“一夫多妻”状態の社長が倒れた…事実婚のパートナーが3人、子どももそれぞれ 「もし、このまま死んでいたら…」遺産はどうなる?【行政書士が解説】

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2025年06月16日 07:30  まいどなニュース

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静かな病室で、Aさんは万が一の事態を考えるようになりました ※画像はイメージです(Pormezz/stock.adobe.com)

都内で会社を経営している社長のAさんには、事実婚状態の3人の女性がいます。彼女たちはAさんの経済的な庇護のもと、Aさんの自宅の別々の部屋で何不自由ない穏やかで満ち足りた生活を送っていました。

【写真】4人の女性と事実婚生活 “一夫多妻”のヒモ男の生活とは 札幌市の自宅を訪問

それぞれのパートナーとの間には子供もいて、Aさんは全員を守り幸せにしたいという強い責任感を抱いています。

そんなある日、Aさんを不幸が襲います。Aさんは激しい頭痛に襲われ、その場で意識を失い倒れてしまったのです。緊急搬送された病院で、幸いにも一命は取り留めました。しかし医師からは、これまでの不摂生な生活習慣や過度のストレスが原因であると厳しく指摘され、しばらくの入院と療養を余儀なくされたのです。

静かな病室で、Aさんは万が一の事態を考えるようになります。もしこのまま自分が帰らぬ人となっていたら、 愛する3人のパートナーとそれぞれの子供たちの生活はどうなってしまうのだろうか。

法律上の配偶者はいずれの女性でもなく、自分が汗水流して築き上げたこの財産は、誰にどのように受け継がれるのかと頭を悩ませるのでした。

子供たちには相続権があるはずですが、事実婚のパートナーである彼女たちはどうなるのでしょうか。北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞きました。

それぞれのパートナーや子供のために生前に“準備”を

ー事実婚の妻が複数いる場合、相続はどうなるのでしょうか

日本の現在の法律(民法)では、事実婚のパートナー(内縁関係の配偶者)には、法律上の配偶者のような法定相続権は認められていません。パートナーがひとりでも複数でも同じです。

よって、Aさんが亡くなられた場合、3人の事実婚のパートナーの方々は、法律上当然に遺産を相続する権利はありません。Aさんの経済的な支えのもとで生活していたとしても、法律上の婚姻関係がない限り、相続人とはみなされないのが法律、裁判所の考え方です。

ーパートナーとの間に生まれた子供はどのような扱いになりますか

Aさんが法律にいう「認知」をしているのであれば、法律上も実子として扱われ、法定相続人となります。母親が法律上の妻であるか事実婚のパートナーであるかに関わらず、相続権を持ちます。

もしAさんが認知していないのであれば、お子さんには原則として相続権はありません。相続権を得るためには、Aさんの死後に子供たちが裁判所に対して認知を求める訴え(死後認知訴訟)を起こすなどの手続きが必要です。

ーAさんが相続で意思を表明するにはどうしたらいいのでしょうか

Aさんがご自身の意思として、事実婚のパートナーの方々にも財産を残したいのであれば、生前に明確な意思表示をしておくことが極めて重要です。最も確実かつ有効で、一般的な方法としては遺言書の作成がこれにあたります。

Aさんのケースは、法律上の配偶者がいない一方で、事実婚のパートナーが複数おり、それぞれにお子さんがいるという、非常にデリケートで複雑な状況です。ご自身の意思を確実に反映させ、残されるご家族間の無用な争いを避けるためにも、一刻も早く遺言書の作成に着手されることをおすすめします。

◆松尾武将(まつお・たけまさ)/行政書士 長崎県諫早市出身。大阪府茨木市にて開業。前職の信託銀行員時代に1,000件以上の遺言・相続手続きを担当し、3,000件以上の相談に携わる。2022年に北摂パートナーズ行政書士事務所を開所し、相続手続き、遺言支援、ペットの相続問題に携わるとともに、同じ道を目指す行政書士の指導にも尽力している。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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