「営業はムリだから“コーポレート志望”」ジョブ型採用が合う学生・合わない学生 その決め手とは?

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2025年06月16日 12:10  まいどなニュース

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やりたくないことははっきりしていた私です…!

新卒採用の求人倍率は2026年卒で1.66倍となり、4年ぶりに下がりましたが、依然として「売り手市場」の様相が続いています。特に、企業規模を問わず初任給を引き上げる動きが広がっており、優秀な学生を確保するための取り組みが加速しています。そうした中、注目されているのが、初任給アップと並んで導入が進む「ジョブ型採用」です。

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ジョブ型採用とは、職種や職務内容を明確にしたうえで、それに適した能力や経験を持つ人材を採用する仕組みです。日本では長年、新卒を「総合職」として一括で採用し、入社後に適性と組織のニーズに応じて配属する「メンバーシップ型採用」が主流でした。

では、なぜジョブ型採用が学生に支持されているのでしょうか。就職活動に臨む学生の「本音」に耳を傾けました。

部門別、職種別採用で「やりたいことができる」??

関東在住のAさん(20代、大学生)は有名私立大学に進学し、サークル活動やアルバイトを楽しみながら学生生活を過ごしてきました。就職活動は3年生の春から意識し始め、先輩に勧められた大手企業のインターンシップに参加。インターン先で出会った人事担当者や若手社員の雰囲気に惹かれ、早期選考をいくつか受けたそうです。

「やりたいことは、正直よく分かりません。なんとなく社会の役に立つ仕事ができたらいいなと思っていますが、具体的に何かと言われると困る感じです。とにかく働きやすい会社がいいので、先輩に勧められた会社を中心に見ていました」

そんなAさんが最終的に応募を決めたのは、ジョブ型採用を導入している企業でした。営業部門、管理部門、技術部門、調達部門などに分かれていたり、コース別に将来のキャリアステップを提示していたりする会社を中心に受けることにした理由は単純なものでした。

「営業は自分には向いていないと感じていました。目標達成とか競争とか、そういうのはあまり得意ではなくて。ジョブ型採用なら営業以外の“コーポレート”と書かれたコースを選んで、“企業価値向上に貢献したい”って言えばいいかなと思いました」

明るく人懐こい性格もあってか、エントリーシートや一次選考では落ちることなく、複数の企業から内定を獲得。その中で、最も「ホワイトそう」と感じた大手メーカーへの入社を決めたといいます。

「やりたいことは特にないけれど、やりたくないことははっきりしています。それを避けられるジョブ型採用は、自分にとってすごくありがたいです」

こうした言葉に、意外性のある視点が垣間見えます。

「就職氷河期?ってくらいESが通りませんでした」

一方、関西在住のBさん(20代、大学生)は、応募先の条件を「企画」「マーケティング」「商品開発」「広報」に関われることと決めていました。

総合職で応募する場合、多くの企業では「入社後に営業などを経験した上で、希望や適性に応じて配属」と説明されます。それを避け、入社直後から希望職種に就けるジョブ型採用を志望し、サマーインターンシップにも積極的に参加してきました。

しかし実際には、インターンでは募集されていた「企画職」「マーケティング職」「商品開発職」「広報職」などは、単独での採用枠が極めて少なく、営業職を志望していた友人と比べてES通過率や一次面接の合格率が半分以下だったといいます。

「自分だけ『就職氷河期なの?』って思うくらいESが通りませんでした。4月に久しぶりにキャリアセンターに行って相談したら、広報とかはかなりの狭き門だと教えられて。もっと早く知っていればよかったです。いまは就活のやり直し中です…」

Bさんは、同じ失敗をしないよう、後輩たちには「やりたいことを安易に絞りすぎない方がいい」と伝えているそうです。選択肢が広がることで、かえって迷いや苦労が増える学生も少なくないようです。

【参考】
▽富士通株式会社|「ジョブ型人材マネジメント」に基づく採用方針について
▽リクルートワークス研究所|大卒求人倍率調査(2026年卒)

◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。

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