清水直行は「勝っているロッテが見たい」バッテリーが抱える問題、苦境のなかで見える光明についても語った

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2025年06月06日 07:30  webスポルティーバ

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清水直行が分析するロッテの現状 後編

(前編:低迷するロッテの現状をOB清水直行が分析 改革が進まないのは、ここ数年で見せた「しぶとさゆえの弊害」も>>)

 現在、パ・リーグ最下位に低迷しているロッテ。OBの清水直行氏に聞くチームの現状の後編では、バッテリーが抱える課題、苦しいチーム状況のなかで垣間見えるポジティブな要素について聞いた。

【盗塁されることが多い理由】

――ロッテ抱える課題のひとつとして、出塁を許したあとに盗塁を決められてしまうケースが多いことが挙げられると思います。

清水直行(以下:清水) 大前提として、盗塁を阻止するのはバッテリーの共同作業です。ピッチャーは投球フォームを盗まれないようにしなければいけませんし、クイックも必要です。キャッチャーは捕ってから投げるまでのスピード、送球の速さや正確性などが求められます。

 ただ、ここまで走られてしまっているということは(被盗塁46)どういうことなんだろうかと......。ここ数年、ロッテのキャッチャーの盗塁阻止率が低迷していることを考えると、「もしかしたらトレーニングマニュアルが確立されていないのでは?」という疑問を抱かざるをえません。

――先ほど(前編で)、選手を育てるためには辛抱が必要という話がありましたが、キャッチャーも同様でしょうか。

清水 そうですね。キャッチャーはそう簡単には育たないんですが、そこも辛抱でしょう。誰を中心と考えて育てていくのか。それと、ここまで課題が明白であれば、ロッテのキャッチャー陣はバッティング練習よりも、「捕ってからいかに素早く投げるか」といったディフェンス面の練習に時間を割いたほうがいいんじゃないかと思います。

 例えば、サト(ロッテOB・里崎智也氏の愛称)のようなスーパーキャッチャーを呼んで、短期キャンプを張るのもいいかもしれません。彼なら、キャッチャーとしての極意を伝授してくれると思うので(笑)。

――"打てるキャッチャー"もいいけれど、やはり守りが肝になる、ということですね。

清水 古田敦也さんや谷繁元信さん、城島健司、サト、阿部慎之助にしろ、歴代のスーパーキャッチャーと言われている人たちはバッティングもすごかったのですが、ウエイトを置いていたのは、やはり"守り"なんです。「キャッチャーとしての仕事がおろそかになったらダメだ」と考えていて、「ダメだったら打てばいいんでしょ」とは決して思っていなかった。少なくとも僕からは、そのように見えていました。打席に入ったら、スーパーバッターにもなるんですけどね。

 すごいキャッチャーたちは、ピッチャーをしっかりリードして、"扇の要"としてチームを牽引していました。キャッチャーだけがほかの野手とは反対の方向を向いているわけで、全体を俯瞰する司令塔でなければいけません。まずは、その仕事が「100」なんです。打つことも大切ですが、まずはそれぞれがキャッチャーとしての成長を見せてもらいたいです。

――佐藤都志也選手は昨年、打撃が開花したように見えましたが、今季は低迷(打率は昨季.278、今季はここまで.092)。そこの改善も必要ですが、それでもまずは守備の向上が優先となりますか?

清水 そうですね。佐藤は、キャッチングやブロッキング、スローイングにしても、改善しなければいけない点が多々あるように感じます。捕ったり、盗塁を刺したりすることに自信が持てず、「打つほうで挽回しよう」と考えてしまう部分が、ひょっとしたらあるのかもしれません。

 極端な言い方をすると、「打てなくてもいいから、守りをうまくなろう」という意識を持ってほしいのですが、やはり打つほうが好きで、「打つほうで結果を出したい」となってしまうのかもしれません。寺地隆成にしても同じことが言えます。ただ、寺地に関してはまだ2年目の19歳ですし、今は守るのも打つのも必死に経験を積んでいる段階だと思いますが。

【苦しい状況で経験を積む若手たちに期待】

―― 一方、ロッテが足で相手バッテリーにプレッシャーをかけていく場面は少ないです。

清水 昨秋のトレーニングや今春のキャンプで、チームとして走塁練習に注力するようなシーンはあまり見られませんでした。対照的に、日本ハムはベースランニングなども徹底して練習していた印象です。走塁もそうなのですが、ここ数年のロッテは「チームとして、これをやっていくぞ」というものが、ちょっと"薄い"ような感じがします。

