サッカー日本代表と比較検証 現実のワールドカップ優勝候補筆頭、スペインの強さとは?

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2025年06月09日 07:20  webスポルティーバ

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いま日本が欧州最強国と戦えば(2)〜スペイン

 ワールドカップでの最高位はベスト16の日本が目標を「優勝」に設定した。そこで世界の「ワールドカップ優勝候補」の現在地を比較検証しながら、森保ジャパンの"今"を探った。

 第2回は、2023年欧州ネーションズリーグ優勝、EURO2024王者、パリ五輪金メダル、そしてネーションズリーグでも決勝に進出(結果はポルトガルに2−2の末、PK戦で敗れる)した"無敵艦隊"スペインだ。

 スペインの強さは群を抜いている。直近のネーションズリーグ準決勝では、欧州王者パリ・サンジェルマンの選手を中心に構成されたフランスを打ち砕いた。最終スコアは5−4だったが、4−0とリードしてからややペースダウンして追いすがられただけで、強さを誇示していた。

 ペドリ、ラミン・ヤマル(ともにバルセロナ)のふたりは最強ぶりを象徴し、どちらもバロンドール候補にふさわしいプレーだった。

 ペドリは"サッカーそのもの"に等しい選手と言える。ボールを受け、託すだけで流れるようにプレーが生まれる。タイミングや空間の使い方が絶妙、味方に余裕を与えられることで、アドバンテージを取れる。アンドレス・イニエスタに近いか。単に「ドリブルやターンがうまい」では収まらない。

 ヤマルにはボールを受けたら無敵感がある。手練れのディフェンスでも、容易に飛び込めない。常に主導権を握り、相手の裏を取り、ギアの入れ替えは破格。止まったように映ったところから一気にボールを動かし、急角度で方向を変え、とんでもないスピード感がある。フランス戦の自身のこの試合2点目は、コントロールからシュートまで神業的だった。

 一方、"彼らだけではない"のがスペインの強さだ。

 2024年にバロンドールを受賞したMFロドリ(マンチェスター・シティ)は、プレーメイクにおいて世界最高の選手である。彼を中心に放射線状にボールが動くと、相手を搦め取るように、怒涛の攻撃を生み出す。視野の広さだけでなく、長短で自在にパスを操る。優雅なゲームメイクは、このポジションの王として君臨していたセルヒオ・ブスケツ(インテル・マイアミ)を懐かしむ声がなくなったほどだ。

【指揮官のおかげでストレスなく実力を発揮】

 そして瞠目すべきは、ロドリがケガで離脱している間、ネーションズリーグではレアル・ソシエダのマルティン・スビメンディが同等のプレーメイクを見せた点だろう。準決勝フランス戦も巧みにボールを配給。足の速いボールを縦に差し込み、ミケル・メリーノ(アーセナル)、ミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)、さらにメリーノのワンツーと、元レアル・ソシエダトリオの連係で得点を奪うシーンもあった。

 逆説すれば、「レアル・ソシエダでエースの久保建英も彼らに相当する活躍ができるはず」と言うことか。ただ、森保ジャパンの久保は力を引き出されているとは言えない。3−4−2−1に固執する指揮官にはシャドーで起用されているが、単純にサイドに開いてプレーしたほうが効果的な状況だ。

 いまのスペイン代表は選手たちがストレスなく力を出せている。

 中盤はロドリ、ペドリ、ファビアン・ルイス(パリ・サンジェルマン)がつくる。ヤマルが右から中へ、左からはニコ・ウィリアムス(アスレティック・ビルバオ)が中へ、万力で挟み込むように外殻を壊す。綻びが出たところで、ダニ・オルモ(バルセロナ)、メリーノのような得点力のあるMFがゴール前に入る。中央ではオヤルサバルが0トップで駆け引きし、フランス戦もヤマルのクロスを落とし、ニコの得点をアシストしていた。

 圧倒的なチーム力だ。

 スペイン代表監督ルイス・デ・ラ・フエンテが、選手の能力や適性を"公平"に扱えるのも大きい。EURO2024では38歳のヘスス・ナバス(セビージャ)を用いて、ダニ・カルバハル(レアル・マドリード)のケガ離脱をカバーしていた。また、大会開幕当初は控えだったオルモ、オヤルサバルのふたりを切り札として起用。大会を勝ち進むなかでラッキーボーイに仕立て上げた。

 デ・ラ・フエンテ監督は年齢に関わらずプレー自体を評価している。とにかく偏見がない。たとえば33歳のファンタジスタ、イスコが復活を遂げたら、すかさず選出した。レアル・マドリードで不遇をかこったのは「彼中心の戦い」ができなかったからだが、使い方はあるはず――。料理に合う素材、合わない素材の違いはあるが、最初から否定せず、そこで知恵を絞り、腕を振るうのが"究極の料理人"である。

 一方、森保監督はこれまでクラブで目立った活躍をしていた大迫勇也や鈴木優磨などを招集してこず、不確かな序列を重んじ、従順そうな若手選手や忠誠心の強い長友佑都は招集している。これでは"公平さ"に歪みが出る。GKひとつとっても、本当に今シーズンベストのプレーをしている選手が選ばれているか。その歪みがミスを生むのではないか。代表は、実力、実績を挙げた選手がいるべき場所だ。

 日本はスペインと近いキャラクターの選手がいるだけに、本来はモデルとすべきだろう。遠藤航、守田英正、鎌田大地、田中碧はロドリ、ペドリ、ファビアン・ルイス。久保、堂安律がヤマル、三笘薫、中村敬斗がニコ(言うまでもなく、技術の洗練度やスケール度は違うが)。上田綺世や町野修斗も、サム・オモロディオン(ポルト)、オヤルサバルのように周りが点を取るための"潰れ役"には十分すぎる。

 しかし、現在の森保ジャパンの3−4−2−1のシステムは選手の適性とマッチしていない。明らかな不具合がある。直近のオーストラリア戦もノッキングを繰り返した。選手の適性に合った戦いを再構築することから始めるべきだ。

 機能しないシステムに固執した物差しでは、世界から置き去りにされる。

 スペインは、今もしつこくアップデートを繰り返している。センターバックだけを見ても、イニゴ・マルティネス(バルセロナ)が民族的な問題で招集を回避すると、パウ・クバルシ(バルセロナ)、ディーン・ハイセン(ボーンマス→レアル・マドリード)と、10代の有力選手が次々に頭角を現わし、ラウール・アセンシオ(レアル・マドリード)も招集されないほどだ。彼らこそ、堂々と「ワールドカップ優勝」を目標に宣言できる数少ない国だろう。

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