中国の港に山積みにされたレアアース(希土類)を含む土壌=2010年9月、江蘇省連雲港市(AFP時事) 【北京時事】5月の中国貿易統計で、レアアース(希土類)輸出は金額ベースで前年同月比48.3%減少した。数量ベースでも5.7%のマイナス。米中貿易戦争が激化する中、中国政府は4月に幅広い用途に使われるジスプロシウムを含むレアアースの輸出管理を強めており、出荷が滞った可能性が高い。
「レアアースは軍民両用の性質を持っており、輸出規制の強化は国際的な慣行にのっとっている」。中国商務省の何詠前・報道官は5日の記者会見でこのように強調した。商務省は4月上旬、ジスプロシウムやサマリウムなどの輸出規制を厳格化。5月にはレアアースの国家管理を一段と強めると表明した。
中国は近年、レアメタル(希少金属)のガリウムやゲルマニウムなどに輸出規制を講じてきたが、いずれも規制後に輸出量が急減。ある業界関係者は「これまでのケースを踏まえると、レアアース輸出が以前の水準に戻る可能性は低い」との見方を示した。
中国のレアアース生産量は世界首位で、輸出規制強化の影響は各国に拡大。報道によると、日本でもスズキの工場が操業を停止したという。
世界的に反発が広がる中、商務省は7日の報道官談話で「法に基づき審査を行い、既に一部を許可した」と明らかにした。ただ、審査基準は不透明であり、日本などに対しては「政治的判断の要素が強くなる」(北京の日系企業幹部)と懸念する声も上がっている。
中国に拠点を置く日系企業団体の中国日本商会は9日付で談話を出し、規制の影響が日本企業にも広がったため、中国側に審査の迅速化などを申し入れたと明かした。同商会は「一部の承認が出始めた」と強調。ただ、業界関係者によると、許可が下りたのは「ほんのわずか」にとどまるという。