
「55歳女性です。子育ても落ち着き、夫婦での話し合いの結果、長年連れ添った夫と別々の道を歩むことになりました。しかし結婚してからずっと専業主婦だったので、自分名義の財産はありません。離婚にあたり、財産分与はどうなるのでしょうか?」
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これまで家庭を守ることに専念してきた相談者。熟年離婚という選択をしたものの、自身の名義の財産はまったくないという状況で、財産はどうなるのか?という不安を抱えています。
結論からいうと、専業主婦であっても、財産を受け取れる可能性があります。熟年離婚における専業主婦の「財産分与」について、基本的な知識をわかりやすく解説していきます。
専業主婦でも財産を受け取れる可能性があります
「長年、専業主婦として家庭を支えてきたけれど、離婚するとなったら私には何も残らないのかしら…」そう不安に思われるかもしれません。
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しかし、ご安心ください。専業主婦であっても、離婚時にはしっかりと財産分与を受ける正当な権利があります。
なぜなら、婚姻期間中の家事や育児は、夫が仕事に専念できる環境を作り、財産形成・維持に貢献したと法的に評価されるからです。直接収入を得ていなくても「夫婦の協力」とみなされます。
財産分与とは、結婚生活中に夫婦で協力して築いた財産(共有財産)を公平に分ける制度です。
また、財産分与は原則として離婚原因に左右されることはありません。
何が対象になるの?財産分与のキホン
財産分与の対象となるのは、結婚から離婚または別居までの間に、夫婦が協力して築いた「共有財産」です。
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共有財産は、名義がどちらか一方になっていたとしても、夫婦の協力で得られたものであれば、二人にとっての共有財産とみなされます。具体的には、次のようなものが含まれます。
・現金・預貯金
・不動産
・自動車
・保険金
・退職金
・年金の婚姻期間中の分
・株や投資信託・有価証券
・家財道具・貴金属
大切なのは「誰の名義か」よりも「夫婦の協力によって得た財産か」という点です。夫名義の口座にある預金でも、婚姻中に夫婦の生活費の残りを貯めてきたものであれば、共有財産として認められます。不動産の場合も同様で、夫婦の協力によって築いたものであれば、原則として財産分与の対象になります。
年金分割で将来受け取れる年金を増やせる可能性も
熟年離婚をすることになった専業主婦の方にとって、離婚後の生活で重要になるのが「年金」でしょう。年金分割制度を活用することで、将来受け取れる年金額を増やせる可能性があります。
年金分割とは、簡単にいうと、離婚時に、婚姻期間中に収めた厚生年金の記録を夫婦で公平に分け合う制度です。
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年金分割には、主に「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
▽合意分割
夫婦の合意もしくは裁判所の判断によって分割割合を決める。
▽3号分割
2008年4月以降の婚姻期間中に、夫が厚生年金に加盟している期間があった場合は、その期間中の厚生年金記録を夫と妻で分割できる。専業主婦など国民年金の第3号被保険者が単独で請求でき、夫婦での事前の合意等は必要ない。
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熟年離婚をする場合、専業主婦でも、財産を受け取れる可能性があります。
「専業主婦だから」と諦めず、ご自身の状況を確認し、必要に応じて弁護士など専門家に相談してみましょう。
不安は大きいと思いますが、正しい知識を武器に、納得のいく財産分与を実現し、前向きな気持ちで新しい人生の一歩を踏み出しましょう。
【監修】瀧澤亮(たきさわ・りょう)2級ファイナンシャル・プランニング技能士 Webライター・ディレクター。将来を見据え、保険や年金のことを詳しく知り活用したいとの思いからFP資格取得を決意。現在FP2級を取得し、上位級も勉強中。Webライター・ディレクターとして、お金に関する記事の執筆やディレクション・監修を担当している。
(まいどなニュース/もくもくライターズ)