近鉄では「万博行くなら伊勢志摩へも足を運びませんか？」をキャッチフレーズに、「伊勢神宮参拝デジタルきっぷ」を販売しています。しかし、大阪・関西万博が開催されている夢洲と伊勢志摩は、直線距離にして約130kmも離れています。「万博と伊勢志摩を結び付けるのは無理があるのでは」と、思うかもしれません。ところが実は、万博と伊勢志摩には意外な結びつきがあるのです。
大阪万博と近鉄
時代は1970年の大阪万博に遡ります。近鉄では1970年3月に難波線（大阪上本町〜大阪難波）が開業し、大阪市営地下鉄（現Osaka Metro）堺筋線経由で、大阪万博への足を確保しました。
万博の開催に先立ち、近鉄では1967年に「伊勢志摩総合開発計画」を策定。これは伊勢志摩を「万国博第二会場」に見立て、万博の訪問客を伊勢志摩に誘引する計画でした。この計画で肝になったのが、鳥羽線（宇治山田〜鳥羽）の建設と志摩線（鳥羽〜賢島）の改良でした。
当時、近鉄は宇治山田駅が終点。鳥羽へは、国鉄が乗り入れていました。また、志摩線は1944年に三重交通志摩線になり、1965年に近鉄志摩線になりました。改良前の志摩線はSカーブが連続し、とても大型車が入れるような環境ではなかったのです。
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鳥羽線は1969年に宇治山田〜五十鈴川間が開業。翌1970年に五十鈴川〜鳥羽間が開業し、鳥羽線全通となりました。
一方、志摩線は駅や線路の改良を進めました。特に鳥羽〜中之郷間は、半径100mのカーブが連続していたこともあり、鳥羽港の海面を埋め立てることに。その上で、線路を約1kmにわたって移設しました。
志摩線も鳥羽線開業に合わせ、改良工事を遂行。1970年3月、大阪、京都、名古屋から賢島までの特急列車の運行が始まりました。
もちろん、路線だけでなく、伊勢志摩の観光開発にも着手。ゴルフ場や博物館など、様々な施設を建設しました。
中でも1969年に完成した志摩観光ホテルの新本館は、地下1階・地上6階立てとなり、本館・新館・新本館を合わせて客室200室・宿泊定員400人を誇る国内屈指のホテルとなりました。
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万博前年に登場した洋式トイレ付きの特急列車
「万博第二会場」への足となる近鉄特急にも、力を入れました。万博前年の1969年には、12200系が登場。12200系は近鉄特急を長年にわたり支え、2021年に引退しました。
12200系は万博からの外国人の利用を想定し、車内に洋式トイレを設けることに。当時は、まだまだ和式トイレ全盛の時代でした。
TOTOの洋式・和式便器出荷比率によると、1970年は60％以上が和式便器でした。洋式と和式が同数になったのは、1976年です。ちなみに2015年に、和式便器は1％を切るまでになりました。
この統計を見ると、近鉄特急は万博を契機に、時代に先んじて、レベルアップしたことがわかります。
このような成功体験があるからこそ、近鉄は万博と伊勢志摩との合わせ技を強調するように思います。
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なお、万博〜伊勢志摩間の移動には、大阪上本町駅からのシャトルバスが便利です。シャトルバス乗り場と駅は直結し、乗り換えが大変スムーズです。
（まいどなニュース特約・新田 浩之）
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