2025年は量産元年⁉中国で進む人型ロボット開発「日常生活での実用化目指す」中国が開発を急ぐ狙いとは?

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2025年06月08日 07:02  TBS NEWS DIG

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中国で人型ロボットの開発が急速に進められている。特に開発に力を注いでいるのが、人が操作しなくても自ら動くことができる「AIロボット」だ。中国の狙いとは何なのか?

【写真を見る】人型ロボットのマラソン大会で1位に輝いた「天工」

世界初 人型ロボットのハーフマラソン大会開催 21kmを走り切ることはできたのか?

4月19日、北京市内で開かれたハーフマラソン大会。スタート地点には多くの報道陣が集まっていた。注目を集めた理由は、この大会が人型ロボットのマラソン大会だったからだ。主催者によると世界で初めての試みだという。午前7時半に号砲が鳴ると1体ずつロボットがスタートしていく。

スムースに走り出すロボットがいる一方で、制御不能になりコース沿いの壁に激突するロボットやスタート地点から一歩も動くことができずに棄権するロボットもいた。

ゴールするまでにかかった時間で競われる人型ロボットのハーフマラソン大会、そもそも21kmを走り切ることのできるロボットがいるのかどうかが注目されていたが、ゴール地点で待っていると1台のロボットが観客の大歓声を受けながらゴールテープを切った。

1位に輝いたのは北京市の新興企業が開発した人型ロボット「天工」で、記録は2時間40分42秒だった。大会のルールではロボットのバッテリーや本体の交換も認められていたが、「天工」は本体の交換は行わず走り切ったという。

今回の大会には20チームが参加していたが、走り切ったのは6チームで残り14チームは途中で脱落した。優勝した「天工」の開発担当者は大会に参加した狙いについて次のように語った。

北京人型ロボットイノベーションセンター 唐剣 最高技術責任者
「大会に参加した目的は、人型ロボットの産業化に向けた準備です。工場や商業施設、日常生活のなかで人型ロボットを実用化し、ロボットが24時間365日故障することなく稼働することを目指しています。このマラソン大会は信頼性と安定性の限界を検証するためのものだったのです」

中国で進む人型ロボット開発 2025年は「量産元年」 政府も後押し

いま、中国では人型ロボットの開発が急速に進められている。

中国の旧正月=春節の大晦日に放送される歌番組「春晩」。家族みんなが集まり一緒に見るのが定番とされている。この番組に今年は浙江省・杭州市の新興企業「宇樹科技Unitree」が開発した人型ロボットが登場し、人と一緒に軽快なダンスを披露した。映像は中国のSNSでも拡散され話題を呼んだ。「Unitree」が公開した動画の中には人型ロボットがカンフーを披露するものもあり身体能力の高さをうかがわせる。

研究が進められているのは人型ロボットの身体能力だけではない。人が操作しなくても自ら動くことのできる「AIロボット」の開発が注目を集めている。

上海の新興企業「智元機器人Agibot」は人型ロボットの開発・製造施設を去年オープンした。施設内ではエンジニアがロボットに対して、人が日常生活のなかでこなすあらゆる動作を教え込んでいる。お茶をいれる、洗濯物を畳む、といったあらゆる動作についてのデータを収集し、学習させ、人が操作しなくても指示するだけで自動的に動くことのできる「AIロボット」を開発することが狙いだという。

この企業は今年中に人型ロボットを数千台生産することも予定していて、中国メディアは今年が人型ロボットの「量産元年」だと指摘している。

政府も人型ロボットの開発を後押ししている。

中国の工業・情報化省は2023年に「人型ロボットの革新・発展」に向けた方針を発表。「人型ロボットは人類の生産や生活様式を根本から変え、グローバルな産業の発展を再編することになる」と、人型ロボット開発の重要性を指摘している。そのうえで、人型ロボットの認知機能をはじめとした核心技術の開発を前進させ、2027年までに「製造能力を大幅に向上させる」という目標を掲げた。

地方政府が人型ロボットの開発に公的資金などを投入する事例も出てきている。

北京市は、1000億元規模(日本円で約1兆9800億円規模)の基金を設立しロボットやAI=人工知能といった産業を支援するという。

人型ロボットの市場規模10年後には5兆円超予測も…中国が開発を急ぐ理由とは?

急速に進む人型ロボットの開発を市民はどう見ているのか?北京市内で聞いてみた。

市民
「人型ロボットに期待しています。私たちのように年をとって子どもがそばにいない場合、トイレに行くときなどに助けてもらえると思います」

市民
「人型ロボットには話したいときに話し相手になってくれることを期待します」

市民
「人型ロボットには家事をかわりにやって欲しいです」

取材に対して、「家事や介護をかわりにやって欲しい」と答える人が多かった。ほかにも、「危険な場所での仕事をロボットにやって欲しい」と話す人もいた。多くの市民が人型ロボットに対する期待を口にした。

人型ロボットの開発を急ぐ背景には中国の少子高齢化に伴う労働力不足がある。

中国国家統計局などによると、去年発表された中国の生産年齢人口は約8億5798万人、今後10年間で7000万人近く減ると予想されている。政府としては人型ロボットの開発を急ぎ、労働力不足を補っていきたい狙いがある。

さらに、人型ロボット産業を経済成長の起爆剤にしたい思惑もある。

アメリカの金融大手ゴールドマン・サックスは、人型ロボットの市場規模が2035年までに380億ドル(日本円で約5兆4200億円)に達し、2030年には25万台を超える人型ロボットが出荷されると予測している。

中国国家市場監督管理総局が発表したデータによると、中国でロボット産業に従事する企業は去年12月末時点で45万1700社にのぼり4年間でおよそ3倍に成長したという。

中国政府としては国内の人型ロボット産業を育成し、ゆくゆくは世界市場のシェアを獲得していきたい思惑があるとみられる。

本格化する人型ロボットの開発は「労働力不足の解消」と「経済成長」という2つの期待に応えることができるのだろうか。

取材後記 

人型ロボット開発といえば日本が先行しているイメージを持っていた。ホンダが開発を手がけた人型ロボット「ASIMO」がニュースで大きく取り上げられ、なにより、子どものとき読んだマンガ『鉄腕アトム』の印象が強く残っているせいかもしれない。

しかし、中国にいつの間にか追いつかれ、「AIロボット」の分野についてはすでに追い抜かされているように見える。警察がパトロールに人型ロボットを導入したりEV=電気自動車メーカーの工場で人型ロボットが働くためのテストを行ったりと、実用化に向けたスピードも速い。

中国経済の専門家は中国の人型ロボット開発について次のように指摘する。

「中国はドローンがおもちゃ扱いされていたときから開発に力を入れてきた。今となっては一部の都市で荷物の配送を担うほどに発展している。人型ロボット開発についても侮ることはできない」

今後、中国がどのような人型ロボットを開発し、社会でどのように実用化していくのか、注視していく必要がありそうだ。

JNN北京支局 松尾一志

このニュースに関するつぶやき

  • 実際は、一人っ子の解放軍兵士は有事の際に親が辞めさせてしまうし、ワガママに育って使い物にならないので、人型ロボット兵士にしたいんだろうよ(笑)2025年は量産元年exclamation & question中国で進む人型ロボット開発「日常生活での実用化目指す」中国が開発を急ぐ狙いとは?
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