
今から6年ほど前、長く寄り添ってきた先住猫を見送ったXユーザー・りりつくさん(@MaryPoppin_s)。深い悲しみの中、「もう猫とは暮らさない」と心に決めていました。けれどある日、夢にその子がそっと現れます。その不思議な夢をきっかけに、サビ猫の「りり」ちゃんと三毛猫の「つくし」ちゃんという、愛らしい姉妹との出会いが訪れました。
夢の中に現れた“相棒”が背中を押してくれた
社会人生活の大半をともに過ごした先代猫を見送ったのは、2019年4月のこと。以来、深い喪失感から「もう猫とは暮らさない」と決めていた飼い主さん。けれどある日、ふと現れた夢の中の“相棒”が、新たなご縁へと背中を押してくれました。
「夢に、先代猫が出てきたんです。『出てきた』ということしか覚えていないんですが、目が覚めた瞬間に『また保護猫をお迎えして、次の誰かと私が幸せにならなきゃ』って思ったんです。そこから、すぐに里親募集のサイトを見始めました」
ところが、単身者OKという条件は意外と少なく、なかなかご縁に恵まれなかったといいます。一度は決まりかけた子がいたものの、別の希望者に譲渡されてしまい、悔しさが残ることも。
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「決まりかけていた子がいたんですけど、先方から『ファミリーの方に譲渡しました』って突然言われて…ドタキャンみたいな感じで、すごく落ち込みました」
そんな中、かつて訪れた保護猫カフェの検索がきっかけで、新たなチャンスが巡ってきました。提携していた山梨の保護団体が臨時で里親募集を行っており、そのページで出会ったのが“つくし”ちゃんだったのです。
「サイトでつくしを見たとき、『先代猫の小さい頃の雰囲気に似てる!』って釘付けになったんです。よく見るとそんなに似てないんですけどね(笑)。その横に写っていたのがサビ猫の“りり”で、その日ちょうど友人に『サビ猫もいいかも』って話してたところだったので、もうこれは運命だって。すぐに申し込みました」
その後、保護主さんから「ふたりをカフェに連れてきましたよ」と連絡を受け、待ちきれずすぐに会いに行ったという飼い主さん。ステイホーム期間中だったこともあり、ちょっとした“初デート”気分でドキドキしながらの訪問になったそうです。
「その年のGWは”ガーリックウィーク”って言って、ニンニク料理ばかり作ってたんですよ(笑)だから『指先ににおいが残ってて嫌われたらどうしよう』なんて、まるで初デートみたいに緊張しました。結局、ふたりはビビリですぐ逃げちゃって、においを嗅がれることすらなかったんですけどね」
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出会いから6日後にはふたりを自宅に迎え入れ、その1週間後には正式譲渡へ。こうして、サビ猫のりりちゃんと三毛猫のつくしちゃんという、双子の姉妹との新たな暮らしがはじまりました。
はじめての共同生活は、“ビビリ姉妹”との距離をはかる毎日から
お迎え直後のりりちゃんとつくしちゃんは、環境の変化に戸惑いながらも少しずつ新しい暮らしに馴染んでいきました。とりわけビビリな性格のふたりは、体調面や心の壁のケアが必要だったといいます。
「りりは1週間くらい下痢が続いたんです。毎回トイレを洗いながら『うちにこんなに可愛い子たちが来てくれたんだなあ』って、しみじみ嬉しくて。そう思える心の余裕があったのは、保護猫カフェのオーナー店長さんがLINEでいつでも相談に乗ってくれてたからです。アドバイス通りにしてたら、ちゃんと落ち着いてきて。今は毎日快便で元気いっぱいです(笑)」
つくしちゃんは、人との距離感にかなり慎重で、最初は触ろうとするだけで威嚇して逃げてしまうほどだったそう。それでも、同じように“ビビリ猫”と暮らす里親仲間とのつながりが、大きな支えになったといいます。
「SNSで繋がった先輩里親さんたちから、『うちもそうだったよ』『そのうち心を開くよ』って声をかけてもらえて、本当に心強かったです。2、3カ月経って初めて触れた時は、『ああ、これがあの人たちの言ってたビビリ猫との暮らしの喜びか!』って感動しました」
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やがてふたりとの暮らしは、飼い主さん自身のリズムにも自然と溶け込んでいきました。子どもの頃から夜型だったという飼い主さん。なんとりりちゃんとつくしちゃんも、同じく夜行性だったのです。
「りりは保護主さん宅にいた頃、深夜2時半にひとりで起きていたことがあったそうです。私も夜遅くまで仕事をすることがあるんですが、つくしは私と目が合うところで寝てるフリして、最後のキーを押した瞬間に起きてスリスリしに来るんです。なぜ終わったとわかるのか、不思議でなりません(笑)」
りりちゃんは、おしゃべり上手な甘えん坊。ときには電話中に“会話”に参加し、相手を驚かせることもあるそうです。
「“ねえねえ聞いてよ”って感じで話しかけてくるんですよ。電話してたら『お子さんが何か言ってますね』って言われたこともあります(笑)」
外の世界を生き抜いた強さと、今を生きるやさしさと
現在5歳になったりりちゃんとつくしちゃん。今でもインターホンの音に驚いて隠れてしまうほどのビビリさんですが、その慎重な性格こそが、過酷な外の世界を生き延びた理由だったのかもしれません。
「ふたりは秋生まれで、保護されたのは生後2カ月くらいの12月。山梨の寒さが増してくる頃で、りりは鼻が詰まって食欲がなかったそうなんです。それでもお腹の中からずっと一緒だった双子で寄り添いながら、外でも、保護されてからも生き抜いてきたのかと思うと…胸が熱くなります」
いまのりりちゃんは、とびきり甘えん坊でおしゃべりな“かまってちゃん”。目が合っただけでゴロゴロとのどを鳴らし、腕をポンと叩いて何かを伝えたり、しっぽを持たせて一緒に歩いたりと、まるで人間の子どものような仕草を見せてくれます。
「つくしはナデナデとお尻ポンポンが大好きで、おねだりする時は私の脚に頭をコツンって当ててくるんです。りりと比べて、“ここぞ”というタイミングを見計らうのが上手(笑)。あと、かなりの食い意地クイーンでもあります。鼻の頭の白い模様が、ちゅ〜るをちょこっと付けたみたいで……密かにお気に入りポイントです」
双子でも、性格も見た目もまったく異なるふたり。だからこそ、それぞれの個性が際立ち、歳月を重ねるほどに深まっていく愛しさがあります。
「性格が似てるかなと思ってお迎えしたけど、ビビリ以外は全然違ってました。毛色も毛の長さも違うし。でもだからこそ、ふたりともほんとうに愛おしくて。一人暮らしで多頭飼育、大丈夫かなと不安もありましたが、逆に相性のいいきょうだい猫を一緒に迎えるのは大きなメリットだと思いました。お互いに遊び相手がいて、お留守番も寂しくないですから。単身者NGの団体が多い中、一人でも飼育できる人物かを丁寧に見てくれた保護主さんと保護猫カフェのオーナーさんには、本当に感謝しています」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)