ドタバタコメディを見ていると、自分がその場にいたような気持ちになり、可笑しさの中にほっこり感が生まれる。X(旧Twitter)に投稿された『徒花のほとり』も、登場人物が奏でる賑やかさが、どこか胸を暖かくしてくれる4コマ漫画だ。
高校に入学したばかりの女子生徒・加賀ほとり。人のサポートをして友達をつくろうと考えたほとりは、セパタクロー部のマネージャーになることを決意する。入部届を出しに行くその道中、突然見知らぬ先輩・英功弥から「お久しぶりです 僕の大好きな人」と言われて抱きしめられる。ほとりは困惑するが、事情を説明すると、英はセパタクロー部の部長であることがわかり、部室に連れて行かれる――。
イラストレーターとして活動しているmotyさん(@moty_wm)が本作の作者だ。現在高校3年生でありながらも、すでにその才能の片鱗をのぞかせているmotyさんに、本作の制作秘話などについて話を聞いた。(望月悠木)
◼︎大好きを掛け合わせた設定
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――なぜ『徒花のほとり』を制作しようと思ったのですか?
moty:当時、読切2作目を制作中に、次は「『学園4コマ』と『乙女ゲーム』という、自分の大好きな要素を掛け合わせた最強の“私得”漫画を描こう!」と思ったのがきっかけです。
――だから女性主人公が、男性陣が多い空間に身を置く内容だったのですね。
moty:はい。また、乙女ゲームや少女漫画を見ていると、「知らないイケメンが馴れ馴れしく接してくると思ったら、実は幼少期の初恋相手だった」という展開に度々遭遇しました。そこで、「本当に最後まで知らないイケメンだったら面白いな…」と思って制作しました。
――知らないイケメンだけでなく、そこに忠地(ただち)とシーラを加えたドタバタ劇が繰り広げられる内容でしたね。
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moty:企画書の時点で、物語の始まり方と終わり方は決めていました。そこに「チャラ男キャラにやってほしいこと」みたいな細かいエピソードを願望のままに考え、それらを作中に加えた結果、ドタバタ劇になりました。ちなみに「優しい高身長キャラにやってほしいこと」としてできたのが、ラストページの英による肩車です。
――登場キャラのキャラデザが全員可愛らしかったですが、各キャラのデザインはどう決めたのですか?
moty:全員、見た目と性格にギャップがあるキャラにしたかったので、パッと見て「チャラ男っぽい」「優等生だろうな」と、良い意味で偏見が持てるような記号的なデザインにしました。英に関しては、ただただ私の好みです。
◼︎ボケとツッコミを決める基準
――4コマ漫画はテンポ感も大事ですが、サクサク読み進められる心地よい内容でした。
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moty:キャラの掘り下げに繋がらないギャグはなるべく省くことで、テンポよく、短いページ数でも満足感のある読切を目指しました。また、セリフだけで誰が喋っているかわかるように、口調は4人全員バラバラにしています。
――勘違いしているとはいえ、英のスキンシップが過剰な印象ですが、2人の距離感はどう調整しましたか?
moty:「友達というには近すぎて、恋人というにはズレている」そんな絶妙な距離感を意識しました。英とほとりは相思相愛のつもりで描いたのですが、2人の関係に“友愛”と“恋愛”の区別は必要ないと思い、「誤解が解けたから晴れて付き合う!」といった展開にはしませんでした。
――全員ボケとツッコミ役を担っていました。ボケ役が多いと会話がとっちらかる危険性がありますが、ボケを描く上で注意したことは?
moty:「全員がボケ役」の作品を最高に面白いと思っているので、とっちらかるという点は特に注意していませんでした。ただ、忠地は「言ってはいけないことを言うボケ」をするので、セリフが過激になりすぎないよう、その点の塩梅には気を配りました。
――また、同じキャラでもボケとツッコミの役がクルクル変わると、読者が読みづらくなりそうですが。
moty:今までボケていたキャラがツッコミに回ることをシームレスに納得できるよう、キャラの性格や価値観を早い段階で知ってもらう構成にしています。また、「理論のツッコミは忠地」「倫理のツッコミはシーラ」と、それぞれ性格に基づいたボケとツッコミの組み合わせにしています。
――ちなみにボケとツッコミはどう決めているのですか?
moty:ボケはすべて、キャラそれぞれの「行き過ぎた信念」のようなものを意識しています。ツッコミは「それに対する否定」ではなく、「お前そういうとこあるよな」と許容するようなものにしています。「誰しも傍から見たらおかしいくらいの譲れないものはあるだろうし、それがおかしいからといってその信念に是非をつける必要はないよね」というスタンスで、終始キャラの個性を最大限に出すようにしています。
――本作は4コマ漫画ではありますが、コマが横長の形式でした。横長であることのメリット・デメリットは?
moty:横長の4コマは、個人的にいちばん読みやすい形式で、型が決まっているためストーリーも考えやすく、快適に描けました。難点としては、顔を大きく描けないので、キャラクターの顔を楽しむコマを本作ではあまり作れませんでした。
――最後に、今後の活動目標などを教えてください。
moty:連載獲得を目標に、引き続き学園ラブコメを描いていく予定です。また、私は『喧嘩番長 乙女』(スパイク・チュンソフト)という乙女ゲームが大好きで、同作のコミカライズ版を読んだことをきっかけに漫画制作に興味を持ちました。なので、私も乙女ゲームのコミカライズのお仕事ができるよう、日々鍛錬を重ねていきます!
(文・取材=望月悠木)
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