
長年連れ添った夫が実は不倫をしていることを知ってしまったAさんは、夫の不倫相手に対して訴訟をおこしました。その結果、和解の末に夫の不倫相手から慰謝料を受け取ることができました。
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ただし不倫相手からの要望で「和解内容を第三者に口外しない」という口外禁止条項が設定され、もしも口外してしまったら50万円を支払わなければならないことにAさんは複雑な気持ちを隠し切れません。
訴訟が終わり、平穏な日々を取り戻そうと努めるAさんでしたが、和解の内容を誰にも伝えることができず心の傷は癒えないままでした。その後、どうしても孤独に耐えきれなかったAさんは、長年の親友であるBさんに対して秘密を打ち明けてしまったのです。信頼できるBさんに、ただ話を聞いてもらい心の重荷を少しでも軽くしたかったからです。
それでも口外禁止の条件を破ってしまったのではないかという不安が、Aさんの心を締め付けます。Bさんは誰にも話さないとはいうものの、約束を破った事実は変わりません。50万円の支払いは避けられないのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
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ー口外禁止条項とはどういうものですか
法的紛争の和解や契約において、当事者が合意した内容や特定の情報を第三者に開示することを禁じる条項です。主な目的としては、プライバシー保護や風評被害の防止、再発防止などがあげられます。
口外禁止条項には、対象となる情報や口外の範囲、例外規定、違反時のペナルティ、有効期間などが含まれることがあります。
ー条項を破った場合、どのようなペナルティがありますか
口外禁止条項を破った場合には、契約書や和解書に定められたペナルティが科せられます。Aさんの場合、口外禁止条項を破ったことが不倫相手に知られてしまった場合、50万円を支払わなければなりません。
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また仮にAさんが口外したことにより、相手方の信用を傷つけたり何かしらの損害を与えたとしたら、信用回復のための措置や損害賠償を求めらえる可能性もあります。
ただし口外禁止条項によって個人の権利や自由が過度に制限されてはいけません。違法行為や不正行為の告発を禁止する条項は、公益に反するものとして無効とされる場合もあります。仮に不倫相手から人権を蹂躙されるような扱いを受けていたとしたら、Aさんへのペナルティは無効となる可能性も考えられます。
さらに著名人の不倫問題といった社会的な影響が大きい事案においては、一般人のケースとは異なり口外禁止条項の是非そのものが議論される場合もあります。
とはいえ、そもそも口外禁止条項違反のペナルティは相手から違反したことを訴えられ、口外したことが立証された場合のみに発生します。つまり相手にバレなければ罰則金を支払う必要はありません。もちろん口外してしまった事実を、自ら相手に申告する必要もないです。
ー口外禁止条項を破って裁判となったケースはありますか
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口外禁止条項に違反した場合の判例は、一般に公開されているものが限られています。プライバシー保護の観点から、当事者同士の合意により判決内容や事実関係を非公開とする場合も考えられます。また訴訟となっても和解で解決する場合も多いため、判例として公開されません。
とはいえ判例が見つからないといっても、口外禁止条項に違反してもペナルティがないというわけではありません。一度口外禁止条項を交わしたのであれば、たとえ親しい友人であっても内容を話さないよう注意が必要です。
◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)