




杖をついた彼女が座りにくそうだったので、俺は椅子を後ろに引いてサポートをした。彼女の首から下の生々しい傷痕が、あのときの事故の光景を思いださせる。どんな顔で彼女に対応したらいいのか分からない。俺はひたすら頭を下げる。


事故から20年ぶりの再会を果たし、羽田キホさんには明るく言葉をかけられた。「もう誰も恨んでいない」と……。ようやく終わったんだ、そんな心境になった。店を出て別れようとしたとき、彼女から予期せぬ提案をされることになる。


あまりに突然の再会に俺は動揺し、書類を持つ手も震えてしまっていた。そんな気持ちは羽田キホさんにも伝わっていたようで、彼女は明るく俺に接してくれた。「もう謝らないでください」「もう誰もあなたを恨んでなんかいません」この言葉を聞いた瞬間、ずっと罪の意識に苦しみつづけていた俺は救われたような気がした。
長かった……本当に長い20年だった。でもこうやって和解をするためには必要な年月だったのだろう。彼女との連絡先の交換には正直なところ少し躊躇した。けれど彼女や彼女の両親の気持ちを想うと、ここで連絡先を教えないのも誠意に欠ける気がする。そう思うと断れなかったのだった。
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原案・ママスタ 脚本・渡辺多絵 作画・猫田カヨ 編集・井伊テレ子