占領下で残った「私宅監置」=精神障害者対象、本土では禁止―識者「悲惨な歴史に光を」・沖縄

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2025年06月20日 07:31  時事通信社

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「私宅監置」について話す高橋年男さん=3月11日、沖縄県南風原町
 精神障害のある家族を小屋などに閉じ込める「私宅監置」。戦後、法整備が進み禁止されたが、米軍の占領下にあった沖縄では、本土復帰まで20年以上存続した。「戦争で受けた傷に塩を塗るようなものだ」。監置小屋の保存に取り組む、沖縄県精神保健福祉会連合会理事の高橋年男さん(72)は、写真展を開くなど悲惨な歴史に光を当て続けている。

 1900年に制定された「精神病者監護法」では、行政庁の許可を受ければ、家族は障害者を自宅に設けた「監置室」に収容することを認めており、全国で行われた。ただ劣悪な環境で十分な医療を受けられないといった問題があり、50年の「精神衛生法」で禁じられたが、占領下の沖縄では、同法は適用されなかった。

 太平洋戦争末期の沖縄戦では、民間人をも巻き込んだ激しい地上戦が展開され、県民の4人に1人が命を落としたとされる。苛烈な戦火は生存者の心にも深い傷を残し、精神疾患を発症する人も多かった。66年に琉球政府が実施した「精神衛生実態調査」によると、沖縄の人口千人当たりの精神障害の有病率は25.7人で、本土の12.9人と比べ約2倍に上った。

 高橋さんによると、米軍はベトナム戦争の出撃基地だった沖縄で、結核など感染症の拡大が軍の戦力低下につながると懸念し、対策に力を入れる一方、「精神疾患は放置された」という。そのため、私宅監置も存続し、障害者に二重三重の苦しみを与え続ける結果となった。高橋さんは「米軍統治下、戦争のために沖縄が位置付けられていたことを象徴している」と指摘する。

 沖縄県北部には、監置に使われた小屋が唯一残されている。大きさは一坪半ほど。コンクリート造で鉄製の扉は外から施錠でき、外から食事を差し入れる小窓がある。精神疾患を抱えた男性が10年以上もの間、閉じ込められていたという。

 公立病院の病床数の少なさや高額な入院費用。「地域に迷惑をかけないようにと、監置制度に頼らざるを得なかった」と高橋さん。当時の自治体の広報にも、監置小屋の完成を知らせる記事が掲載されるなど、「地域ぐるみ」で行われていたという。

 高橋さんらは、こうした私宅監置の歴史を語り継ごうと、監置小屋の保存や被害実態の検証を県議会に要請するほか、県内で写真展を開くなど取り組んで来た。来場者からは「うちにもあった」「見たことがある」との声が多く寄せられた一方、暗い過去を語りたがらない風潮も感じているという。

 監置小屋はほとんど取り壊されてしまったが、高橋さんは「戦争で受けた傷に後から塩を塗り込むような歴史に、光を当て続けたい」と力を込めた。 

私宅監置に使われた小屋=沖縄県北部(高橋年男さん提供)
私宅監置に使われた小屋=沖縄県北部(高橋年男さん提供)

このニュースに関するつぶやき

  • まぁね…劣悪な環境にする必要はないよね。でもさ、そいつが他人に何かやらかしても法で裁けないなら監置はあっていいと思うよ。綺麗な部屋でいいじゃん。
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