サッカー日本代表とワールドカップ優勝候補に挙がる欧州列強を比較 ポルトガルと渡り合うことは可能か

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2025年06月08日 18:10  webスポルティーバ

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いま日本が欧州最強国と戦えば(1)〜ポルトガル

「ワールドカップ優勝」

 サッカー日本代表を率いる森保一監督は、高らかに目標を設定した。負けるために、大会に挑むチームはない。日本サッカーが確実に進化を遂げてきたのも事実だ。

 しかし日本の最高位はベスト16で、本気で言っているのか? そこで、世界の「W杯優勝候補」の現在地を比較検証しながら、森保ジャパンの"現在"を探った。

 第1回は、直近の欧州ネーションズリーグでドイツを撃破し、決勝に進出したポルトガル代表だ。

 ポルトガル代表は今もクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)を中心としたチームと言えるだろう。

 すでに40歳になるロナウドは衰えも指摘される。確かに昔のように左サイドからシザースでカットインし、相手を振りきって豪快にシュートする俊敏性やパワーは失われている。シュートシーンで腰が入っていない姿も見かけるようになった。とはいえ、前線での迫力、そして勝負どころの強さは捨てがたい。

 6月4日に行なわれたネーションズリーグ準決勝では、誰よりもシュートまで持ち込んでいた。とにかく足を振れる。それは簡単なことではなく、意志の強さも技術の高さも群を抜いていた。

 たとえば、左サイドを駆け上がったペドロ・ネト(チェルシー)からのクロスに、一瞬止まってボールを受け、左足シュートした場面は象徴的だろう。どうすればマーカーを外せるのか。その練度は尋常ではない。また、ヌーノ・メンデス(パリ・サンジェルマン)のクロスをファーで走り込んでスライディングシュートしたシーンも、スポットによく突っ込んでいた。わずかに足のヒットが足りなかったが、ボールが入るポイントを予測しているのだろう。圧巻はCKで放ったヘディング。40歳とは思えない高い跳躍で、同じ高さを出せるストライカーがどれだけいるか。

 そして同点で迎えた後半途中、ロナウドは存在を証明した。自らのパスミスでボールを失ったあと、猛然とGKまでプレス。そのパスを味方が回収すると、ヌーノ・メンデスからのクロスに走り込んで自ら合わせ、ゴールネットを揺らした。人間業ではない集中力や自信を90分間持ち続けられることで、身体的な衰えをカバーして余りあるのだ。

【攻撃陣は拮抗できるはずだが......】

 森保ジャパンのディフェンスはロナウドを、89分は抑えることはできるかもしれない。しかし、残り1分を封じられるか。ドイツの並み居るディフェンスたちも、ほんのわずかな隙を狙われてシュートまで持ち込まれていた。彼を中心にかさにかかって攻め込まれた時、ピッチに立つ者しかわからない危機感を覚えるはずだ。

 そして今のポルトガルは、各ポジションに人材がいる。FW、MF、DF、GKと穴がない。ヴィティーニャ(パリ・サンジェルマン)、ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)、ベルナルド・シルバ(マンチェスター・シティ)、ヌーノ・メンデスは世界ベストイレブンに相当。左サイドアタッカーだけでも、ネト、ディオゴ・ジョタ(リバプール)、ラファエル・レオン(ミラン)と有力選手を擁しているのだ。

 ポルトガルを率いるスペイン人監督ロベルト・マルティネスは、ベルギー代表を強豪に押し上げた実績があり、攻撃的マインドをチームに植えつけられる。交代カードを切る手腕も卓抜。ロシアワールドカップ、西野朗監督が率いる日本と戦って、交代カードを切って2点差を後半アディショナルタイムにひっくり返して3−2とし、差を見せつけた。

 ドイツ戦でも、後半途中からフランシスコ・コンセイソン(ユベントス)、ヴィティーニャを次々に投入し、効果てきめんだった。右サイドからの攻撃のインテンシティを一気に高めると、コンセイソンがカットインから左足で同点弾を決める。また、ヴィティーニャが抜群のキープ力と機動力を生かしたドリブル力で攻撃を活性化し、試合の流れを決定づけていた。

 森保監督に歴戦の指揮官、マルティネス監督のような采配ができるか? 正直、疑わしい。

 日本とポルトガルは、伝統的にプレースタイルが似ている。いわゆる点取り屋はなかなか出てこないが、中盤は器用でうまい選手が多く輩出、伝統的にウインガーも多い(パウロ・フットレ、ルイス・フィーゴ、シモン・サブローザ、リカルド・クアレスマ、ロナウド、ナニなど)。全体としてテクニカルなイメージだ。

 たとえば中盤の遠藤航、守田英正、鎌田大地の3人はポルトガルのヴィティーニャ、ベルナルド・シルバ、ブルーノ・フェルナンデスと拮抗。サイドアタッカーの得点力もそん色はない。三笘薫、中村敬斗、堂安律はプレミアリーグ、リーグアン、ブンデスリーガで二桁得点の選手で、ラファエル・レオン、ジョタ、フランシスコ・トリンコン(スポルティング)とも渡り合えるはずだ。

 ただ、森保監督はウイングバックという"発明品"を好み、サイドアタッカーのアドバンテージを捨てようとしている。何も、ウイングバックのすべてを否定するわけではない。たとえばポルトガルの名将ルベン・アモリム(現マンチェスター・ユナイテッド監督)は3−4−2−1でウイングバックを用いているが、左右はディオゴ・ダロ、パトリック・ドルグと強度が高く、4バックではサイドバックになる選手たちだ。

 マルティネス監督は正攻法で、人材の質の高さを引き出している。批判が集まったロナウドの起用も、ネーションズリーグ決勝進出で正当性を証明した。同じベテランの抜擢でも、低迷するFC東京でも主力ではない選手を「メンタリティや経験」で招集するのとはわけが違う。

 ネーションズリーグ決勝、ポルトガルは王者スペインと覇を競うが、2026年W杯も優勝候補のひとつだ。

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