
ペットショップなどで販売されている犬猫は、おおむねブリーダーによって繁殖された動物です。そしてブリーダーの多くは「生体販売」という商売をしているわけで、1匹でも多くの人気犬種を繁殖させ、そして環境にかかるコストは抑えたいと考えています。
そのため、ブリーダーの多くは「動物とともに生きる」といった考えは薄く、「繁殖に使う道具」として犬猫を飼っています。
結果的にこれら犬猫が日々過ごす環境は劣悪なものとなり、満足なお世話も受けられず一生を過ごす例は、悲しいことに実に多いものです。
こういった劣悪な繁殖場で悲しい事故が起きてました。生まれたばかりのワンコが、成犬に噛まれて瀕死の状態になってしまったのです。
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成犬が抱えた劣悪な環境によるストレスで襲った?
子犬を噛んだ成犬がどんな理由で、その行動に出たのかは分かりません。しかし、前述のような劣悪な環境であればストレスを抱えたり、精神的に不安定になるのは当然で、こういった理由から子犬を襲ってしまったようにも感じます。
ともあれ、瀕死の状態の子犬を一刻も早く助け出さなければいけません。この事態を知った保護団体、アニマルフォスターペアレンツのメンバーはすぐに繁殖場に急行。瀕死の子犬は段ボール箱の中に無造作に寝かされていました。
稀少犬種のフラットコーテッドレトリバーの子犬です。本来は明るく元気な性格のワンコが多い犬種ですが、噛まれた子犬はやせ細り、いっさい鳴き声をあげませんでした。
首が常に曲がった状態でミルクがほとんど胃に入らず
団体メンバーはすぐに施設に連れて帰り、ミルクを飲ませることにしました。
肝心の成犬に噛まれた傷口は確認できませんでしたが、首が常に曲がった状態。そのせいか子犬は思うように体を動かすことができず、手足をジタバタ。なんとかして飲ませてあげると体力が落ちているのか、けがの影響なのか、飲んだ後はすぐに眠りについてしまいます。
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そして、飲んだミルクはほとんど胃に入らない様子で、いくら飲んでも嘔吐と下痢を繰り返していました。
神経障がいが残るも奇跡的な回復
もちろん動物病院にも何度となく連れて行き、診てもらいました。獣医師の診断では確かに命にかかわるほどの重いけがを負っているとのことで、その都度適切なアドバイスを受け、団体メンバーも昼夜を問わず慎重にお世話を続けました。
すると、本当に少しずつでしたが、次第に自分で体を動かせようになるなど、奇跡的な回復を果たし一命を取り留めてくれました。
残念なことに神経障がいが残ることとなりましたが、それでも保護当初より随分と成長したことは本当に良かったです。
団体メンバーは、この子犬に「葉奈」という名前をつけてあげました。由来は子犬が生まれた「8月7日」にちなんだもの。「この世に生を受けた日」を本人が忘れず、しっかり生き抜いて幸せを噛み締める犬生を送ってほしいという願いを込めたものでした。
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当初は鳴き声一つあげなかった葉奈ですが、回復以降は、お腹が空くと「キュンキュン」と鳴き、転びながらもトコトコと歩き、オモチャと格闘するのも大好きなワンコになりました。
健常なワンコに比べれば、どうしてもハードルが高い葉奈の「ずっとのお家」ですが、それでも団体では今後も根気強く、その犬生に寄り添ってくれる家族とのマッチングを目指すと言います。いつの日か、葉奈が本当の笑顔を浮かべる日が訪れることを祈るばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)