 例えばサッカーであれば、監督によって4-2-3-1や3-4-2-1などフォーメーションがありますよね。攻撃型なのか守備型なのか、バランスを重視する型なのか、自分のやりたいサッカーのカラーを打ち出すじゃないですか。新庄剛志監督が日本ハムの監督に就任した時も、「選手全員を一軍の舞台に立たせる」など、いくつかの方向性を明言していました。賛否両論はありましたが、選手もファンもわかりやすいですよね。

――現在のチーム状態において、ポジティブな要素を挙げるとすれば?

清水 打つほうでは寺地、山本大斗、池田来翔、投げるほうでは田中晴也、中森俊介、木村優人ら、「今のうちに、レギュラーを獲ってしまえ」と思えるような若い選手たちが一軍の試合を多く経験できているのは、すごくポジティブなことです。中継ぎだった横山陸人に先発を経験させたりもしていましたが、選手の活躍する領域を広げるうえでいい取り組みだと思います。

――ドラフト1位ルーキーの西川史礁選手はシーズンに入って苦しんでいます。

清水 現状見る限り、しばらくの間は苦労するんじゃないかなと。西川は仕掛けが早いバッター。相手もそれをわかっているので、ストライクとボールの見極めが難しい、くさいコースから入る配球をしています。西川もそれを見極めようとしていると思いますけど、一軍レベルのピッチャーは絶妙なコースにポンとくる。そこに飛びつくようなバッティングになってしまっているので、自分の形でバットを振れていません。

 現在(6月4日時点)の打率が.145で本塁打が0。フォアボールは1個で出塁率は.165。この数字を受け入れて、課題を一つひとつ克服していかなければいけません。ただ、彼はどんなボールに対しても強く振れますし、自分のバッティングスタイルを持っていると思うんです。それを貫けるかどうかもポイントになるはずです。

 コーチ陣も「1年目は自由にやらせてみよう」と考えていると思いますし、自分の課題にどう向き合っていくか。本人が「何かを変えなければいけない」と思い始めているのであれば、それはそれで前進じゃないですか。1、2年目がダメでも3、4年目くらいから覚醒する選手は多い。今は苦しいと思いますが、何とか乗り越えてほしいですね。

【OBとしても「勝っているロッテが見たい」】

――若い選手たちが経験を積み、何が足りないかを明確に認識できることはいいことですね。

清水 そうですね。それと、若い選手たちが結果を出した試合はやはり勝ちたいです。彼らが何かのきっかけをつかんでいる試合は、どんな手を使ってでも勝たないとダメです。活躍した試合は勝って笑いたいし、喜びたいじゃないですか。でもチームが負けてしまうと、それも控えなければいけない雰囲気になってしまう。
 
 勝てればみんながハッピーですし、そのなかで活躍できた若手は自信もつきます。年俸も上がりますし、いいことだらけ。ボビー(・バレンタイン)が監督の時は、勝っている試合の終盤に選手をよく交代していたのですが、それは、ひとりでも多くの選手をグラウンドに出して、勝ち試合の喜びを共有するためでした。普通は大差がついた負け試合の展開の時に若手を途中出場させたりしますが、逆だったんです。

――ロッテはチーム体制の強化を目的に、サブロー二軍監督兼統括打撃コーチが一軍ヘッドコーチに就任するなど、配置転換に踏み切りました。

清水 借金は多いですが、まだ6月に入ったばかり。ここで舵を切るのも、チームの状況を変えるためのひとつの手ですよね。それと、僕が言いたいのは、決してフロントや監督・コーチに対しての批判というわけではなく、現状のチームに対しての"疑問"を抱いているということ。自分はOBなので、やはり勝っているロッテが見たいですし、上昇していってもらいたいという思いが強いんです。

 そのためには、ストロングポイントを生かしつつ、ウイークポイントにもしっかりと向き合う姿勢が大事ですし、フロントと監督・コーチ、選手が三位一体で取り組んでいってほしいと願っています。

【プロフィール】

清水直行(しみず・なおゆき)

1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝(旧・東芝府中)から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの中核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年のシーズン後にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。

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  • 調子<実績の吉井。猛打賞選手も、翌日平気でスタメン起用しない。なおさら、勝てる訳がない。
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