「義兄が勝手に火葬されていた」遺族が悲痛告白…各地で“身寄りなき遺体”トラブルが増加している理由

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2025年06月16日 11:10  web女性自身

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知らぬ間に家族が亡くなっていて、弔うこともできない――。最悪なトラブルが、各地で起きている。その背景には、遺体の管理・埋葬の基準が各自治体によって異なる現状があった。



「主人の兄が火葬されていたことを知ったのは、死後3カ月以上もたってからでした。一人暮らしだった義兄が亡くなった後、役所が親族はいないと判断したことから、私たちの知らない間に火葬されていたのです。車で10分ほどの近いところに住んでいるのに、こんなことがありえるのかと……」



こう悲痛な胸の内を語るのは、京都市在住の今西淳子さん。



2022年1月6日、淳子さんの夫・恵一さんの実兄で、元大学教授の今西一(はじめ)さんが自宅で急性心筋梗塞を起こし、救急搬送された病院で亡くなった。



初めに異変に気付いたのは、古くからの友人のAさん。3カ月近く連絡がつかないことを不審に思って自宅に向かうと、郵便物がどっさりたまっていた。「ただごとじゃない」と感じたAさんはすぐ弟の恵一さんに問い合わせ、調べていくうちに突然亡くなったことが明らかになったのだ。



一さんは一人暮らしで倒れたため、死後、京都市が身元調査を行った。しかしながら“身寄りのない人”という誤った判断から、弟の恵一さんに連絡はおろか、既に火葬されて市が管理する無縁納骨堂に埋葬されていたという、信じがたい出来事が起きていた――。



そもそもなぜ、京都市は一さんを“身寄りのない人”だと判断したのか。



「市の説明では、義兄の戸籍に記されていたのは本人と亡くなった両親だけで、主人(弟)の名前はなかった。市が調べたのは京都市内の戸籍のみ。調査範囲を広げると時間がかかるため、当時の身元調査では、調べる範囲は京都市内の戸籍情報と決まっていたとのことで……。結果、身寄りがない遺体として火葬したと説明を受けました」(淳子さん、以下同)



弟の恵一さんは、淳子さんとの結婚を機に親の戸籍から外れており、京都市内の戸籍には恵一さんの名前がなかったのだ。



「同じ市内の近くに住んでいるのだから、ちょっと調べればわかるんじゃないかと……。市の説明に納得はできませんでしたが、『このようなことが二度と起こらないようにしてもらいたい』と、市の職員に強く要望しました」



墓地埋葬法第九条によれば、病院や自宅で亡くなり、身寄りや相続人がいないなどの事情で遺体の引き取り手がない場合、死亡した場所の自治体が保管、火葬することが法律で定められている。



だが、その手順に関する統一したルールはなく、火葬までの取り扱いは自治体によってさまざまだ。



たとえば、親族の有無をどこまで調べ、どこで打ち切るべきか。具体的な規定がないため、今西さん夫妻のように、火葬後に親族が名乗り出て、自治体とトラブルになるケースが各地で起きている。



今年3月、厚生労働省は、2023年度に身寄りがないなどの事情で引き取り手がなく自治体が火葬や埋葬を行った遺体が、約41,969人(推計)だったことを発表した。これは、2023年の全死亡者数の2.7%にも相当する人数だ。



同報告書では、厚労省から委託を受けた日本総合研究所が全国の約1,160市区町村に対して実施した、ヒアリング調査の内容が公開されている。





■遺体の保管費用は税金で賄われている



《親族調査をきちんとやると時間がかかるので、場合によっては何ヵ月も安置することになる。保管場所に困るということは聞かないが、長期間になってしまって保管にかかる費用がかさむ》(政令市)



《すぐ火葬してよいという基準を設けてほしい。当市で1ヵ月という目安は定めているものの、それまでの保管費用は市民の税金でやっている。(中略)今は期間におけるルールがないので、長く期間を取らざるを得ない》(中核市)



《火葬前に探すと、期間や費用がかかるので、火葬を速やかに行うことを優先している》(特別区)



このように、自治体も引き取り手のない遺体の取り扱いに苦慮している実態が垣間見える。



「ほとんどの自治体は戸籍などをたどって親族を捜しますが、たとえ見つかっても連絡がとれないことが数多くあります。また、連絡がとれたとしても“疎遠だから”“生前の関係性がよくなかった”といった理由で、親族が遺体の保管、火葬、埋葬の費用の負担を拒んだり、遺骨や遺留品の引き取りを断るケースも少なくありません」



そう話すのは、引き取り手のない遺体の問題に詳しい、シニア生活文化研究所の小谷みどりさん。



自治体によっては引き取りの意向を確認するのに、数カ月以上を要するケースもあるという。



高齢化が進み、ますます一人暮らしの世帯の増加が見込まれるなか、引き取り手のない遺体はさらに増えることが予想される。そんな状況で明確な基準がなければ、今西さん夫妻のようなトラブルがますます増える可能性は否めない。



この状況をなんとか解決しようと、自治体によっては、生前から終活情報や緊急連絡先などを事前登録する取り組みを進めているところがある。全国に先駆けて高齢者の終活を支援する事業を開始した神奈川県横須賀市だ。



「2018年からスタートした『わたしの終活登録事業』は、市民の方が市に、緊急連絡先、かかりつけ医、お墓の所在地などを事前登録できる制度です。所得制限も年齢制限もなく、電話1本で、無料で登録可能です。万一どこかで倒れたり、亡くなった場合、警察や病院などから身元の問い合わせがあれば、市が答えて本人をサポートします」



こう語るのは、地域福祉課終活支援センターの北見万幸さん。



現在は、約1,070人が登録。隣の横浜市も、来年から横須賀市を参考に65歳以上の高齢者を対象とした登録事業を開始する予定だ。



北見さんは、引き取り手のない遺体の問題で最も重要な対策となるのは緊急連絡先だという。



「警察や病院、自治体がいちばん困るのは、連絡先がわからないことなんです。たとえばマイナンバーカードに緊急連絡先が登録されるようになれば、身元調査の時間と手間が大幅にカットできる。亡くなってからではなく、事前に登録しておくことで、本人のリスク回避、そして自治体の業務負荷の軽減にもつながるでしょう」



横須賀市のような取り組みを行っている自治体は、まだほんの一部だ。人はいつどこで死ぬかわからない。何かあったときにスムーズに連絡できるよう、一刻も早く、法整備を進めてもらいたいものだ。

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