テレビ市場でシェアアップし存在感高まるTCL 蒋賛社長を直撃して今後の日本市場での取り組みや展開を聞いた

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2025年06月04日 19:00  BCN+R

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TCLが5月20日に発売したCシリーズ(上)とPシリーズ(下)
 5月20日に得意とするMini LED液晶テレビの新製品を発売したTCL JAPAN ELECTRONICS(以下、TCL)。この数年でテレビの販売台数シェアは大きくアップしているが、まだメーカーとしての認知度は決して高いとはいえない。同社の蒋賛代表取締役社長に今後の展開などを聞いた。

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●グローバルでは3つのテレビカテゴリーで2024年世界1位

 家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」で、TCLの液晶テレビ全体における販売台数シェアは2021年が5.3%だったが、23年には9.8%と伸長し、24年は10.6%と全体の1割を超えた。直近の25年1〜4月のシェアも11.1%と上昇基調で推移している。

 以前は主に中小型タイプでシェアを獲得していたが、このところ55V型以上でもシェアは上昇。21年の2.3%が23年には6.2%となり、24年には1割目前の9.8%。直近の25年1〜4月では1割を突破して10.6%となり、大画面テレビでの存在感も高まっている。

 TCLが中国のメーカーであることは何となく知っている。おそらく、このような認識が多いのではないだろうか。改めて、TCLとはどのようなメーカーなのか。

 5月20日に発売したMini LED 液晶テレビの発表会で登壇したTCLの蒋賛社長は、グローバル企業としてのTCL(以下、TCLグループ)について説明した。引用して紹介しよう。

 TCLグループは1981年に中国の広東省恵州で設立。グループとしては44年の歴史があり、全世界で13万人のスタッフを抱え、48の研究センターと36箇所の製造拠点を持つ。グループ全体の売り上げは6兆円に達しているという。

 代表的なグループ企業としてはTCL CSOTとTCL CENTRALがある。前者はディスプレーのパネルメーカーでTCLの製品に使用されるパネルはもちろん、自社以外にも提供している。

 「TCL CSOTは2009年に深センで設立しました。革新的なパネル技術で業界の方向性をリードする企業であり、多くの領域で世界1位となっています」と蒋社長は話す。

 後者のTCL CENTRALは蒋社長曰く、「世界トップレベルの再生可能エネルギー技術企業で、太陽光発電のリーディングカンパニー」

 テレビメーカーとしてのTCLグループは「2018年は出荷台数が世界2位となり、2022年は98V型で世界1位。2024年には85V型以上とMini LEDテレビ、Googleテレビの出荷台数がいずれも世界1位となりました」

 これまで日本市場で販売してきた製品はデジタル系が多かったが、グローバル市場ではより広く白物家電なども扱っており、エアコンは全世界での生産台数が2000万台以上という。

 25年3月にはTCLでは日本国内初の販売となるドラム式洗濯機をクラウドファンディングで手掛け、現在はECサイトで販売中。冷蔵庫も昨年からECサイトで販売しており、ハイセンスやシャオミと同様に今後日本でも白物家電を展開していく方針だ。

●オリンピックを通してTCLの認知向上を目指す

 TCLは2015年設立で、今年は設立10周年の年だ。この節目の年に同社を率いる蒋賛社長はTCL APAC(アジア太平洋地域)のスマートテレビの担当だったが、2024年1月、日本法人の代表取締役社長に就任。今後の展開などについて蒋社長に直接、話を聞いた。

(以下、敬称略) やはり製品を通してTCLを知っていただくことが大事ですので、積極的にハイエンド製品を市場に投入して、TCLは技術的に優れたブランドであるということを知っていただきたいと考えています。

 製品以外では、スポーツを通して認知度を上げていきます。TCLグループは2025年の2月にIOC(国際オリンピック委員会)と2032年まで、ワールドワイドでのオリンピック・パートナーシップを締結しました。2026年にはミラノで冬季オリンピック、2028年にはロサンゼルスで夏季オリンピックが開催されます。

 2027年にはサウジアラビアでIOCによる世界初のeスポーツのオリンピック開催も予定されていますので、オリンピックの開催に合わせていろいろな施策やキャンペーンなどを展開していきます。

 IOCとのパートナーシップ以外に選手との契約も視野に入れています。これまでも著名なスポーツ選手とアンバサダー契約を結んでいたことがありますので、秋頃からオリンピックに出場する日本選手と契約して、TCLのブランド認知向上を目指していきます。

 日本の消費者にとって製品選びでは、ブランドの知名度や認知度が非常に重要な要素となっています。中国メーカーにとって、それは目に見えない大きな壁です。従って中国メーカーが日本市場に参入する際は、技術力や製品力はあるものの、やはりコストパフォーマンスを訴えるのが認知を得る一番の近道なのです。

 ただし間違っていただきたくないのは、しっかりとした技術力があることに加えてコストパフォーマンスが良いという点です。例えば、テレビ市場ではコモディティ化が進んでいます。TCLでは日本の消費者のニーズに合わせて、さらに画質も音質も向上させていくことが重要と考え、Mini LEDテレビで培ってきた技術を製品化して日本の消費者に提供していきます。

 戦略的には手頃な価格の製品もありますが、優れた技術を搭載したハイエンドの製品もあるブランドであることを認知していただきたいと考えています。

●OEMを通して日本の消費者のニーズを把握

 TCLグループではさまざまな地域の市場環境を調査しています。その結果、日本の白物家電市場は決して小さいわけではなく、まだまだシェアを獲得していく余地があると考えています。

 TCLグループは世界160カ国で製品を展開しています。そのうえで日本市場は非常に重要な戦略市場なのです。日本の消費者は製品やブランドに対するこだわりが強く、製品に対して厳しい目を持っています。ですので、日本市場で成功すればほかの海外市場も含めて、より成功していくことが期待できます。

 実は日本市場において、OEMなどの形で白物家電の生産を行ってきました。具体的な数字は言えませんが、その生産規模は年間数十万台に及びます。つまり、これまでも日本の消費者が何を望み、どのような製品であれば満足してもらえるかということを、他社への製品供給を通して培ってきました。

 TCLの名を冠した製品を市場に投入することで、日本の消費者がより良い暮らしに役立つような豊富な選択肢を提供したいと考えています。

 そのとおりです。TCLは総合家電メーカーで、今はテレビがメインですが、これからは多くのカテゴリーの製品を発売していきます。例えばエアコンは来年早々に発売したいと考えていますし、黒物では新たにプロジェクターの発売も検討しています。

 当社は全世界に40カ所以上の研究開発センターがあり、そこで開発された技術が日本での製品展開や今後の発展をバックボーンとして支えています。この技術に裏打ちされた数多くの製品を発売して、総合家電メーカーとしてのTCLを知っていただきたいですね。

 蒋社長が発言で触れていたように、中国メーカーにとって日本市場への参入ではグローバルでの調達力をベースとしたコストパフォーマンスが武器となる。しかし、それはあくまで参入するためのアプローチに過ぎない。

 本質的な武器は、グローバル市場で異国や同じ国の他社メーカーと切磋琢磨して磨き上げてきた技術力だ。実際に中国メーカーは近年、出展したCESやIFAなどの世界的な展示会において、その技術力で注目を集めている。

 技術力がバックボーンにあるというTCLの日本市場に対する意気込みや取り組みは、本気だ。固定観念やイメージは捨て、自分にとって最適な製品は何かを考えたとき、今後リリースされていくであろうTCLの製品群は選択肢の一つになるのではないだろうか。(BCN総研・風間理男)

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