「利用者が増え、企業が『このままではダメだ』と気づき、安心して仕事ができる環境になってほしい」(谷本氏) いまや若者から中高年まで使う退職代行。退職妨害や精神疾患など使わざるを得ない状況がある一方で、その気軽さにハマりリピーターと化す人も続出している。使い方によっては“中毒性”がある退職代行の側面に迫った!
◆退職代行モームリも驚いた!? 横領、盗撮、不倫etc. 困ったサービス利用者たち
’24年の1年間で約2万人が利用した「退職代行モームリ」。今年は4月の依頼件数がすでに2200件を超え、月間予測では新卒者400人を含む3000人の利用が見込まれている(4月22日時点)。
ではその“リピート率”とは。モームリを運営するアルバトロス代表の谷本慎二氏に聞いた。
「弊社の退職代行のリピート利用率は、全体の約3%です。1年間は再利用が半額になる“リピート割”がありますが、これは利用者のご友人の方も対象です。リピート率は低いとはいえ、頻繁に利用されている方もいます。例えば40代のIT系の仕事をされている男性は『退職手続きが面倒』という理由で、短期間で5回利用されました。また、退職代行を使ってアルバイトを5回辞めた40代の主婦の方もいます。リピーターは、30〜40代の方が多いですね」
中には“困った理由”で、退職代行を依頼してくる人もいるらしい。モームリ従業員の河野萌香さんはこう語る。
「退職の意思を伝えるために依頼者の勤める会社にお電話をしたら、『辞めるのはいいけど、あの人がやった横領の件どうするの?』と衝撃的な返事が返ってきたんです。依頼者から何も聞いていなかったので、固まりました」
◆困った依頼者の反面、「不健全な社会」の問題も指摘
「さらに、困ったのは“盗撮”です。社内では依頼者が犯人ということがほぼ確定していて、取り調べも進んでいる。それなのに、解決せずに途中で面倒になって逃げるように退職を希望する人もいました。また、社内不倫の気まずさに耐えきれず、周りに知られてしまう前に『こっそり退職したい』という依頼が男女どちらからもあったり……。不倫はさておき、横領や盗撮など意図的に事実を隠していた場合は契約を解消することもあります」
さまざまな思惑から増え続ける退職代行依頼。ただ谷本氏は「退職代行が流行る社会が不健全なんです」と続ける。
「理由や事情はさまざまですが、そもそも今のような『退職代行に頼らないと辞めさせてもらえない』社会自体がちょっと異常だと思うんです。退職代行サービスを使うことで辞めグセがつくんじゃないか、と考える前に、辞めたい人がきちんと辞められる健全な社会であってほしいです」
退職代行を使う人、リピートする人。どちらも社会の歪みが生み出した結果なのか。
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[退職代行リピーター]の実態]―