「TOYOTA GAZOO Racing」のロゴが掲出されたミッションH24の実験車両『H24EVO』 ACOフランス西部自動車クラブは6月13日、同組織の水素レースカープロジェクトである“ミッションH24”とトヨタ・ガズー・レーシング(TGR)が、レースにおける水素活用に向けた協業を開始すると発表した。
この戦略的パートナーシップは、カーボンニュートラル社会の実現を後押しすると考えられている、水素による脱炭素化に向けた自動車業界のコミットメントを示すものだ。TGRは最近、サルト・サーキットのH2ビレッジ(水素村)において、燃料に液体水素を用いるプロトタイプ『GR LH2レーシング・コンセプト』を発表した。
ミッションH24とトヨタ・ガズー・レーシングは、空力と冷却という主要分野で協業する予定だ。これにより、ミッションH24の水素燃料電池プロトタイプカーの3代目として開発が進む『H24EVO』は、同コラボレーションの恩恵を受けることになる。
この革新的なマシンの開発を担当するミッションH24テクニカルディレクターのバッセル・アスランは、TGRの専門知識とリソースを活用し、可能な限りもっとも効率的な空力と冷却システムを開発することが可能となるのだ。
ル・マン24時間レースの主催団体であるACOは、2028年までに水素カーをル・マンとWECの複数ラウンドのグリッドに並べることを目指している。現時点では明確なビジョンが示されていない同カテゴリーだが、トヨタのテストカーやアルピーヌ・アルペングローhy6のように水素を燃やす内燃機関を搭載する車両と、H24EVOが採用しBMWが検討している燃料電池EV(FCEV)の両方が参加できる規則の準備が進んでいるものと考えられている。
「ミッションH24は、とくに主要な国際企業をはじめとする貴重なパートナーシップをすでに築いているが、本日トヨタ・ガズー・レーシングとのコラボレーションを発表することは、新たな大きな一歩と言える」と語るのは、ACO会長兼ミッションH24共同会長のピエール・フィヨン氏。
H24プロジェクトのCEOで、ミッションH24共同社長のジャン・ミシェル・ブレッシュ氏は次のように述べた。「私は長年にわたり、とくに耐久レースにおいてトヨタのモータースポーツへの取り組みを注視してきた。トヨタの技術的貢献と経験は、H24EVOの開発に大きく貢献し、モータースポーツの脱炭素化というミッションH24の目標達成に貢献すると確信している」
13日にル・マンで行われたACOの年次記者会見に出席したトヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TGR-E)の中嶋一貴副会長も、会場でのスピーチで今回の提携を歓迎した。「ミッションH24の戦略的パートナーとなることを発表できることを嬉しく思います。トヨタはモリゾウさん(豊田章男会長)の下、スーパー耐久シリーズにおいて水素技術の開発を進めてきました。水曜日にH2ビレッジで公開したGR LH2レーシング・コンセプトをはじめ、将来のグローバルレース参戦を見据えた技術開発にも取り組んでいます。そして、モータースポーツをとおして培ってきた水素技術開発のノウハウを活かし、ミッションH24プロジェクトの強化を支援していきます」
「ACOはモータースポーツにおける水素のパイオニアであり、私たちはその強いコミットメントに共感しています。技術的な貢献に加え、モータースポーツのみならず、他の分野においても水素の可能性を広げられるパートナーシップを構築していきたいと考えています。ACOおよびミッションH24とともに、ル・マンのカーボンニュートラルな未来に向けて取り組んでいくことを楽しみにしています」
[オートスポーツweb 2025年06月13日]