写真帝国データバンクは6月3日、今年1月から5月までの“書店の倒産動向”を公表した。それによると、書店の倒産は急激に減少しており、年間で過去最少ペースだという。
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「活字離れ」による紙書籍の需要減を背景に苦戦を強いられてきた書店業界が、ここにきて持ち直しの動きを見せている。今年1月から5月までの“書店の倒産”(負債1000万円以上、法的整理)は1件にとどまり、前年同期の11件を大きく下回る過去最少ペースだ。
書店の経営は、若年層を中心に本を読まない「活字(書籍)離れ」に加え、インターネット書店の台頭、電子書籍の普及が進み、苦しい経営環境が続いている。2024年度の業績が判明した書店の損益動向をみると、34.4%が赤字となり、「減益」を含めた「業績悪化」企業の割合は58.3%と6割に迫った。コロナ禍にみられた「鬼滅の刃」などビッグタイトルによる特需が見込みづらいなかで、雑誌や漫画本が売り上げの中心を占める書店の経営は引き続き厳しい状況に置かれている。
一方で、近時は書店側でも不採算店舗の閉鎖や従業員の削減といったスリム化策以外に、新たなビジネスの確立や、書店を単なる販売店ではなく、交流拠点や休憩施設として来店を促す「目的地化」を目指す動きが広がるなど、書籍の売り上げに頼らないビジネスモデルへの転換が進んでいる。かつては店内の一角を占める程度だった、ボールペンやノートなど文具や雑貨の取り扱いが強化され、雑貨コーナーを大々的に展開するケースや、カフェの併設、大手雑貨店との共同出店など、書籍の売り切りを目指すビジネスモデルから、長時間顧客が過ごせる「滞在型」の売り場づくりを目指す動きが広がってきた。
また、豊富な在庫や書籍の発売情報といった専門知識を生かして、学習塾などと共同で学生向けの販売サービスを展開するなど、書籍販売のスタイルをより深耕させる経営戦略もみられた。従来の書籍販売に新たな付加価値を提供する企業努力によって業績が回復したケースもあり、実際に2024年度業績では、「増益」となった書店の割合は39.9%と、過去10年で2番目に高い水準で推移している。
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