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※画像生成にAIを利用しています お米に電気代、ガソリン代に日用品と価格上昇が止まらない昨今。生活費を抑えるためや家計の負担を減らすために節約しているという人も多いのではないでしょうか。ただ、やりすぎた節約は周囲の人との関係を悪くしてしまうかもしれません。
◆母親の恥ずかしすぎる“節約癖”
大西唯香さん(仮名・30代)はいつの頃からか、他人が不用品の話をしていたら「ちょうだい!」とせっつき、街中やショッピングセンターなどでティッシュを配っていると何度も往復してもらいに行くような母のことを恥ずかしく思っていたという。
「特売日に売り出し商品が1人何個などと制限があるときは、いくら私が嫌がっても無理やり同行させられまして……。スーパーでバッタリと同級生に会い、半額の商品しか買っていないことなどをからかわれたこともありました」
思春期になるとそんな母に嫌気が差し、高校卒業後は逃げるように1人暮らしをはじめた唯香さん。けれど社会人になり、お金を稼ぐことの大切さや一人暮らしの大変さなどを経験したことで、お金や節約に執着する母のことを少しは理解できるようになったとか。
「母はひとりで私を育ててくれたので余計に大変だっただろうなと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。そこでこれまでの反省の気持ちも込めて旅行に誘ったのです。旅行は私が小学生のとき以来で20年ぶり。母も喜んでいました」
◆旅行先で“まさかの迷惑行動”
楽しい旅行にしたいと考えていた唯香さんは、自家用車でゆったりとまわる旅を計画した。朝早くに出発して、事前にみつけておいた人気の和食店で食事。そのあと神社仏閣を巡って、ホテルへ到着するまでは楽しく過ごしていた。
「でもホテルに到着すると母は、ドリンクバーのドリンクを『ウエルカムドリンクだから』と、自分の水筒へ注ぎはじめたのです。注意しましたが聞き入れず、翌日は朝食ビュッフェのパンもビニール袋に入れて持ち帰ろうとして注意されました」
母がこっそりと部屋に持ち帰っていたビュッフェ会場の紙コップやフタ、紙ナプキンに砂糖も複数個ずつみつけて没収し、ホテルのスタッフに謝罪。「ビュッフェの料理は自分が食べれる分だけをその場で取って食べ切るもの。持ち帰っちゃダメ」と強く注意した。
◆お土産コーナーでもトラブルが…
それでも母親の暴走は止まならない。
「お土産店では気に入った商品の試食を食べ尽くし、『もうちょっと食べたいから、もう少し入れていただけませんか?』とおかわりを要求しまして……。その様子をチラリと見て、試食品を片付けてしまうスタッフまで出現する事態となりました」
唯香さんは申し訳ない気持ちでいっぱいになって頭を下げ、母が気に入った商品をいくつもレジへ持参。購入しようとしたところで「こんなにいっぱい買うんだから、割引してくれるわよね?」と質問し、スタッフに冷たい目で見られて再び謝罪するハメになってしまう。
「昔のように配布しているティッシュを何度も貰いに行くぐらいなら許せましたが、旅行での母は明らかに周囲の人を不快にしている感じだったため、縁を切りたいと思ったほど。どうやら母の節約は、私がいない間にパワーアップしていたようです」
◆母親の“節約グッズ”を一掃することに
注意しても諭しても聞き入れる素振りのない様子に困り果てた唯香さんはある日、スーパーでもらった空のダンボール箱を持って母の家へと向かった。そして母が押し入れに溜めこんでいたティッシュやビニール袋をダンボールの中へ次々と投げ入れる。
「驚いた母が『何やってるの?』と聞いたので、『前にティッシュやビニールをくれるって言ってたでしょ?』と言い返したんです。すると母が『あげるとは言ったけど、そんなにあげるとは言ってない。限度があるでしょ?』と怒りはじめたので、チャンスだと思いました」
◆母親へ怒りをぶつけた結果…
そして「ホテルやお土産店のスタッフさんも、いまのお母さんみたいな気持ちだと思うよ。気持ちよく提供しているものを余分に持ち帰ろうとしたり、それ以上のサービスを求めたりするのは節約じゃなく、相手を不快にさせる迷惑客だよ」とハッキリ伝えた唯香さん。
「母は周囲を不快にしている自覚はなかったようで、私に言われて驚いていました。旅行中、私がどうして謝ったり怒ったりしているのかもハッキリとはわかっていなかったようです。同じようなことをされて、はじめて相手の気持ちに気づいた母は、今となってはすっかり反省しているようです」
自分の言動を判断するのは自身になってしまうため、良し悪しのボーダーラインが曖昧になってしまうことも少なくない。節約に限らず、たまには自分の言動を振り返ってみたり、身近な人に気になる部分がないかを尋ねてみたりすることも必要かもしれない。
<TEXT/夏川夏実>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Xアカウント:@natukawanatumi5