ってくるという遊び。行方不明になったネズミのおもちゃがたくさんありました」
そんなある日、モコちゃんはいつものようにネズミを咥え、家族のもとへ。しかし、それはおもちゃではなく、本物のクマネズミ。第一発見者のお母さんが悲鳴をあげると、モコちゃんはビックリ。クマネズミはその隙をついて逃げ回り、あたりは大惨事になった。
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「その後、ネズミのおもちゃは全て回収して封印しました。でも、ネズミ遊びのやり方は継続。モコとおもちゃで遊ぶ時、私は変わらずチューチュー言っていました(笑)」
また、モコちゃんは飼い主さんと同じ場所をグルグル回って追いかけっこをするのも好きだった。勝負は、どちらかの体力が尽きるまで。狭い場所をスルリと通るモコちゃんを追いかけるのは、至難の業だった。
「グルグル回り続けると、どちらかが降参することになります。モコが降参した時はゴロンと、お腹を見せてくれるので猫吸いをしていました」
甘えん坊だった子猫が“ツンデレな猫様”に成長!
子猫期のモコちゃんは常に飼い主さんを視界の中に入れていたい甘えん坊さん。ところが、成長するにつれて、自らナデナデをおねだりせず、必要以上に触らせないツンデレな猫様に。構ってほしい時だけ、スリスリや甘噛みするようになった。
だが、入浴時には洗面所で鳴き、「入れて」とアピール。お風呂嫌いなのに浴室へ。探検を終えると“帰るジェスチャー”をし、「出して」と訴えた
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「入浴後に着替えてドアを開けると待っているので、それから一緒に遊ぶのが日課でした」
ただ、いつも適度な距離から家族の様子を見守っており、“デレタイム”には名前を呼ぶと鳴いたり、尻尾を振ったりしてお返事。
飼い主さんが就寝前に2階の自室へ行こうと、1階にいるモコちゃんにふすま越しから「バイバイ」と手を振ると、鳴きながら駆け出し、飼い主さんより先に2階へ行き、待っていてくれたこともあった。
なお、モコちゃんは家族を「母→私→姉→父」の順で優先していたが、一緒に眠るのは飼い主さんとだけだった。
「その時間は、生きてきた中で最も幸せだった。ずっとこの時が続けばいいのに…と、いつも思っていました」
度重なる膀胱炎の治療を機に「尿道がん」が判明
モコちゃんは膀胱炎になりやすい体質だった。最初に膀胱が分かったのは、2024年1月。この時は投薬治療や療法食により、症状は安定した。
だが、同年3月末に再び膀胱炎に。4月上旬には薬の効果が見られず、病状が悪化した。そして、4月中旬、検査によって尿道が正常の形でないことや周辺に腫瘍があることが判明する。
「精密検査をして、2カ月後の6月にリンパ腫の尿道がんであることが分かりました」
モコちゃんの尿道がんは良性だったが、年齢を考慮すると手術はハイリスク。先天的な尿道の形成不全もあったため、獣医師と相談し、ステロイド治療を行うことになった。
「抗がん剤治療という選択もありましたが、モコの性格上、難しく、リスクも高かったので諦めざるを得ませんでした」
闘病中、家族はモコちゃんにオムツをしてもらい、いたい場所、行きたいところへ行けるようにした。治療を始めた当初、モコちゃんは排泄以外は病気の発症前と変わらぬ日常を過ごせていたが、やがて自力での水飲みや毛づくろいができなくなっていき、横になることが増えた。
ご飯も自分では食べられなくなり、家族はシリンジで強制給餌をするようになる。だが、2024年9月末には強制給餌しても、ご飯を吐き出すように。家族は夜間救急に連れていったが、獣医師からは「胃がもう動いてない状態」と告げられた。
「モコはずっと遊びたかったのか、何度もそういう仕草を見せることがあって辛かった。旅立つ1〜2週間前は異様に外へ出たがったので、数時間だけ一緒に外で過ごしました」
その時、モコちゃんは名前を呼ぶと尻尾を振ってお返事。まだ生きていてくれている…と感じられて、飼い主さんは涙した。
「亡くなったのは、病院で診察を待っている最中。心臓が止まったので緊急処置をしてくださいましたが、旅立ってしまいました」
8カ月間の闘病後には「ペットロス」に苦しんで…
後悔はない。そう思えるほどの日々を重ねてきたつもりだったが、いざモコちゃんがいなくなってみると、飼い主さんの胸には様々な後悔がこみ上げてきた。
飼い主さんにとってモコちゃんは、いつもそばにいてくれた大切な相棒。そんな家族を失った悲しみは“ペットロス”というたった5文字の言葉では、とても表現しきれない。
「どうしようもない辛さや悲しさは、簡単にはなくなりません。だって、大好きな愛猫と過ごした日々は、たしかにあったのだから」
そう話す飼い主さんは同じ痛みを抱える人に温かい言葉を贈り、その心に寄り添う。
「辛いけれど、心のまま愛猫を想い、泣きましょう。思い出したら、また泣きましょう。きっと、そうして向き合っていくしかないのだろうと思うから」
なお、モコちゃんの闘病を通して飼い主さんは、愛猫との何気ない日常を記録することが大切だと感じたそう。
闘病中は記録することが辛いこともあるが、「書くこと」で現実を受け止めやすくなり、綴った記録は愛猫が旅立った後、当時を振り返る大切な宝物になるからだ。
ちなみに、モコちゃん亡き後、飼い主さんは不思議な体験をした。
「私は普段、霊的なことは信じないほうなのですが、モコが亡くなった後、何かしらの形で家族の前に姿を表したり、誰もいないはず部屋から夜にモコの鈴の音がしたりして驚きました」
ツンデレだけれど、家族想いだったモコちゃん。不思議な現象は、もしかしたら「いつもそばにいるよ」というモコちゃんなりの愛情表現なのかもしれない。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)